今週のことわざ

臥薪(がしん)嘗胆(しょうたん)

2007年12月24日

出典

十八史略(じゅうはつしりゃく)・春秋戦国(しゅんじゅうせんごく)・呉(ご)―史記(しき)・越王(えつおう)勾践(こうせん)世家(せいか)

意味

将来の成功のため、長い間あらゆる苦しみに堪えること。とくに復讎(ふくしゅう)のために艱難(かんなん)を忍ぶこと。「臥薪(がしん)」は、たきぎの上に寝ること。「嘗胆(しょうたん)」は、苦い獣の胆をなめること。共につらいことのたとえ。

原文

〈十八史略(じゅうはっしりゃく)
夫差、志讎、朝夕臥薪中、出入使人呼曰、夫差、而忘越人之殺而父邪。
〔夫差(ふさ)、讎(あだ)を復せんことを志し、朝夕(ちょうせき)薪中(しんちゅう)に臥(ふ)し、出入するに人をして呼ばしめて曰(いわ)く、夫差、而(なんじ)は越人(えつひと)の而が父を殺せしを忘れたるか、と。〕

訳文

(呉王(ごおう)闔閭(こうりょ)は越(えつ)に攻めこんだが、越王勾践(こうせん)に打ち破られ、負傷して死んだ。闔閭は、臨終のとき子の夫差(ふさ)に「この恨みを忘れるな。」と言い残した。)夫差は復讎(ふくしゅう)を誓い、朝夕薪(たきぎ)の上に寝てその痛さに堪えながら、部屋に人が出入りするたびに次のように言わせた。「夫差よ。おまえは越人が、おまえの父を殺したのを忘れたか。」

原文

〈史記(しき)
越王勾践反国。及苦身焦思、置胆於坐、坐臥即仰胆、飲食亦嘗胆也。曰、女、忘会稽之恥邪。
〔越王(えつおう)勾践(こうせん)国に反(かえ)る。及(すなわ)ち身を苦しめ思いを焦がし、胆を坐(ざ)に置き、坐臥(ざが)には即(すなわ)ち胆を仰ぎ、飲食にも亦(ま)た胆を嘗(な)む。曰(いわ)く、女(なんじ)、会稽(かいけい)の恥を忘れたるか、と。〕

訳文

(越王(えつおう)勾践(こうせん)は夫差(ふさ)を攻め滅ぼそうとした。夫差は勾践を会稽山(かいけいざん)に包囲した。勾践は和睦(わぼく)を申し入れ、夫差はそれを受け入れた。)越王勾践は国に帰ると、わざと自分の身心を苦しめ、敗戦の恥のつらさを忘れまいとした。獣の胆を座席の傍らに置いて、起き伏しするたびにつるしてある胆をなめ、また食事のときにもいつも胆をなめては、その苦さを味わって、そのたびに「おまえは会稽山の恥を忘れたのか。」と自分に言いきかせた。

解説

『史記(しき)』には「臥薪(がしん)」の故事は見えず、「嘗胆(しょうたん)」の記事のみが越王(えつおう)勾践(こうせん)世家(せいか)にある。『十八史略(じゅうはっしりゃく)』春秋戦国(しゅんじゅうせんごく)・呉(ご)の条には両者ともに記載されている。

類句

◆会稽(かいけい)の恥(はじ)◇会稽(かいけい)の恥(はじ)を雪(すす)

筆者プロフィール

三省堂辞書編集部