学習者コーパス“NICE”の特徴 (3)
2008年 7月 15日 火曜日 筆者: 阪上 辰也学習者コーパス入門 第5回
今回は、3つ挙げた「NICE」の特徴の中で、3つ目となる「母語話者による添削文の付与」について説明します。
学習者が、英語で書いたり話したりすると、何らかの「エラー(誤用)」が含まることがあります。簡単な例を挙げると、「He lives in Nagoya.」という文を書くべきところを、ある学習者が「He live in Nagoya.」と書いた場合、この文には、文法に関するエラーが含まれています。つまり、主語の He に対応して、動詞の現在形は、語尾に s を付けて「lives」と書くべきなのに、その動詞を変化させなかった、というエラーになります。こうしたエラーに関する情報と「正しくはどう書くべきだったのか」という修正内容については、これまでの学習者コーパスには十分に付与されていませんでした。
そこで、NICE では、英語母語話者による添削文を付与することにしました。添削文を付与することにより、どのようなエラーが含まれていたか、実際はどう書くべきだったのかを分析できるようになります。それでは、NICE の実際のデータを見てみましょう。次の画像をクリックしてください。
NICE では、母語話者による添削文が、%NTV で始まる行に書き込まれています。例えば、1つ目の文を見ると、「Does death penalty really need?」という学習者が書いた文を、母語話者は「Is the death penalty really necessary?」と書き換えています。この学習者の文は、他動詞の need を使用した結果、「死刑が、本当に(何かを)必要としているか」という文になってしまい、意味が通じません。学習者の意図は、「死刑という制度は本当に必要なものであるのか」と述べることにあると考えられるため、母語話者は、be 動詞と形容詞の necessary を使って書き換えているわけです。
ちなみに、添削にあたっては、「学習者が使っている単語や表現をできるだけ活かす形で書き換える」という方針を母語話者に伝えています。ですから、方針に「従っていない」添削文、つまり、学習者の書いた単語や表現をほとんど利用していない添削文になっていれば、学習者が書いた単語や表現に大きな問題(=重大なエラー)があるのではないかと「推測」することができます。
最後に、添削文の利用について、気をつけるべき点が2つあります。1つは、母語話者による添削文が1つしかないという点です。添削文は、絶対的な正解ではなく、別の書き換え方の可能性があるということを心に留めておく必要があります。もう1つは、分析が必要であるという点です。%NTV の行には、添削文が載っているだけですから、それがどのようなエラーで、どの部分が何に書き換えられているかについては、分析者がエラーの分類・判断をしなくてはいけません。
これまでは、NICE に関する特徴を紹介していきました。次回以降は、NICE を使った分析事例の紹介、ならびに、分析手法について紹介していきたいと思います。
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▼お知らせ
現在、学習者コーパス「NICE」のベータ版配布を行っています。無償で利用可能ですが、お申し込みが必要です。詳しくは、こちらのサイトをご覧ください。
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■筆者プロフィール
阪上辰也(さかうえ・たつや)
名古屋大学大学院 国際開発研究科 特任助教。
専門は、コンピュータを利用した外国語教育。
ウェブサイトは、sakauetatsuya.net。







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