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『三省堂国語辞典』のすすめ その40

2008年 11月 5日 水曜日 筆者: 飯間 浩明

「鉄都」の読み、おかげさまで分かりました。

【鉄都の活気】
【鉄都の活気】

 『三省堂国語辞典 第六版』に、「鉄都」という項目が採用されました。〈鉄鋼産業のさかんな都市〉ということです。主要な辞書には載っていませんが、製鉄所の集まる地方ではよく使われることばです。現代語辞書の扱う範囲に入っていると判断しました。

【何と読むべきか?】
【何と読むべきか?】

 ただ、このことばの読み方がよく分かりません。「てつと」でしょうか、「てっと」でしょうか。「鉄塔」「鉄槌」などからすれば「てっと」のようですが、確証はありません。たまたま『鉄都鞍山の回顧』(1957年)という本が見つかりましたが、奥付にはルビがありませんでした。古い本なので、そもそも、他の部分でも促音を小書きにしていません。

 「つ」か、それとも、「っ」か。思い余って、鉄鋼業に関係の深い自治体に電話で尋ねてみました。「分からない」という回答もあった中で、釜石市役所総務課のIさんは、たいへん協力的に応対してくださいました。同僚の方などに尋ねた結果を、折り返しの電話で知らせてくださいました。

 まず、総務課の30代から40代の職員に聞いた結果によれば、「てつと」という意見と「てっと」という意見があり、「てつと」がやや優勢ということでした。また、教育委員会の文化財担当で、年配の委員と話をする機会の多い30代の職員に聞いたところ、ふつうは「てつと」と言うとのことでした。

 Iさんは、さらに、釜石市立「鉄の歴史館」にも問い合わせてくださいました(私は、不勉強で、その施設を存じ上げませんでした)。館長のお話によれば、この件はよく質問を受けるらしいのですが、「てつと」と発音しているということでした。

 このように、Iさんのお答えはじつに行き届いたもので、「てつと」が小さくない勢力を持つことをうかがわせるに十分な内容でした。私は、予想外の懇切なお答えに恐縮して、電話口で何度も頭を下げつつお礼を申し上げました。

【「炭都」も新規項目】
【「炭都」も新規項目】

 釜石市でかりに「てつと」が優勢だとしても、それが無条件で全国共通の語形とはならないことはもちろんです。とはいえ、鉄鋼業の本場に問い合わせて得た結果は、最も尊重すべき情報であることも事実です。「鉄都」のかな見出しは「てつと」としてよいと、私たちは結論しました。その決め手となったのは、釜石市役所総務課のIさんのご回答でした。このことを記して、お礼のしるしとします。

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筆者プロフィール

飯間浩明(いいま・ひろあき)
 早稲田大学非常勤講師。『三省堂国語辞典』編集委員。
 早稲田大学文学研究科博士課程単位取得。専門は日本語学。古代から現代に至る日本語の語彙について研究を行う。NHK教育テレビ「わかる国語 読み書きのツボ」では番組委員として構成に関わる。著書に『遊ぶ日本語 不思議な日本語』(岩波書店)、『NHKわかる国語 読み書きのツボ』(監修・本文執筆、MCプレス)がある。
URL:ことばをめぐるひとりごと(http://www.asahi-net.or.jp/~QM4H-IIM/kotoba0.htm)

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【編集部から】
生活にぴったり寄りそう現代語辞典として定評のある『三省堂国語辞典 第六版』が発売され、「【サンコク】メディアでの紹介」の記事にある通り、各方面で取り上げていただいております。その魅力をもっとお伝えしたい、そういう思いから、編集委員の飯間先生に「『三省堂国語辞典』のすすめ」というテーマで書いていただいております。

2008年 11月 5日