辞書引き学習・辞書指導

2009年1月23日

紅葉の彩りも深まったころ、京都・北大路にある立命館小学校にお邪魔してきました。立命館小は2006年4月に開校、現在は5年生までが学んでいます(はじめ3年生と1年生の募集だったため)。

私たち、辞書の編集部が訪れた理由は、小学生の辞書利用の様子を直接この目で見るため。立命館小は「辞書引き学習」を授業(というよりも学校生活全般)に取り入れ、児童の興味・好奇心や学習意欲を喚起し、実践している学校として、保護者の方、教育界や、出版界などの注目の的となっています。

深谷圭助校長先生は、「辞書引き学習法」の提唱者。『7歳から「辞書」を引いて頭をきたえる』(すばる舎)、『辞典・資料がよくわかる事典―読んでおもしろい もっと楽しくなる調べ方のコツ』(PHP研究所)、「辞書引き学習自学ドリル」シリーズ(MCプレス)など多数のご著書があります。

ことばへの興味・関心が高まっている小学1年生から辞書に親しみ、辞書引き学習を身につけることは、学力向上につながり、辞書を引くことそのものの楽しさを知ることができる、ということが、それぞれのご著書からうかがえるのですが……やはり自分の目で、小学生がどのように学習しているのか見たいという思いがあり京都まで出かけました。

立命館小に着くと、深谷校長先生が校内を案内してくださいました。まず、どこも広い廊下、ゆったりとしたスペースです。校内には、畳敷きの伝統文化室、ロボットのプログラム・操作ができる部屋、図画工作の授業として茶道の茶碗をつくるなど陶芸に親しむ陶芸室、演劇や合唱など舞台の練習・発表ができるシアターもあります。メディアセンター(図書室)にはさまざまなジャンルの本があり、調べ学習に最適な資料もかなりの量、絵本や小説などは月ごとのテーマで置かれるものが変わるとのことでした。

さて、気になる授業の様子ですが……

教室は、窓際に机が並ぶ通常の教室スペース、その手前、廊下との間に同じくらいのオープンスペースがあります。オープンスペースは各クラスの間も可動式のしきりになっていて、教室空間そのものもゆったり。

机の上には……2冊の辞書が置かれていました。漢字辞典と国語辞典。まず1年生の教室からうかがったのですが、入学から半年ほどのものが、冒頭の写真にある辞典です。もうたくさんの色とりどりのふせんが付いています。

どのクラスでも、机の上に辞書が置かれています。別の授業で児童がいない教室も、机の上に辞書が置いたままであったり。 「国語の授業に力を入れている学校なんだなぁ」と受け取られたでしょうか。もちろん、国語に力を入れていることには変わりはありませんが、辞書引き学習は「国語」だけでおこなわれているのではありません。教室でおこなわれる全ての授業が、辞書を手元に置いての授業なのです。

そして、今年から立命館小学校で試みられているのが、百科項目も入っている辞典での実践です。項目数23万8000*の『大辞林』も使われているとのこと、その様子ものぞいてきました。*ウェブ版は2008年12月下旬に25万8000に増補

ちょうどそのとき、先生が「『錦』のついたことばはほかにどんなことばがある?」と投げかけると、あちこちで「ハイ!」「ハイ!」「ハイ!」と手が挙がり、
「○○辞典には……とあります」
「□□には……って書いてあります」
と元気な声が。

もちろん大人向けの辞書なので、読めない字もある。そこは先生がフォローして、とにかく辞書によって得られることをみんな精いっぱい受け止めている。クラスのほかの子が持っている辞書と比べてみて、辞書の内容がそれぞれ違うこと、そのおもしろさにも気づいている。もうすっかり辞書と友達になっていて、何かあったら友達に聞くのと同じように、辞書にも聞いているよう。

好奇心旺盛、興味がいろんなところに向くその時期に、辞書が近くにあることは大切なことだと、今さらながら、辞書の編集に携わっている者ながら、しみじみと感じ入りました。