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超級クラウン中日辞典発刊に寄せて

2008年 2月 8日 金曜日 筆者: 松岡 榮志

【編集部から】
このたび『超級クラウン中日辞典』が刊行されました。中国政府認定の新語や政治・経済・医学・ITなどの術語が充実した、学習にビジネスに幅広く対応する待望の新刊です。主幹の松岡榮志先生に、「超級」という単語を巡る北京でのさまざまなエピソードを綴っていただきました。

「超級」の北京から

 今日は、二月六日、北京では「年三十」である。朝からあちこちで、爆竹が鳴り始めている。「年三十」とは、農(陰)暦の「大晦日」のこと。書き言葉では「除夕」とも言うが、テレビなどのアナウンサーは、もっぱら「年三十」を使っている。明日は、農暦の元旦、つまり「春節」なのである。

 中国では、新暦の元旦は祭日ではあるが、取り立てて騒いだりはしない。もっとも、今年は北京オリンピックの年なので、その記念番組は放送していたが、今ひとつ盛り上がりに欠けていた。ところが、春節は別物である。近くに、「超市発」という名のスーパーマーケットがあるが、この二,三日の混みようは、すさまじい。大きなカートを押したおじさん、おばさん、老若男女が、山のように食料品やら雑貨品を買っていく。レジの前は、長蛇の列である。おまけに、あちこちの電視台(テレビ局)がこの店の賑わいをニュースで報じるので、またまた客が増える。

 この「超市発」の「超市」は、「超級市場」のこと。英語の、supermarketの直訳である。「超級市場」ということばは、1980年代に中国の社会にお目見えし、やがて「自選市(商)場」に取って代わられた。というのは、はじめは外国人相手の友誼商店などにできたのだが、規模が小さかったため、「超級」と呼ぶのはおかしいとされた。そして、自分で手にとって商品を選べる(中国ではその頃、買い取るまで商品をさわるのは難しかった)ので、「自選市(商)場」と呼ばれたのだった。やがて、日本でも「スーパー」と略称されたように、中国でも略して「超市」と呼ばれ、「超市発」のように、「発財(大金をもうける、の意)」と組み合わせて使われるようになった。もちろん、今ではあちこちに大きなスーパーや百貨店、コンビニが軒を連ねている。

 これを書いていると、テレビのニュースでは、米国の大統領候補選挙を報道している。そうだ、今日は「超級星期二」(スーパー・チューズデー)だった。

 今や、北京は「超級」にあふれている。『超級クラウン中日辞典』は、こうした北京や中国の「現在」を読み取るために、最近の新聞の3年間の記事を駆使して、「生きている語彙」を80000語選び出した。新語や百科語彙の解説はもちろん、その内容でも「超級」をめざしている。語釈や句例が豊富な「日中小辞典」や楽しい付録も満載で、皆さんの学習やビジネスにも強い味方になることを願っている。

 8月8日は、いよいよ北京オリンピックの開会式。テレビ観戦の時にも、ぜひこの辞典を手許において、競技や街のようすを存分に楽しんでいただきたい。

 (北京友誼賓館にて:2008/02/06)

【筆者プロフィール】
松岡榮志(まつおか・えいじ)
1951年生まれ。東京教育大学文学部卒業。東京大学大学院博士課程を経て、現在東京学芸大学教授、一橋大学大学院連携教授。
専攻は中国古典文学、中国語学。著書に『歴史書の文体』(樹花舎)、共著に『超級クラウン中日辞典』『クラウン中日辞典』(主幹、三省堂)、『日本の漢字・中国の漢字』『ユニコード漢字情報辞典』(ともに三省堂)、『漢字とコンピュータ』(大修館書店)、編訳書に『中国学レファレンス事典』『ことばと社会生活』『ことばの社会機能』(いずれも凱風社)などがある。

2008年 2月 8日