今週のことわざ

推敲(すいこう)

2008年5月26日

出典

唐詩紀事(とうしきじ)・賈島(かとう)

意味

文章・詩などの辞句を練ること。「推」は、押すこと。「敲(こう)」は、たたくこと。作文作詞に苦心をする。

原文

島赴挙至京。騎驢賦詩。得僧推月下門之句、欲推作一レ敲、引手作推敲之勢、未決、不覚衝大尹韓愈。及具言。愈曰、敲字佳矣。遂並轡論詩久之。〔島(とう)、挙(きょ)に赴き京に至る。驢(ろ)に騎(の)りて詩を賦す。僧は推す月下の門の句を得たるも、推(すい)を改めて敲(こう)と作(な)さんと欲(ほっ)し、手を引きて推敲(すいこう)の勢を作(な)し、未(いま)だ決せざるに、覚えず大尹韓愈(たいいかんゆ)に衝(あた)る。及(すなわ)ち具(つぶさ)に言う。愈曰(いわ)く、敲の字佳(か)ならん、と。遂(つい)に轡(くつわ)を並べ詩を論ずること、これを久しうす。〕

訳文

賈島(かとう)は科挙の試験を受けるため、都へやってきた。驢馬(ろば)に乗って、その上で詩を作っていた。「僧は推す月下の門」という一句を作ったが、「推す」という語を「敲(たた)く」という語に改めようかと思い、押す動作や敲く動作を手でやりながら驢馬を歩ませていて、まだどちらの語とも決まらないうちに、うっかり都の長官韓愈(かんゆ)の行列に突き当たってしまった。そこで賈島は韓愈に、事情を詳しく説明した。韓愈は、「それは『敲く』のほうがよかろう。」と言った。二人はそのままうち解けて、馬を並べて、長い間詩を論じ合いながら行った。

解説

賈島(かとう)(七〇九?~八〇三?)のこのときの詩「題(だいス)季疑(りぎノ)幽居(ゆうきょニ)(=李疑は、一説には李凝(りぎょう))」という以下の作で、『三体詩(さんたいし)』に収録されている。「閑居隣並(りんぺい)少なく、草径(そうけい)荒園に入る。鳥は宿る地中の樹、僧は敲(たた)く月下の門。橋を過ぎて野色(やしょく)を分かち、石を移して雲根(うんこん)を動かす。暫(しばら)く去って還(ま)た此(ここ)に来る、幽期言(げん)に負(そむ)かず。」韓愈(かんゆ)(七六八~八二四)は当時の大官であり、大作家だった。この故事に示された出会いによって、初め僧侶(そうりょ)だった賈島は韓愈の門人となり、のち還俗(げんぞく)して詩作を事としたという。

筆者プロフィール

三省堂辞書編集部