時候のあいさつ

きく か 【菊花】

2007年10月18日

どういう意味?

『大辞林 第三版』で「菊花」をひくと、「〔「きっか」とも〕①菊の花。②菊の花の文様。③六種(むくさ)の薫物(たきもの)の一。菊の香に模したもので、丁子香(ちょうじこう)・沈香(じんこう)・麝香(じゃこう)などを練り合わせる。秋の薫物。」とあります。

もう少し詳しく…

子項目としていくつか並びますが、そのうち「菊花酒」「菊花の宴(菊の宴)」「菊花の杯(菊の杯)」「菊花の酒(菊酒、菊の酒)」は「重陽」の節句に関係するものです。すでに9月9日のこの項で「重陽」についてふれましたが、この日に菊のお酒を飲むと不老長寿と言われています。
また、秋の季語に「あたためざけ」というのがありますが、『大辞林』でこれを調べると「燗(かん)をして温めた酒。また、身を温めるために飲む酒。古く、陰暦九月九日を境とし、この日以降は式事の酒を温めて用い、また、この日温めた酒を飲むと病気にならないという言い伝えがあった。ぬくめざけ。[季語]秋。」と載っています。
とにかく、陰暦9月9日には「あたためざけ」や「菊酒」を飲むと病にならず長生きできるようです。

いつごろに適したことば?

時候のあいさつとしては10月~11月に使われることが多いようです。

使用例は?

「菊花の候」「菊花の砌(みぎり)」など

ちなみに…

陰暦、旧暦、新暦、太陰暦、太陽暦…

9月9日も「重陽の節句です」と言ったのに、どうしてまた同じ話題かというと、今も伝えられている行事には旧暦の通り行っているもの、便宜的に1か月だけずらしたもの、新暦になおしてしまったもの、いろいろあります。
「旧暦」とか「新暦」ってどれが何?とお思いかもしれませんが、そういうときに便利なのがこれ。
Web版の『大辞林』で検索窓に「歴/れき」と入力しましょう。これはWeb版の『大辞林』ではAND検索(=「/」で区切られた複数の語が全て含まれるものを探す)になります(検索について詳しくは⇒「Dual 大辞林[Web版]検索について」をご覧ください)。そして「後方一致検索」を選択し、検索ボタンを押します。
さて、検索結果にあらわれるのはさまざまな「暦」の名前(「還暦」なども含まれてしまいます)。陰暦、旧暦、新暦……それぞれクリックしてみましょう。
日本では1872年(明治5)にグレゴリオ暦(現在では世界の共通暦)を採用、1872年12月3日を1873年1月1日とし、現在に至るまで使っているのを「新暦」と言っています。それ以前に使っていたものを「旧暦」と言い、使われていたのは「太陰太陽暦」です。「グレゴリオ暦」は「太陽暦」の一種。例えばこんなことがわかります。

筆者プロフィール

三省堂編修所

編集部から

「時候のあいさつ」では、手紙やビジネス文書でよく使う季節のことばを取り上げ、その語の意味や、どんな時期に適したことばかを解説します。