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「コンサイス20世紀思想事典」について

第2版改訂にあたって

 この事典の初版の刊行が1989年、あれから8年が経過し、今世紀も余すところ3年というところまできた。幸いこの事典は予想外に多くの読者を得て、われわれの所期の目的は達成されたように思う。しかし、この8年間に東西ドイツの統一、誰も予想しなかったソ連邦の解体、東欧諸国の社会主義政権の崩壊、各地の民族紛争、中国の解放政策・香港の返還と、思いつくままに挙げてもいくつもの大きな事件が起こり、世界政治の構図が激変した。またパソコンの急速な普及によって世界の隅々までインターネットが張りめぐらされ、情報社会の構造が大きく変わり、遺伝子操作技術の発達によって現実にクローン動物がつくりだされ、無人探査機が火星にまで届くようになった。

 当然この事典も90年代に入ってからの政治情勢や科学技術のこうした変化に応える必要に迫られた。こうしてわれわれは一昨年来大幅な改訂作業を進めてきたが、ようやくその作業も終わろうとしている。初版での思いがけない欠落も埋めることができたと思う。冒頭の「20世紀の歴史と風景」にも1990年代が追加された。この事典が20世紀思想のいっそう完全な決算書になり得たと信じている。

 第2版の編集にあたっては、木村靖二、篠原資明、野谷文昭、村井吉敬の諸氏に絶大なご協力をいただいた。厚くお礼申し上げる。また、この間病に倒れた編集委員丸山圭三郎氏の冥福を祈りたい。初版以来この事典の編集を担当され、この改訂を最後の仕事にして三省堂を去られる横山民子さん、本当にご苫労さまでした。

1997年 10月 1日

編集委員 木田 元
栗原 彬
野家啓一