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「新明解 故事ことわざ辞典」について

まえがき

 私たちは、ふだんの会話や文章の中で、故事やことわざに属することばをよく使っています。しかし、最近では、「情けは人の為ならず」を「情けをかけるのはその人の為にならない」と解釈したり、「気が置けない人」を「油断できない人」の意味で使うなど、故事ことわざや慣用句を間違えて使う例が増えてきました。

 ことわざは、短く口調のよい表現の中に、人の心に訴えかける深い意味を含んでおり、人生の指針や教訓・諷刺などをその内容としています。そして人を勇気づけたり、動かしたりする力をもっていると同時に、使い方によっては、人を傷つける力ももっています。また、故事ことわざは、人間社会の長い歴史の中で育まれ、語り継がれてきた知恵の結晶といっていいかと思いますが、なかには、その歴史性ゆえに、現在の常識からすれば不適切な語や表現が含まれるものもあります。こうしたことば・表現は、本来の意味や使い方をよく理解した上で、差別的・侮蔑的な使い方をしないように注意しなければなりません。

 本書は、現在わが国で使用されていることわざを中心に、慣用句、格言・名言、故事・成語など約7,300項目を集め、ことばの正しい意味・用法を平易に解説したものです。特に、中国の出典に基づく語句については、そのことばの背景を知ることによりさらに理解が深められるように、適宜、原文の書き下し文と口語訳を添えました。ことばの由来となった興味深い故事も多数収録してあります。また、読み方や書き方、使用上の誤りやすい点を指摘した注意事項や、類義語、対義語、英語のことわざ、用例など、比較・応用して使われるときに役立つ事項も豊富に掲載しました。

 本書を十分に活用され、故事ことわざを正しく理解し、適正に使用されることによって、さらに豊かな言語生活を築いていかれることを願っています。

2001年 9月

三省堂編修所