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「言語学大辞典」について

世界文字辞典の刊行にあたって

ケース-世界文字辞典

 初巻『世界言語編(上)』の上梓から十余年、今ここにシリーズの掉尾を飾る本辞典を刊行することとなった。

 従来、言語学の一分野としての文字の研究は、言語のそれに比して第二義的な位置を占めるにすぎなかったと言えよう。しかし、最近ようやく“文字”に対する関心が高まり、国の内外を問わず文字に関する書籍・辞典の類が相次いで出版されるようになった。

 その背景には、現代がインターネットの世界における文字処理の技術がかつてなく求められる時代であり、それと呼応して、従来では活字化することの難しかった様々な文字が、コンピューター技術の進歩により比較的容易にフォントとして利用可能となったことなどがあげられよう。

 とかく、文字への興味は書体やデザインに注がれやすいが、その文字を使用する言語との関係を正しく捉えなければ、真に文字を理解したことにはならない。その意味で、文字の言語的機能を追求した本辞典は「文字辞典」の決定版であり、『世界言語編』と補い合って言語研究の基礎資料となるものである。

 本辞典では、有史以来の世界の諸文字の実相を、「系統」「分布・使用状況」「表記言語」「歴史・資料」「字形」「文字組織」「構成原理」「研究史」「参考文献」等の子見出しのもとに、かつてない規模と精度をもって解説した。

 本巻は、文字論の世界的権威河野六郎先生、および、千野栄一先生によって構想が練られ、世界の文字研究を牽引している西田龍雄先生を編者として新たにお迎えした。このような編者のもとに第一線の研究者が執筆にあたった本辞典は、まさに世界の最高水準を示す文字辞典である。

 文字はすぐれて文化的な所産である。人類の悠久の歩みの中ですでに消え去った“文字文化”や今に生きる“文字文化圏”の姿が、本辞典を透して浮かび上がってくるであろう。