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「超級クラウン中日辞典」について

序文【はじめに】

中国の現代生活がよくわかる辞典,これが本辞典のめざすところである.

ここ数年,中国はまさに世界中の熱い視線を浴びている.2008年8月8日開幕の北京オリンピック大会,2010年の上海万国博覧会.こうした世界的なビッグイベントに向かって,中国の社会は日々発展を続けている.街には巨大なビル群が建ち並び,高速道路には自動車が車体を擦らんばかりにあふれている.大変な活気だ.そんな中で毎日暮らしていると,めまいを覚えるほどである.

今年の3月から,20年ぶりに北京で生活することになった.ただ,北京には毎年7,8回は来ているので,内心そんなに変わってはいないだろうと思っていたのだが,実際に暮らしてみると毎日毎日急激に変化しているのが,手に取るように感じられる.そんな急激な現代生活の変化を反映するかのように,ことばも大きく変化している.新聞やテレビには,自動車や不動産のカラー広告.新聞には,デパートやスーパーの大売り出しの分厚いチラシ.携帯電話も,日々新商品が店頭に並んでいる.中国の友人の言語学者でさえも,毎朝新聞を読むと,必ず知らないことばや新しい表現に出くわす,と嘆息するほどだ.

本辞典では,そうした現代中国の言語生活をできるだけ網羅的にとらえ,的確かつ簡潔に記述するよう工夫を凝らした.その第一として,中国で良く読まれている新聞の3年間(2000〜2002)のすべての記事をもとに,詳細な語彙の資料データ(コーパス)を作った.その大量かつ詳細なデータを利用して,既刊の『クラウン中日辞典』を始め,『現代漢語詞典』,『漢英詞典』,『応用漢語詞典』など数種の辞典の見出し項目をすべてチェックし,必要な見出し項目を約20,000項目追加した.それは,実際にその3年間によく使用された語彙,いわば「生きている」語彙である.さらに,中国の費錦昌,徐莉莉両氏のリードのもと,中国の気鋭の言語学者がチームを作り,新語を広く収集し,その中から選りすぐって約2,000項目を新たに書き起こした.こうした結果,親字約11,500項目,熟語約80,000項目,総計91,500項目という「超級」の辞典となった.そこで,本辞典を『超級クラウン中日辞典』と名付けたのだが,それは単に分量の多寡を誇りにするのではなく,品質においても「超級」であることをめざしたからである.

一般語彙のほか,『クラウン中日辞典』では,樋口靖氏の執筆にかかる基本親字の解説が好評を博したが,今回はさらに古川裕氏が加筆,充実を図った.また,『クラウン中日辞典』では後半に「日中小辞典」と銘打って日中語彙索引を付したが,今回は見出し語を全面的に改めたうえ,前回は紙幅の都合から割愛せざるを得なかった句例や意味分類による使い分けのブランチを大幅に増補し,約8,000語の辞典として充実をはかった.同じく,付録については,現代の中国社会を知るための基礎知識や読み物を多数取り上げた.さらに,現地の新しいようすを反映する挿絵や写真なども相当数追加することができた.

本辞典は,その名の通り『クラウン中日辞典』を基礎とし,さらに大きく発展させたものである.基礎の部分は,松岡,樋口,白井,代田の4人による編著であり,共同でその責を負うものである.新たに追加された語彙については,松岡が選定に当たり,そのすべ てを校閲した.また,付録の読み物などは,専門の方々にできるだけわかりやすく簡潔に書いていただいた.今後は,読者諸氏からの要望に応じて,その充実をいっそう心がけたいと思っている.

最後に,関久美子さんには執筆はもとより新原稿の校閲・整理など多大なご尽力をいただいた.ここに,それぞれの分担や責任を明らかにするとともに,企画段階から完成に至るまで温かい励ましをいただいた三省堂外国語辞書編集室の柳百合編集長,とりわけ編集担当者として実務に励まれた近山昌子さんをはじめ,本書の完成に力を尽くしてくださった多くの方々に深くお礼を申し上げる次第である.

本辞典が,現代中国を知る上での確かな拠り所として,多くの方々に支持されることを心から願っている.

 2007年12月 北京にて

松岡 榮志