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「連句・俳句季語辞典 十七季」について

はしがき

 人はなぜか詩を詠みたくなる。世界で最短の詩形といわれる俳句はいまや日本ばかりでなく世界に広まりつつある。句作にあたって最も必要なことはイメージ豊かな言葉を適切に選ぶことであるが、多くの人と時間とによって磨きぬかれてきた季語は、なかんずくその最有力なものであろう。必要なことは、季節やテーマにふさわしい季語をいかに素早く選び出せるか、そして、それぞれの季語を関連のなかでとらえ、そこから重層的にどれほどイメージを膨らませられるかということであろう。

 本書の特色の一つは、一章・二章と二本立てで工夫をこらしたことにある。収録した6700余りの季語を季節および分野別に細分化して大きな字で見やすく配列し(一章『季語分類表』)、そのうち約3900の基本季語には解説をつけて、同類(別称・活用形・傍題)ばかりでなく、関連する他季や他分野の季語も紹介した(二章『五十音順季語辞典』)。また、すべての季語に読みがなをふってある。

さあ、本書をポケットに外へ出てみよう。そこには人と自然の多様な営みがある。合理化・機械化・都市化による季節感の喪失が指摘されているが、それでも、確かな季節の移ろいがある。もちろん、部屋でごろり横になられるのもよい。本書には、もはや身の回りには見られなくなったような古い事柄に関する季語なども数多く収録されているので、頁をめくり季語を追うことで、時空を超えた空想の旅を楽しむことができる。

詩心が膨らめば、一人の時は俳句を作ってみよう。幸い俳句には優れた指導書が多数ある。また時には連句などはいかがだろうか。連句は数人で互いに句を付けあって遊ぶもので、俳句とはまたひと味ちがった味がある。

 そして連句にはスポーツやゲームと同じようにルールがある。そこで、実作に役立つよう、一通りのルールをわかりやすくまとめた『連句概説』、読物としても楽しめる『付合例句集』を載せた。本書の第二の特色である。

新しい世紀を迎えて、合理性という名の檻がさらに強固になったとしても、遊び心だけは失いたくないものである。本書が疲れを癒す一杯のコーヒーになればと願っている。

 編集は、編著者全員でおこなったが、主に、三章『連句概説』『付録』を東が、四章『付合例句集』を丹下が、一章『季語分類表』と二章『五十音順季語辞典』を佛渕と丹下が担当した。

 最後に、『付合例句集』の作品掲載にあたり、快くご協力・ご配慮いただいた関係出版社・団体並びに句作者に心よりお礼を申し上げたい。また、編集を担当された三省堂の阿部正子氏には一方ならぬお世話になった。謝意を表したい。

2001年 2月 吉日

編著者 東 明雅・丹下博之・佛渕健悟