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地域語の経済と社会 第14回

2008年 9月 13日 土曜日 筆者: 山下 暁美

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第14回「一日で全国の方言を聞く方法」

【県別方言パンフレット件数】
【県別方言パンフレット件数】
(クリックで拡大します)

【収集した方言パンフレット】
【収集した方言パンフレット】

 この全国地図(右画像)は、東京都内のアンテナショップと、都道府県会館を訪問して、方言が使用されているパンフレットの件数を色分けによって比較したものです。1部のパンフレットにいくつかの方言が掲載されていても、1件と数えました。そのパンフレットにどんな方言が使用されているか詳しい説明は、またの機会にします。北海道などはパンフレットは0件ですが、食品には使われています。アンテナショップも都道府県会館もない県はありませんでした。10件以上は、多い順に沖縄、福島、山形、宮城、鹿児島、岐阜です。赤とピンクは、件数が多い地域を示していて、東北、中部・北陸、九州南部・沖縄が固まりに見えます。方言グッズを入れると、近畿地方も多くなります。都道府県会館には、分室も含めて44の都道府県が入っています。たいてい誰かが訪問者に応対をしているか、電話で話しています。耳をすますと、全国各地の方言が聞けます。

 東京都内のアンテナショップで、四国を一巡りしてみましょう。高知県のアンテナショップには、「歩きよったら考えも変わるきね」というシールが店頭に置かれています。香川県には、「豚汁たべてんまい」「香川の酒さぬきようまい」。さらに、「泣きたかったら、泣きゃーええがー」というシールもあります。徳島県のシールは「おまはんだけでないんじょ」、愛媛県は「焦らんでええけん」などがあって、四国お遍路をして救われたような気分になります。人生のアドバイスを方言でしてくれるので、特に同県出身者は、ホッと胸のつかえがおりることでしょう。店員さんも方言で応対をしてくれます。

 愛媛県のパンフレットに「めちゃ」(めっちゃではない)、山口県では、いりこだしの素に「ぶちうまい」などの新方言も見られます。

 方言によって地方色を強調している県は、「ふるさと検定試験」にも熱心に取り組んでいて、ショップで検定試験問題を見ることができます。例えば、秋田県では、秋田ふるさと検定実行委員会というのがあって、平成20年度は11月16日(日)に第2回2級と第3回3級を実施するようです。1級については、平成21年度の実施だそうです。その中の方言の問題をご紹介します。(以下、本文通り)

【生活文化】 身体の部分をあらわす秋田方言はどれか。
1.ちょす 2.なじき 3.ぼだ 4.しが

 さて、正解はどれでしょう。秋田の友だちがいたら、正解を聞いてください。

 方言資料の収集を目的にして、ショップ巡りをすると、まず、麺類がたくさんたまっていきます。つぎに、甘いお饅頭やお菓子がたまります。方言がそばやラーメン、お菓子の商品名だったり、説明が方言だったりするので、買ってしまうと当分の間、各地の麺を食べ続けることとなり、冷蔵庫も賞味期限付きのお饅頭とお菓子でいっぱいになります。おなかはいっぱいになっても、おさいふはからっぽになって、「言語経済学」とはかくもつらい研究なのです。

 パンフレット集めに明海大学外国語学部4年生の早坂直記さんが筆者に同行して助手を務めてくれました。

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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

『海外の日本語の新しい言語秩序―日系ブラジル・日系アメリカ人社会における日本語による敬意表現』『書き込み式でよくわかる 日本語教育文法講義ノート』山下暁美(やました・あけみ)
明海大学外国語学部・大学院応用言語学研究科教授。博士(学術)。
専門は、日本語教育学・社会言語学。研究テーマは、移民百年を迎えた、ブラジル、アメリカ合衆国などにおける日本語の変化、外国人の日本定住化による共生時代の日本語教育政策。
著書に『書き込み式でよくわかる日本語教育文法講義ノート』(共著、アルク)、『海外の日本語の新しい言語秩序』(単著、三元社)、『スキルアップ文章表現』(共著、おうふう)、『スキルアップ日本語表現』(単著、おうふう)、『解説日本語教育史年表(Excel 年表データ付)』(単著、国書刊行会)、『ふしぎびっくり語源博物館4 歴史・芸能・遊びのことば』(共著、ほるぷ出版)などがある。

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載の始まりです。

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2008年 9月 13日