歌題2016年度

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題詠:「袖(そで)」

「袖(そで)」を題にした歌を、なるべく多くの古語(『三省堂 全訳読解古語辞典 〔第四版〕』に載っている語)を用いて、五・七・五・七・七の形式で詠んでみましょう。また、歌を詠むきっかけとなった出来事やエピソードを一〇〇字程度で紹介してください。

2016年 選考結果(2017年2月23日発表) 

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「優秀賞」(3名)

 

からころも袖の雫は絶えずともふる五月雨はやがてやみなむ

今井綾乃(東京都・学習院女子高等科2年)

100字エピソード:
毎年梅雨の時期になると毎日雨が降るのを見て、もう一生雨が止まないのではと不安になるが、そんな不安な気持ちを平安時代の女性は恋人に会えなくて泣き続けているときにも抱いていたのかなと想像して作った。

澪標波に揺られて待つよりは君がなれたる袖とならばや

淵本詩織(東京都・学習院女子高等科2年)

100字エピソード:
船の目印となってたたずむ澪標から、何もできず、ただ男性を待っている女性の気持ちを連想したので、「澪標」と「身を尽くし」を掛けて詠みました。一夫多妻制だったこの頃ならではの恋の悩みだと思います。

待ちわびて時雨るる袖を返せども夢の君さへ会はぬなりけり

澤田千智(神奈川県・神奈川県立多摩高等学校1年)

100字エピソード:
袖に関する語句を調べたときに「袖返す」という言葉を知りました。袖を折り返して寝ると夢で恋しい人に会えるという俗信があったそうです。とても素敵なおまじないを毎晩毎晩行う一途な人をこのことから連想し、歌に詠みました。

選評

 応募作の多くは、応募用紙の「作歌のポイント」をしっかり理解して、今回のお題「袖」を恋の歌として詠んでいました。また、歌を作る際に、関連するさまざまな言葉も古語辞典で確認したことが、はっきりと分かりました。「袖返す」「袖の雫」「袖を濡らす」「濡るる袖」「招く袖」「袖振る」「袖の香」など古典和歌で培われた表現が使用されていて、古語を学習した成果が作品に表れていました。歌を作るために、一つ一つの言葉の用法や背景を理解してくれたようです。この理解を深めることが古文の学習の大切な点にもなるのです。

 今井さんの歌は、「五月雨」に寄せた、絶えることのない恋の涙を詠んだ歌になります。私の袖にかかる涙の雫は絶えることはないにしても、盛んに降る五月雨はそのうちに止むことであろう、としています。「からころも」は「袖」にかかる枕詞になっています。また、「袖の雫」は、袖にかかる涙のことです。「袖の雫」と「五月雨」の対比、それに応じた「絶えずふる」と「やがてやむ」の対比がよくできています。

 淵本さんの歌は、「待つ女」の立場で詠まれています。初句の「澪標」が「身を尽くし」の掛詞となって、ただひたすら相手の訪れを待つ様子が暗示されます。しかし、「みをつくし」て待つよりも、あの人が着馴れた袖になりたいと転じています。「君がなれたる袖」という表現は、淵本さん独自です。「なれ」には着馴れる意に、衣の糊が落ちて萎れた意も働いています。あの人を肌身に感じたい切ない思いが伝わってきます。

 澤田さんの歌も、「待つ女」の立場になっています。「袖を返せども」には、「待ちわびて」と呼応して、夢でだけでも逢いたい意が含まれます。しかし、現実でも、夢でもあの人に会えないのであったと、「なりけり」によって、わが身の不遇に気づいた歌になっています。あの人は、私のことをすっかり忘れてしまったのではないかと絶望していることにもなります。「時雨るる袖」も古典和歌に即した表現になっています。(倉田実)

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「入選」(3名)

鈴虫の鳴き声聞こゆ秋の夜の人に知られで濡るる袖かな

菊地亮介(青森県・青森県立弘前高等学校1年)

別れつる君のみ思ひ嘆きつつ袖ぬるるほどくちをしきなり

井上夏輝(神奈川県・神奈川県立多摩高等学校1年)

寂しき日空をみあげて袖ぬらす風の音にも君思ひつつ

瀬﨑羽依音(熊本県・玉名女子高等学校2年)

 

「奨励賞」

入賞には及ばなかったものの、 学習成果や創意工夫などの点で一定の評価の得られた方を、特別に「奨励賞」として表彰いたします。

渡邉百香(愛知県・愛知県立知立高等学校3年)/亀井可穂(大分県・大分県立大分西高等学校3年)/百井花(大阪府・大阪国際大和田高等学校1年)/烏野陽英(大阪府・興國高等学校2年)/大貫英里伊(神奈川県・神奈川県立瀬谷西高等学校3年)/當山亮太(神奈川県・神奈川県立多摩高等学校1年)/富岡優太(神奈川県・神奈川県立多摩高等学校1年)/村井日向子(京都府・京都光華高等学校3年)/瀧本咲(熊本県・玉名女子高等学校2年)/姫野琴音(熊本県・玉名女子高等学校2年)/山口花梨(埼玉県・栄北高等学校3年)/田中一輝(埼玉県・埼玉県立蕨高等学校3年)/内田瑠海子(東京都・学習院女子高等科2年)/金杉もなみ(東京都・学習院女子高等科2年)/二見ふみ(東京都・学習院女子高等科2年)/吉本里菜(東京都・豊島岡女子学園高等学校2年)/長塚向紀(東京都・三田国際学園高等学校1年)/西垣秀彦(東京都・立教池袋高等学校3年)/齋藤里乃(栃木県・第一学院高等学校2年)/廣間菜月(長野県・長野県立屋代高等学校1年)

「団体賞」

青森県立弘前高等学校(青森県)

学習院女子高等科(東京都)

神奈川県立多摩高等学校(神奈川県)

玉名女子高等学校(熊本県)

大分県立大分西高等学校(大分県)

立教池袋高等学校(東京都)

第一学院高等学校(栃木県)

愛知県立知立高等学校(愛知県)

三田国際学園高等学校(東京都)

 

総評

このコンテストでは、「選考の観点」に示しましたように、古語や古文に関する基礎的な知識が身についているかどうかが審査の大きなポイントとなっています。今回の応募作の中にも、口語的な言い回しや、活用形が正しくない歌が多少ありました。また、修辞技巧では、積極的に枕詞を使おうとする姿勢が多くあり、好ましいことでしたが、その枕詞と、歌全体とのかかわりが分かりにくい作品もありました。例えば、「袖」にかかる「しろたへの」の場合は、白のイメージが出てきますが、それが歌全体とかかわらない場合がありました。枕詞は訳さなくて良い和歌の言葉ですが、その言葉が呼び起こすイメージを大事にするとさらに向上するでしょう。このことは枕詞に限らず、どの歌ことばについても言えます。こうした点を直せば、入賞にしたい作品が多くありました。さらに普段の授業で古文をしっかり学び、次年度の課題に応募してくださることを願っています。(倉田実)

【三省堂より

このたびは、多くのご応募を賜り誠にありがとうございました。ご応募くださった高校生の皆様、
そしてご高配くださいました先生方に、心よりお礼を申し上げます。

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