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英英辞典をどう使わせるか (2)

2008年 7月 25日 金曜日 筆者: 関山 健治

英語辞書攻略ガイド (10)

前回に引き続き,応用編として,主に英語を専門とする学科,コースの高校生,大学生や先生方を対象に,一般にはあまり知られていない英英辞典の使い方をお話しします。

Step 3:英和辞典でぴんとこないときに引いてみる

『リーダーズ英和辞典』(研究社)などの一般英和辞典では,翻訳の便を考え,なるべく多くの訳語を載せるようにしています。たとえば,interestingを引いてみると,「興味深い,おもしろい,人の関心をひく,珍しい,変わった,奇妙な」とあります。しかし,「興味深い,おもしろい」と「奇妙な,変わった」という,一見何の脈絡もない語義が並んでいると,戸惑う人も多いのではないでしょうか。

英英辞典でinterestingを引くと“attracting your attention because it is special, exciting or unusual”(OALD7)とあります。すなわち,「特別で変わっているからわくわくして興味を引く」という語義がinterestingの本質であることが分かります。

interesting.jpg
(OALD7)

このように,英和辞典を引き,すでに意味を知っているはずなのに,どうもぴんとこないというときが英英辞典の出番です。意味を知っている(つもりの)単語を引くようにすると,英英辞典の定義にこめられている細かなニュアンスまで理解できることでしょう。毎回の授業で,生徒がすでに知っている単語を数語英英辞典で引かせてみて,知っているつもりの単語が持つ意外な意味やニュアンスに気づかせることは,語彙力をつける上でも有効です。

Step 4:和英辞典のかわりに英英辞典を引いてみる

英英辞典は,英語を読んだり,単語の意味をより深く理解したいときだけに使うものではありません。慣れてくると,英語を書くときなどに和英辞典のかわりとして使うこともできます。

たとえば,「(扇風機の)羽根」を英語で何というか知りたい場合,「羽根」を和英辞典で引く人が多いと思いますが,英英辞典でfanを引いても調べられます。

fan.jpg
(LDOCE4)

同様に,「ぶちの(=斑点のある)犬」は,「斑点のある動物」が何であるかを考え,英英辞典でleopardなどを引いてみると分かります。

leopard.jpg
(OALD7)

「辞書を引く」というと,自分が調べたい単語そのものを英和辞典や和英辞典で引く人が多いのですが,ともすれば機械的な作業になり,興味が持てなくなってしまう生徒も多いでしょう。英英辞典を使えば,調べたい語そのものを引くのではなく,調べたい語に関係のある単語は何であるかを自分の頭で考える必要がありますので,より主体的な英語学習をすることができます。

(英語教員にとっての英英辞典)教える内容を取捨選択する手がかりとして

以前にもふれたように,最近の英和辞典は,高校生向けと謳っている辞書でも,大学入試のレベルをはるかに超える詳細な情報が満載されています。そのため,教育実習生など,不慣れな教員が学習英和辞典で教材研究をすると,高度な内容も盛り込んでしまい,実際の授業で消化不良になってしまうことがあります。

一方,とくに最近の外国人学習者向け英英辞典は,情報量を競うというよりは,見やすさ,引きやすさを競うようになっており,全世界の英語学習者が身につけるべき内容に限って分かりやすく提示しています。教育実習生には,教案を書いた後で学習英英辞典を引き,教える内容に無理がないかを確認するように指導してはいかがでしょうか。

(番外編)「定義しりとり」で楽しく英英辞典に親しむ

正課の授業内では難しいでしょうが,英語研究部やESSの活動の一つとして,英英辞典を使った「定義しりとり」はいかがでしょうか。

2人ペアとなり,どちらかが「お題」の単語(最初のうちは,重要語の名詞に限るなど,出題範囲を制限するとうまくいきます)を言い,もう一方の人は,その単語を自分なりに英語で説明(定義)し,その後,英英辞典で「お題」の語を引き,答え合わせをします。今度は,逆に定義をした人が,前の「お題」の末尾の語で始まる語から新たな「お題」を出し,相手の人が定義を言います。

このような活動を通して,身近なものを英語で説明する力が身につきます。身近に英語母語話者がいない環境でも,自分で定義するのに苦労した箇所を,英英辞典という「ネイティブ・スピーカー」に確認することで,英語を書いたり話したりするよい勉強になるでしょう。

「英語を話す活動」として,自由英会話などを行っている英語サークルは多いと思いますが,話す内容がありきたりになってしまったり,日本人同士という気安さで,fluencyを重視するあまり,accuracyへの意識が弱くなってしまうこともあります。「定義しりとり」なら,説明する内容が「お題」としてあり,しかもそれは毎回変わるので,マンネリになることはありませんし,英英辞典という「お手本」で自分の説明した内容を常にチェックできるのですから,表現力を身につけるためにうってつけであると言えます。

次回は,類語辞典(シソーラス)や連語辞典といった,一般にあまり知られていない辞書を紹介し,英語学習,教育で活用する方法を考えてみたいと思います。


【筆者プロフィール】

関山健治(せきやま・けんじ)
1970年愛知県生まれ。南山大学大学院外国語学研究科英語教育専攻修士課程修了(応用言語学),愛知淑徳大学大学院文学研究科英文学専攻満期退学(英語辞書学・語用論)。現在,沖縄大学法経学部准教授。

著書に『辞書からはじめる英語学習』(2007,小学館),『ウィズダム英和辞典第2版』(共同執筆,三省堂,2006),訳書に『英語辞書学への招待』(共訳,大修館書店,2004),『コーパス語彙意味論』(共訳,研究社,2006)などがある。


【編集部より】
英語辞書界にこの人ありと言われる関山健治先生に,英語の辞書に関する有益な情報を集中連載していただきます。
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