2009年 3月 のアーカイブ

『枕草子日記的章段の研究』発刊に寄せて (1)

2009年 3月 31日 火曜日 筆者: 赤間 恵都子

(1) 紫式部と清少納言

 昨年は「源氏物語千年紀」ということで、京都を中心とした物語ゆかりの地で様々な企画が行われました。私も初夏に京都文化博物館を訪れて「源氏物語千年紀展」に展示された数多くの見事な文化財を鑑賞しました。また、年末には東京で『源氏物語』をテーマにした雅楽の会に足を運び、廃絶した男踏歌(正月14日に、男達が足を踏みならし拍子をとって歌を歌いながら、宮中から貴顕の邸を巡った年中行事)の再現や琴(きん)の演奏に感銘を受けました。
 千年も前の文学作品が、こんなにも幅広い豊かな伝統文化を現代にもたらしてくれることには今更ながら驚かされます。

 さて、このように人々の心を魅了し続ける物語の作者は言うまでもなく紫式部という一人の女性です。そして、彼女があからさまな敵意を持って指弾した相手が清少納言です。『紫式部日記』に記された次の文章は有名です。

清少納言こそ、したり顔にいみじうはべりける人。さばかりさかしだち、真名書き散らしてはべるほども、よく見れば、まだいとたらぬこと多かり。

(清少納言といえば、得意そうな顔をして我慢のならない人。あれほど偉そうに漢字をおおっぴらに書いていますけど、よく見れば、まだまだ不十分な点がたくさんあります。:筆者訳)

 随分辛辣な文章ですが、紫式部がここまで書いたということは、彼女にとって清少納言がそれだけ大きな存在だったということでもありましょう。

 実は、私は『枕草子』の研究をライフワークにしている者です。この度、遅々たる研究の成果をやっと一書にまとめることになったので、その内容をご紹介しつつ、一足先に千年紀を過ぎたもう一人の女流文学者のお話を聞いていただけたらと思って登場しました。

 紫式部が清少納言にライバル心を燃やす理由は、一条天皇の二人の后にそれぞれが仕えていたという立場上の問題が関係します。でも、それならなぜ、清少納言が紫式部に反論した記事は残っていないのでしょうか。

 『枕草子』には紫式部の夫藤原宣孝(のぶたか)の記事が取り上げられており、紫式部がそれに反発して先の文章を書いたのだという意見もあります。『枕草子』の宣孝の記事というのは、「あはれなるもの」という章段に書かれたものです。ただし、本題の「あはれなるもの」とは関係のない余談とでもいえる挿入話です。
 それは、藤原宣孝が熊野の御獄詣でをする際に、「神様は質素な装いで詣でよとはおっしゃっていない」と言って、息子と共にわざと派手な装束を纏って参詣し願を叶えたというもので、いかにも清少納言の好みそうな話題です。しかし、決して悪意を持って書かれてはいませんし、宣孝が紫式部と結婚する前の出来事であり、紫式部がことさらこの記事にこだわる理由はないと思います。

 紫式部が藤原道長の娘である中宮彰子の許に出仕したとき、一条天皇のもう一人の中宮(皇后)定子は既に亡く、定子に仕えていた清少納言の方が紫式部をライバル視する立場にはいませんでした。にもかかわらず、なぜ紫式部が清少納言を一方的に攻撃しなければならなかったのでしょうか。

 それは、定子崩御後もその洗練された後宮文化を世間に知らしめる『枕草子』という作品が存在していたからではないか、さらに、それが定子の遺した第一皇子を皇位継承者として認めさせるような力を持っていたからではないかと私は考えます。彰子が懐妊し、道長の孫となる第二皇子が誕生したとき、第一皇子を支える文化圏の筆頭にいた清少納言をここぞとばかり罵倒するのは、道長家のお抱え女房として必然的なことだったのではないでしょうか。

 さて、これは拙著『枕草子日記的章段の研究』の結論に相当する部分です。ここに至るまでに私なりに多くの時間と様々な考察を費やしてきました。次はそれについて少しお話したいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお見知りおきください。

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【著者プロフィール】

赤間 恵都子(あかま・えつこ)
十文字学園女子大学短期大学部文学科国語国文専攻教授。博士(文学)。
専攻は、『枕草子』を中心とした平安時代の女流文学。研究テーマは、女流作家が輩出した西暦1000年前後の文学作品の主題や歴史的背景をとらえること。
【主要論文】
「枕草子研究の動向と展望―年時考証研究の視座から―」(『十文字学園女子短期大学研究紀要』2003年12月)、「『枕草子』の官職呼称をめぐって」(『枕草子の新研究―作品の世界を考える』新典社 2006年 所収)、「枕草子「二月つごもりごろに」の段年時考」(『百舌鳥国文』2007年3月)など。

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【編集部から】

このたび刊行いたしました『枕草子日記的章段の研究』は、『枕草子』の「日記的章段」に着目して、史実と対照させ丁寧に分析、そこから清少納言の主体的な執筆意志をとらえるとともに、成立時期を新たに提案した『枕草子』研究者必読の一冊です。著者の赤間恵都子先生に執筆にいたる経緯や、背景となった一条天皇の時代などについて連載していただきます。(隔週掲載)

耳の文化と目の文化(14)-視覚的な特性(7)

2009年 3月 30日 月曜日 筆者: 新田 春夫

クラウン独和辞典―編集こぼれ話―(45)

名詞の大文字書きは名詞が文の中で情報を担う重要な要素であり、それを拾い読みするだけで文やテクストの大体の意味を読み取ることができるから、読み手にとってはたいへん便利である。しかし書き手にとっては何が名詞であるかは必ずしもはっきりしているわけではない。angst/Angstは「不安な」/「不安」という意味の形容詞または名詞であるが、その使い分けの原則は統語的な基準によって、文の中で動詞sein,werdenのなどの補語となったときは形容詞として小文字で書き、動詞や前置詞などの目的語になったときは名詞として大文字で書く:Mir ist angst./Ich habe Angst.「私は不安だ」。

しかし、recht/Recht「正しい、適切な」/「正当性」の場合は、Das ist mir ganz recht.「私はそれが好都合です」は形容詞として小文字で書くが、Du hast recht/Recht.「君の言うことは正しい」、Ich gebe dir recht/Recht.「私は君が正しいことを認める」の場合はどちらでもいいことになっている。これはrecht/Rechtはほんらいhabenの目的語であるから名詞であり、大文字で書くが、recht haben, recht gebenは全体として一つの意味をもった熟語であり、rechtはもはや名詞として独立しておらず、熟語の一部となっているという解釈である。

leid/Leidは「苦しい」/「苦しみ」という意味の形容詞または名詞であるが、Ich bin es leid.「私はそれが辛い」は形容詞として小文字で書く。前置詞の目的語となった場合は名詞であるから大文字で書くが、それが全体として副詞になった場合は1語に書き、小文字になる:Was habe ich ihm zu Leid[e] /zuleid[e] getan?「私が彼に何をしたというのか」。また、leidtunはほんらいLeid tun「苦しみを与える」という意味の句であり、Leidは動詞tunの目的語であるから名詞であるが、全体として「気の毒に思わせる」という意味の1語の分離動詞として認識されており、leidは小文字で書く:Er tut mir leid.「私は彼を気の毒に思う」。


【筆者プロフィール】
新田 春夫(にった・はるお)
武蔵大学教授
専門は言語学、ドイツ語学
『クラウン独和辞典第4版』編修委員


【編集部から】
「耳の文化と目の文化」をまとめて読むにはこちらです。

2008年2月に『クラウン独和辞典』(第4版)が刊行されました。日本初、「新正書法」を本格的に取り入れた独和辞典です。編修委員の先生方に、ドイツ語学習やこの辞典に関するさまざまなエピソードを綴っていただきます。

日本語社会 のぞきキャラくり 第32回 「否定」の流儀

2009年 3月 29日 日曜日 筆者: 定延 利之

「否定」の流儀

 下降調の「いやいや」は、「いやいや、そうじゃないんです」にしろ「いやいや、まったくまいりましたよ」にしろ何にしろ、『大人』の技である。たとえば『娘』は「ううん」とは言っても下降調の「いやいや」は言わない。「いやいや、迎えに来てくれないと泣いちゃう」などとダダをこねて甘えることはあるが、この「いやいや」は下降調ではない。これは上昇調の「いや」を2つつなげた「いやいや」、つまり冒頭の「い」をうんと低く、「や」は高く、次の「い」は少しだけ低く、最後の「や」をうんと高く発音する「いやいや」である。このように、「いやいや」という発言一つをとっても、そこにはさまざまなやり方があり、それらは話し手のキャラクタと結びついている。

 もっと身体的な否定技についてもやはり同じことが言える。中崎タツヤ氏のマンガ集『問題サラリーMAN』第4巻(日本文芸社、1995)には、仮に「片手直立左右振り」とでも呼べそうな否定技が3箇所出てくる。

 1箇所目は、同じマンションの住人どうしのトラブルが描かれたマンガのラストである(p.54)。「私の下着が盗まれた。犯人はおまえだ。証拠は何もないから警察には言わないし、名誉毀損になるから他人にも言いふらさない。だがおまえが盗ったと信じている」と狂信的に言いつのる女性にたまりかねた男性が、通りがかった管理人に「何とか言ってやって下さいよ」と助けを求める。年配のおとなしそうな管理人はハゲ頭から汗をにじませ必死の形相で、片手の肘から先を身体の前に立て、激しく左右に振ってみせる。「こ、こんなのにかかずらったら」と言わんばかりの拒絶ぶりである。

 2箇所目もやはり盗難絡みである(p.102)。人のいい泥棒が或る家にしのび込んだところ、そこで寝ていた男がひどくうなされているので放っておけなくなり、迷ったあげく男を起こす。泥棒から事情を説明された男が沈思黙考した後、おずおずと口にするのは「オレってもしかして生涯を通じてかけがえのない親友になる人と今、出会ってるんだろーか」というケッサクな結論である。男の前に正座してかしこまっている泥棒はすかさず「もうそんな」と汗をかいて謙遜しつつ、片手の肘から先を体の前に立て、左右に振ってみせる。

 そして3箇所目は、誤って水爆のボタンを押してしまった男の弁明シーンである。片手直立左右振りとともに男が汗をかいて語るのは、「違うんです ただボタンが汚れていたからきれいにしようと思って」という、こんなことで水爆がと情けなくなるような、おそろしくみみっちい動機である(p.135)。(ネタばれ、すみません。)

 いずれの例でも大人が汗をかきつつ片手直立左右振りをおこなっているが、特に汗をかかなくても片手直立左右振りは基本的に『大人』の技として成立する。きらいなニンジンを「食べる?」とたずねられれば、幼稚園児は「いや」と上昇調で言ったり頭を左右に振ったりはするが、片手直立左右振りはしない。するのは、別の食べ物が口に入っていてしゃべれない『大人』、あるいは少し離れたところにいて返答を大声でしなければならない、それがはばかられるという『大人』だろう。左右に振られる部位は肘先、あるいは手首の先であることが多く、肩から先全体が振られることは(今は亡き桂枝雀氏は落語の中でたびたびされていたが)多くはない。

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◇この連載の中国語版と英語版
  中国語版⇒角色大世界――日本
  英語版⇒An Unofficial Guide for Japanese Characters

【筆者プロフィール】

最新刊『煩悩の文法』(ちくま新書)定延利之(さだのぶ・としゆき)
神戸大学大学院国際文化学研究科教授。博士(文学)。
専攻は言語学・コミュニケーション論。「人物像に応じた音声文法」の研究や「日本語・英語・中国語の対照に基づく、日本語の音声言語の教育に役立つ基礎資料の作成」などを行う。
著書に『認知言語論』(大修館書店、2000)、『ささやく恋人、りきむレポーター――口の中の文化』(岩波書店、2005)、『日本語不思議図鑑』(大修館書店、2006)、『煩悩の文法――体験を語りたがる人びとの欲望が日本語の文法システムをゆさぶる話』(ちくま新書、2008)などがある。
URL:http://ccs.cla.kobe-u.ac.jp/Gengo/staff/sadanobu/index.htm

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【編集部から】
「いつもより声高いし。なんかいちいち間とるし。おまえそんな話し方だった?」
「だって仕事とはキャラ使い分けてるもん」
キャラ。最近キーワードになりつつあります。
でもそもそもキャラって? しかも話し方でつくられるキャラって??
日本語社会にあらわれる様々な言語現象を分析し、先鋭的な研究をすすめている定延利之先生の「日本語社会 のぞきキャラくり」。毎週日曜日に掲載しております。

地域語の経済と社会 第41回

2009年 3月 28日 土曜日 筆者: 田中 宣廣

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第41回「観光の方言メッセージの応用型・発展型」

 ここ数回(第31回第32回第36回第37回第39回,他)で観光の方言メッセージについてお話ししています。

 そのなかで私の回では,構成方式つまり『型』の観点から分類して見ていっています。

【写真1】
【写真1 馬っこと駅長さんが盛岡弁で歓迎】
(クリックで全体を表示)
【写真2】
【写真2 バスの「あねっこガイド」】
(クリックで全体を表示)

 第31回では,「いらっしゃいませ」もしくは「いらっしゃいました」の意の方言と,「地名」または「地名+『-へ』の方言」で構成されるメッセージを,『基本型』だと紹介しました。全国至る所で見ることができます。私どもで記録した例はおびただしい数にのぼっています。

 第36回では,第32回でも紹介された,観光の方言メッセージの原型「おいでませ山口へ」による各地の『基本型』について考えてみました。

 復習のため今回も例を示しましょう。岩手県のJR盛岡駅新幹線コンコースの歓迎メッセージ【写真1】は,典型的な例ですね。また,あねっこバスガイドの前掛け「よぐおでんすた」(岩手県盛岡市,「お」は手で隠れています)【写真2】は使い方のおもしろい例です。

【写真3】
【写真3 長いけど心が休まります】
(クリックで全体を表示)
【写真4】
【写真4 方言で全体を締めています】
(クリックで全体を表示)

 今回は,第36回で予告したとおり,観光の方言メッセージの“他の構成型”について考えます。

 『基本型』以外の,“他の構成型”には大きく分けて二つの種類があります。

 一つは,基本型をもとに,「他の内容」が多く加えられたものです。『応用型』と呼びましょう。「よぐ来たなはん ついでに、あちこちよく見でくなんせ」(よくいらっしゃいました。この機会にあちこちよく見てくださいな,掲示場所:岩手県JR盛岡駅新幹線コンコース)【写真3】などです。この例では「ついでに」以降の部分が,多く加えられた「他の内容」です。

【写真5】
【写真5 ちょー横長です】
(クリックで全体を表示)

 今一つは,「いらっしゃい」と「地名」による『基本型』とは根本的な組み立てが異なるものです。『発展型』と呼びましょう。「いってっみんべー」(行ってみよう,発信元:山形県天童市,掲示場所:山形県山形市山寺駅)【写真4】,「温泉さ入つて心も体もぬぐだまつぺえす」(温泉に入って心も体も温まりましょう,掲示場所:岩手県JR宮古駅,現地発音は[オンセンサ ヘァーッテ コゴロモ カラダモ ヌグダマッペァース])【写真5】などです。

 こう見てきますと,メッセージの『型』と目的は関連していることが判ります。『基本型』と『応用型』は,観光客の誘致と歓迎のどちらにも使っていますね。「いらっしゃいませ」の意のことばが両方に使えるからですね。掲示地点が,発信元から離れた地点なら誘致,発信元の現地なら歓迎になります。

 それに対して,『発展型』は勧誘また宣伝の目的になるようです。

 それと,「温泉さ…」の例は,第31回でお話しした《方向》の点で珍しいものです。この掲示は,先のとおりJR宮古駅にあり,発信元は,掲示地点の岩手県宮古市にある旅行業者です。宮古市は,陸中海岸国立公園の中心地ですが,この掲示は,そこを訪れた観光客への歓迎メッセージではありません。ここが珍しいところです。JR宮古駅を利用する《地域住民に向けたメッセージ》で,東日本や北海道各地の温泉地への旅行を勧誘しているのです。それを,宮古の方言で表現しています。

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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』田中宣廣(たなか・のぶひろ)
 岩手県立大学 宮古短期大学部 准教授。博士(文学)。日本語の,アクセント構造の研究を中心に,自然言語の実態を捉え,その構造や使用者の意識,また,諸方言の形成過程について考察している。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。著書『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』(おうふう),『近代日本方言資料[郡誌編]』全8巻(共編著,港の人)など。2006年,『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』により,第34回金田一京助博士記念賞受賞

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載。

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この連載への質問、また「ここでこんな方言みやげ・グッズを見た」などの情報は、問い合わせフォーム( http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/support/question.html )から、「地域語の経済と社会」への質問・情報である旨を記してご投稿ください。

近刊案内(2009年4月)

2009年 3月 26日 木曜日 筆者: 辞書ウェブ 編集部
三省堂の辞書・事典、2009年4月に出版が予定されているものは…

デイリーコンサイス韓日辞典

尹 亭仁 編
B7変型判 960ページ ¥1,995 ISBN 978-4-385-12300-4

携帯に便利な最新・充実の韓日辞典。新語・専門語を含め8万項目を収録(うち見出し4万8千、用例・成句3万1千、類語や対語など3千)。使用頻度の高い重要語をIPA付き、色付きで表示。鼻音化、濃音化する場合の実際発音を初めて併記。関連語・使役形・受身形なども掲載。2色刷。
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デイリーコンサイス日韓辞典

尹 亭仁 編
B7変型判 608ページ ¥1,785 ISBN 978-4-385-12305-9

携帯に便利な実用的な最新・充実の日韓辞典。現代生活に十分な5万項目を収録(うち見出し3万、用例2万)。韓国漢字の情報を充実させた初めての辞典。諺・四字熟語も豊富。1語で訳せない言葉は韓国語で説明。日常会話付き。2色刷。
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デイリーコンサイス韓日・日韓辞典

尹 亭仁 編
B7変型判 1,568ページ ¥3,360 ISBN 978-4-385-12310-3

携帯に便利な実用性抜群の韓国語辞典。変化の激しい韓国語の現在を捉えた最新・充実の内容。新語・専門語を含めて総項目数13万。韓日は8万項目(うち見出し4万8千、成句・用例3万1千、類語や対語など3千)、日韓は5万項目(うち見出し3万、用例2万)。助詞・助数詞一覧、動詞・形容詞活用表、日常会話など付録も充実。2色刷。
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デイリーコンサイス独和・和独辞典 第2版

早川東三 編
B7変型判 1,440ページ ¥3,360 ISBN 978-4-385-11996-0

最新のドイツ語正書法を採用した高密度独和・和独辞典の全面改訂版。小さな紙面に14万3千の項目を収録(独和7万8千、和独6万5千)。
独和は基本語を大幅に改訂し学習語彙を充実。見出し5万3千、用例
2万5千。3千の基本語は色付き、カナ発音を表示。和独は日常表現
に十分な見出し2万2千、複合語1万3千、用例3万。2色刷。
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すぐに役立つ 文例活用ブック

三省堂編修所 編
B6判 336ページ ¥1,470 ISBN 978-4-385-15827-3

“すぐに役立つ” シリーズ、待望の第2弾! いざという時に、すぐに役立つ基本文例 約120点を掲載。【場面別】文例集として、ビジネス文書文例集、メール文例集、公的文書の書き方例集ほか。【場面別】表現集として、言いかえのフレーズ集、敬語表現集、類語・類句集。「50音主要索引」付き。
『すぐに役立つ 文例活用ブック』のページへ

深谷圭助先生の辞書引き学習体験会(4月11日)

2009年 3月 26日 木曜日 筆者: 辞書ウェブ 編集部

以下のイベントは終了いたしました。イベントのもようはこちらをご覧ください。
 ⇒報告:深谷先生の辞書引き学習体験会3

「辞書引き学習」基本のステップは五つ! 今すぐ始めたい方はこちらをご覧ください。
 ⇒「辞書引き学習」とは(監修:深谷圭助)
 「やってみよう!」 「辞書引き学習」への取り組み―先生方・保護者の方へ―

ご家庭での取り組みの参考にと、深谷先生にインタビューをさせていただきました。以下をご覧ください。
 ⇒インタビュー「辞書引き学習」の深谷圭助先生《前編》
 ⇒インタビュー「辞書引き学習」の深谷圭助先生《後編》

最新のイベント情報は右にあります「おすすめ記事」からご覧ください。今後のイベント情報、また、これまでの報告など関連情報は以下からもご覧いただけます。
 ⇒「辞書引き学習」についての情報

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『三省堂 例解小学国語辞典 第四版』刊行記念
親子いっしょに、深谷先生の「辞書引き学習」を体験しよう!

 すべての漢字にふりがなを付け一年生からでも使える『三省堂 例解小学国語辞典 第四版』が、このほど刊行されました。これを記念して、この辞典の推薦者でもある、辞書引き学習の提唱者として著名な深谷圭助先生が、みずから辞書引き学習を指導して下さいます。この機会に、親子でぜひ、楽しみながら言葉の力をつける辞書引き学習をご体験下さい。

日時:2009年4月11日(土)13:30~15:30(サイン会含む)
場所:そごう千葉店 本館9階「滝の広場」
講師:深谷圭助先生(立命館小学校校長)
募集人員:20組×2名=40名(先着順)
対象年齢:小学校低学年のお子様と保護者
応募方法:三省堂書店千葉そごう店の店頭もしくは下記電話にて申込受付
     (定員になり次第締切とさせていただきます)
     電話:043-245-8331(三省堂書店千葉そごう店・代表)
持ち物:辞典・文房具は主催者側でご用意いたします
主催:三省堂書店千葉そごう店

【編集部からのお知らせ】

上記のイベントは終了いたしました。イベントのもようはこちらをご覧ください。
 ⇒報告:深谷先生の辞書引き学習体験会3

このウェブサイトにて、深谷先生のインタビューを掲載しています。以下をご覧ください。
 ⇒インタビュー「辞書引き学習」の深谷圭助先生《前編》
 ⇒インタビュー「辞書引き学習」の深谷圭助先生《後編》

編集部で立命館小へうかがいました。以下に訪問記を掲載しています。
 ⇒「辞書引き学習」の立命館小訪問記1
 ⇒「辞書引き学習」の立命館小訪問記2

人名用漢字の新字旧字:「遡」と「遡」

2009年 3月 26日 木曜日 筆者: 安岡 孝一

」と「

旧字の「」(2点しんにゅう)は、人名用漢字なので子供の名づけに使えます。でも、新字の「」(1点しんにゅう)は子供の名づけに使えません。旧字の「」は出生届に書いてOKですが、新字の「」はダメ。でもこれは、むしろ国語審議会と文化庁の方針だったのです。

常用漢字以外の漢字の字体に関して議論を進めていた国語審議会は、平成10年6月24日、文部大臣に表外漢字字体表試案を報告しました。表外漢字字体表では、旧字のが印刷標準字体として、新字のが簡易慣用字体として、それぞれ示されていました。この報告の意味するところは、印刷物には原則として旧字の「」を用いるのが望ましいが、必要に応じて新字の「」を用いてもかまわない、ということでした。

ところが、平成12年12月8日に国語審議会が答申した表外漢字字体表では、印刷標準字体に旧字のが収録されていたものの、新字の「」は掲載されていませんでした。その代わり、旧字の「」には、3部首許容というアヤシゲなものが付加されていました。表外漢字字体表では、しんにゅう、しめすへん、しょくへんの3部首の漢字については、たとえ印刷標準字体として旧字体が示されていても、しんにゅう、しめすへん、しょくへんを新字体で印刷してもかまわない、ということになっていました。つまり、旧字の「」(2点しんにゅう)が印刷標準字体として示されていても、必要に応じて新字の「」(1点しんにゅう)を印刷に用いてもかまわない、ということだったのです。

平成16年2月20日、経済産業省は、漢字コード規格JIS X 0213を改正しました。文化庁の要求に応じて、表外漢字字体表に対応させるためです。元々JIS X 0213には、第1水準漢字に新字の「」が掲載されていたのですが、改正後のJIS X 0213では、新字の「」の代わりに、旧字のが掲載されました。

平成16年3月26日に法制審議会のもとで発足した人名用漢字部会は、1ヶ月前に改正されたばかりのJIS X 0213、文化庁が表外漢字字体表のためにおこなった漢字出現頻度数調査(平成12年3月)、全国の出生届窓口で平成2年以降に不受理とされた漢字、の3つをもとに審議をおこないました。旧字の「」は、JIS X 0213の第1水準漢字で、出現頻度数調査の結果が626回でしたから、文句なしに人名用漢字の追加候補となりました。一方、新字の「」は、JIS X 0213には掲載されていなかったので、審議の対象にすらなりませんでした。平成16年8月25日、人名用漢字部会は追加候補488字を選定し、法制審議会に報告しました。この488字の中に、旧字の「」は含まれていましたが、新字の「」は含まれていませんでした。平成16年9月27日、戸籍法施行規則は改正され、これら追加候補488字は全て人名用漢字になりました。旧字の「」は人名用漢字になりましたが、新字の「」は人名用漢字になれませんでした。

ちなみに、本日(平成21年3月26日)、文化庁は国語施策懇談会を開催します。旧字の「」(2点しんにゅう)を、新常用漢字表(仮称)に追加することに関して、説明会をおこなうようです。新字の「」(1点しんにゅう)をあえて避けたのはどうしてなのか、いったいどういう説明がなされるんでしょうね。


【筆者プロフィール】
安岡孝一(やすおか・こういち)

京都大学人文科学研究所附属漢字情報研究センター准教授。
京都大学博士(工学)。JIS X 0213の制定および改正で委員を務め、その際に人名用漢字の新字旧字を徹底調査するハメになった。著書に『キーボード配列QWERTYの謎』(NTT出版)、『文字コードの世界』(東京電機大学出版局)、『文字符号の歴史―欧米と日本編―』(共立出版)などがある。
http://slashdot.jp/~yasuoka/journal で、断続的に「日記」を更新中。

『三省堂国語辞典』のすすめ その60

2009年 3月 25日 水曜日 筆者: 飯間 浩明

辞書作りは、指笛を聴きながら。

【田村大三氏の演奏する姿の載る、著書の表紙】
【指笛のたえなる響き】

 指笛が吹けない人でも、「指笛」ということばは知っています。ところが、これを載せていない辞書がけっこうあります。昔はなおさらのことで、大きな辞書にも「指笛」は載っていませんでした。『三省堂国語辞典』の初版(1960年)にもありません。

 「指笛」の項目は、『三国』の第二版(1974年)で採用されました。おそらく、これが辞書に載った最初だと思います。語釈は次のとおりでした。

 〈二本の指を口へ入れ、強く息をはくことによって出す、笛(フエ)のような ひびき。〉

 この説明からは、合図などのために鳴らすイメージが浮かびます。しかしまた、指笛はメロディーを奏でるものでもあります。その説明は、まだ第二版にはありませんでした。

【日経新聞の記事(見坊カード)】
【田村大三さんの記事】

 『三国』の主幹だった見坊豪紀(けんぼう・ひでとし)は、演奏としての指笛も知ってはいました。というのも、指笛奏者の田村大三さんが新聞に寄せた回想記(『日本経済新聞』1964.4.16)を、リアルタイムでカードに採集しているからです。記事によれば、昭和初期に田村さん自身が演奏としての「指笛」を命名し、演奏活動を始めたことが分かります。ただ、この情報は、辞書の記述には反映されませんでした。

 ところが、第二版の出た1974年の7月、田村大三さん本人が見坊邸を訪問するというできごとがありました。今、田村夫人のご厚意でお送りいただいた自伝『指笛音楽六十年』(中央公論事業出版 1994年)を開くと、次のようにあります。

 〈〔「指笛」が『三国』に載ったことを知り〕練馬区石神井のご自宅に見坊先生を訪ねました。/一曲聞いて下さった先生は、今度大きな辞典の話があるから、それには指笛音楽という言葉も載せて上げたいネ、とおっしゃって下さいました。〉(p.75)

【見坊先生から田村さんへの献辞のある三国】
【署名入りの『三国』】

  指笛の生演奏を聴いた見坊は、深く感動したに違いありません。『三国』の第三版(1982年)では、次のように記述が精密になりました。

 〈指を口へ入れ、強く息をはくことによって出す、するどいひびき。また、折りまげた指を口にくわえて、メロディーをふき鳴らすもの。〉

 指の形が、合図と演奏とでは違うことが分かります。後半の部分は、田村さんの実演をつぶさに観察した結果をまとめたものでしょう。創始者の生演奏という一級の資料によって、語釈が的確になりました。この語釈は、今回の第六版でも踏襲しました。

* * *

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筆者プロフィール

【飯間先生の新刊『非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門』】飯間浩明(いいま・ひろあき)
 早稲田大学非常勤講師。『三省堂国語辞典』編集委員。
 早稲田大学文学研究科博士課程単位取得。専門は日本語学。古代から現代に至る日本語の語彙について研究を行う。NHK教育テレビ「わかる国語 読み書きのツボ」では番組委員として構成に関わる。著書に『遊ぶ日本語 不思議な日本語』(岩波書店)、『NHKわかる国語 読み書きのツボ』(監修・本文執筆、MCプレス)、『非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門』(ディスカヴァー21)がある。
URL:ことばをめぐるひとりごと(http://www.asahi-net.or.jp/~QM4H-IIM/kotoba0.htm)

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【編集部から】
生活にぴったり寄りそう現代語辞典として定評のある『三省堂国語辞典 第六版』が発売され、「【サンコク】メディアでの紹介」の記事にある通り、各方面で取り上げていただいております。その魅力をもっとお伝えしたい、そういう思いから、編集委員の飯間先生に「『三省堂国語辞典』のすすめ」というテーマで書いていただいております。

UNIX によるコーパスデータの処理 (6)

2009年 3月 24日 火曜日 筆者: 阪上 辰也

学習者コーパス入門 第22回

今回は、新たなコマンドとして「tr コマンド」を紹介します。

これまでに見てきた「grepコマンド」は、検索文字列を含んだ行を抽出するもので、各種オプションを加えることで、複雑でかつ効率的な検索ができることを見てきました。今回取り上げる tr コマンドは、検索文字列の抽出ではなく、文字列の「置換」を行うコマンドです。コーパス処理においては、よく行う置換作業が2つあります。1つは、大文字から小文字への置換、もう1つは空白類の置換です。

まずは、大文字から小文字への置換について見てみましょう。コンピュータは、大文字と小文字で表示されるものを区別して扱う場合があります。例えば、「apple」と「Apple」の場合、片方は大文字を含んでいるため、別の文字列として扱われることになります。もし、コーパス中に含まれる「apple」という単語の頻度を求める際に、大文字を小文字に置換しておかなければ、正確な頻度を求めることができなくなってしまいます。そこで、以下のようなコマンドを実行し、大文字のアルファベットを小文字に置換します。

tr ‘[A-Z]’ ‘[a-z]’ < JPN001.txt [Enter キーを押す](※)

この tr コマンドでは、「何を」置換するかを指定し、その後で「何に」置換するかを指定します。コマンドがうまく実行されていれば、すべての大文字が小文字になって出力されているはずです。上記のコマンドの場合、大文字のアルファベットがあれば([A-Z] と入力することで、A から最後の Z までを指定したことになり、すべての大文字のアルファベットを入力する必要はありません)、対応する小文字に置換せよ(つまり、A なら a に、B なら b に置換する)という処理が行われることになります。それでは、この出力結果を保存しておきましょう。

データの保存には、コマンドの後に「>」を入力し、その後に保存するファイル名(以下の例では、komoji_001.txt)を入力します。なお、「<」の後には、処理するために読み込むファイルの名前を指定します。

tr [A-Z] [a-z] < JPN001.txt > komoji_001.txt [Enter キーを押す](※)

保存されたファイルの内容を表示するには、「cat コマンド」を使用します。このコマンドについては、今後扱う予定ですが、今は、「ファイルの内容を表示するためのコマンド」であると覚えておいてください。「cat komoji_001.txt」と入力して実行すれば、komoji_001.txt のファイルの内容が表示され、大文字が小文字に置換されていることを確認してください。この処理ができていれば、大文字で書かれていた単語も、同じ単語として扱うことができるようになります。

次に、第13回の記事でも扱いましたが、スペースなどの空白類を改行文字に置換する処理について見てみましょう。この処理結果は、単語数を求めたり、語彙一覧表を作成したりするための下処理のあたるもので、よく行う処理です。以下のコマンドを実行し、半角スペースを改行文字(「\n」)に置換します。

tr ‘ ‘ ‘\n’ < JPN001.txt [Enter キーを押す](※)

うまくコマンドが実行されれば、一行につき一単語が表示されて出力されているはずです(本来なら、個人情報や話者記号など、不要な情報を含んでないテキストに対して上記のコマンドを実行する必要があります)。それでは、この出力結果を保存してみましょう。

tr ‘ ‘ ‘\n’ < JPN001.txt > tango_001.txt [Enter キーを押す](※)

ここでは、tango_001.txt という名前で保存していますので、内容を確認するには、「cat tango_001.txt」と入力して実行します。すると、一行につき一単語が表示されるように処理された結果を確認することができます。これを、NICE 全体のデータに対して実行し、今後紹介する数種類のコマンドを加えて実行すれば、一瞬で語彙頻度表を作成することが出来るようになります。

次回は、さらにまた新しいコマンドを紹介します。


▼お知らせ
2008年10月4日に、学習者コーパス「NICE」の正式版を公開しました。無償で利用可能で、特別な手続きは必要ありませんので、ぜひ研究調査にご利用ください。詳しくは、こちらのサイトをご覧ください。


■筆者プロフィール
阪上辰也(さかうえ・たつや)
名古屋大学大学院 国際開発研究科 特任助教。
専門は、コンピュータを利用した外国語教育。
ウェブサイトは、sakauetatsuya.net


※編集部注
当サイト上ではいわゆる全角の引用符が表示されますが、実際の作業ではいずれもいわゆる半角の引用符を入力します。

報告:深谷先生の辞書引き学習体験会2

2009年 3月 23日 月曜日 筆者: ogm

★3/21・22辞書引き学習体験会、前回に引き続き大盛況でした★

3月21日三省堂書店札幌店3月22日リブロ池袋本店主催でおこなわれました「『三省堂 例解小学国語辞典 第四版』刊行記念 親子いっしょに、深谷先生の「辞書引き学習」を体験しよう!」は、前回(⇒報告:深谷先生の辞書引き学習体験会2/28・3/1)に引き続き、大盛況のうちに終了いたしました。

三省堂書店札幌店イベントの様子深谷先生にはタイトなスケジュールとなってしまい、大変申し訳なかったのですが、いつもタフな先生、札幌での2回、翌日の池袋と、満員のお客様との熱く濃い「辞書引き学習」体験会が繰り広げられました。編集部としては、このイベントが初めてではないはずなのに、やっぱり先生のお話に襟を正す思いを感じ、辞書をどんどん自分のものにしていく子どもたちの姿に胸を熱くしてしまうのでした。

この会場でも、“予習”してきている保護者の方がいらっしゃって、質問の時間には、とっても具体的な辞書引き学習の進め方について、ご質問なさる方も。ご著書の内容が浸透した瞬間だったのではないでしょうか。

リブロ池袋本店イベントの様子ご来場の皆さま、足を運んでくださり、ありがとうございました。家に帰ってさっそく付箋が増えていっているのではないでしょうか。子どもたちの「なぜ?」に答える先生は、学校の先生だけではありません。ぜひ、ご家庭でも辞書引きを続けてくださいませ。

今回残念ながらいらっしゃることができなかった皆さま、この後もイベントやこのウェブサイトでの展開を考えております。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

* * *

【編集部からのお知らせ】

最新のイベント情報は右にあります「おすすめ記事」からご覧ください。今後のイベント情報、また、これまでの報告など関連情報は以下からもご覧いただけます。
 ⇒辞書引き学習についての情報

「辞書引き学習」基本のステップは五つ! 今すぐ始めたい方はこちらをご覧ください。
 ⇒「辞書引き学習」とは(監修:深谷圭助)
 「やってみよう!」 「辞書引き学習」への取り組み―先生方・保護者の方へ―

このウェブサイトにて、深谷先生のインタビューを掲載しています。以下をご覧ください。
 ⇒インタビュー「辞書引き学習」の深谷圭助先生《前編》
 ⇒インタビュー「辞書引き学習」の深谷圭助先生《後編》

編集部で立命館小へうかがいました。以下に訪問記を掲載しています。
 ⇒「辞書引き学習」の立命館小訪問記1
 ⇒「辞書引き学習」の立命館小訪問記2

★深谷先生から推薦をいただいております

例解小学国語辞典 第四版
編者:田近洵一
B6判 1,216ページ 1,995(本体1,900)円 ISBN 978-4-385-13821-3
[ワイド版] A5判 2,205(本体2,100)円 ISBN 978-4-385-13822-0

 

例解小学漢字辞典 第三版 新装版
編者:林 四郎(主幹)・大村はま
B6判 1,152ページ 1,995(本体1,900)円 ISBN 978-4-385-13817-6
[ワイド版] A5判 2,205(本体2,100)円 ISBN 978-4-385-13818-3

 

★立命館小学校で使われています

クラウン学習国語百科辞典
監修:金田一春彦 編者:三省堂編修所
A5判 1,200ページ 3,990(本体3,800)円
ISBN 978-4-385-15048-2

 

耳の文化と目の文化(13)-視覚的な特性(6)

2009年 3月 23日 月曜日 筆者: 新田 春夫

クラウン独和辞典―編集こぼれ話―(44)

名詞の語頭を大文字で始める大文字書きも視覚的な区別であって、耳で聞いたのではこのような区別はわからない。近世までは強調したい語を大文字で書くことがあった。今日でも固有名詞は大文字で書く。また、新正書法では手紙におけるdu, ihrおよびその変化形は大文字書きにすることを義務づけていたが、その後の諮問委員会の勧告によって改訂新正書法ではどちらも認められることとなった。相手を指すSie「あなた・あなた方」を大文字書きするのは3人称複数のsie「彼ら、彼女ら、それら」と区別するためである。

名詞以外の代名詞、前置詞、副詞、接続詞、動詞などを名詞として使う場合は名詞であることがはっきりしているから大文字で書くのに迷うことはない。これらは中性名詞になる:das Ich「自己」、das Für und Wider「賛否」、das Aber「異議」、das Lesen「読書」。

形容詞を名詞化したものは自然性の区別がある:der Kranke「(男の)病人」、die Kranke「(女の)病人」、das Kranke「病的なもの」。また、Er ist der älteste unter uns.「彼は私たちの中で最年長です」などにおけるder ältesteは比較変化のひとつであるから小文字で書くが、die Ältesten des Dorfes「村の長老達」のような場合は大文字で書く。

hundert, tausendは数詞としては小文字で書くが、「数百(人・もの)、数千(人・もの)」といった不定の意味の名詞として複数形で使い、大文字または小文字で書く:Tausende/tausende von Menschen「数千の人」。しかし、Dutzend「ダース」は名詞であるが、やはり「数十(人・もの)」の意味では複数形で使い、大文字または小文字で書く:Dutzende/dutzende von Büchern「数十冊の本」。また、ein Paarは「一組、一対の」の意味の名詞であるが、ein paarは「2,3の」の意味の不定数詞としては小文字で書く:ein paar Leute「2,3人の人」。

時間を表すViertel「15分」、drei Viertel「45分」は大文字で書く:Es ist Viertel vor acht.「8時15分前です」。ただし、viertel acht「7時15分」、 drei viertel acht「7時45分」などはひとまとまりの表現として小文字で書く。


【筆者プロフィール】
新田 春夫(にった・はるお)
武蔵大学教授
専門は言語学、ドイツ語学
『クラウン独和辞典第4版』編修委員


【編集部から】
「耳の文化と目の文化」をまとめて読むにはこちらです。

2008年2月に『クラウン独和辞典』(第4版)が刊行されました。日本初、「新正書法」を本格的に取り入れた独和辞典です。編修委員の先生方に、ドイツ語学習やこの辞典に関するさまざまなエピソードを綴っていただきます。

日本語社会 のぞきキャラくり 第31回 センバツにかける思い

2009年 3月 22日 日曜日 筆者: 定延 利之

センバツにかける思い

 第81回選抜高校野球大会、いわゆる春のセンバツのシーズンである。私はこれをけっこう楽しみにしている。若者たちの初々しい技が見られるからである。

 といっても、甲子園球場に出かけようとは思わない。センバツはテレビで観るにかぎる。テレビでなければ、試合後のインタビューが見られないからである。

 

 石川遼といえば「ハニカミ王子」の異名をとった人気ゴルファーであり、17才の高校生でありながらすでに1億円プレーヤーだそうである。うらやましい! と、この際はっきり言っておこう。ところで、この石川遼がたとえばバラエティ番組で一日の時間配分をたずねられると、「シーズン中はー、[スー]朝は大体スタートのー……」などと、空気をすすることがある(2009年1月19日『SMAP×SMAP』)。

 三浦皇成という騎手は天才・武豊を超えるとも評され、弱冠19歳にして獲得賞金は十数億円に達するという。こちらもまことにうらやましいかぎりだが、この三浦皇成がインタビューの中で、初勝利の際に騎乗していたフェニコーンという馬について「その馬が、あのデビューする前から、まだレースを知らない時、から僕はずっと乗していただいて、もらってたんで、[スー]んーや、すごい、やんちゃな馬っていうか」と、やはり空気をすすって答えている(2009年1月19日『トップランナー』)。

 私は18才ぐらいの大学1年生を教えることもある。大学生や大学院生の会話を収録して調べることもある。だが、かれらは「でもぉ、バイトがぁ、いそがしくてぇ」のようなしゃべり方はしても、空気はすすらない。

 同じような年令でも、大きな実績を挙げて大人社会から歓迎され、一人前に扱われている人たちと、まだその手前の段階にいる人たち、といった差を感じてしまう。

 いや、これはおそらく正しい感じ方ではないのだろう。私に見えているのは学生の一面に過ぎない。かれらだって、たとえばクラブで全国大会に出場する(だから授業を休ませてくれと言ってくる)ということはたまにはある。大会会場で勝利者インタビューを受けたりすると、ふだんのしゃべり方はかなぐり捨てて、石川遼や三浦皇成のように空気をすすっていっぱしのコメントをするのかもしれない。

 もっとありそうな例を挙げれば、かれらもアルバイトで家庭教師をやることがあり、バイト先では「家庭教師に来てくださっている、えらい先生」だったりする。「先生お疲れでしょう」とお母さんにご飯を出してもらえば、「あ、どうもいつもすみません。[スー]」ぐらいはやるかもしれない。あるいは、お店の売場の主任だったりチーフだったりすると、時には打ち合わせ会議で「夜の方への引き継ぎもよろしくお願いします[スー]」のようなこともやってのけているんじゃないか。

 

 前回は「つっかえ」の例を挙げたが、狭い意味での「ことば」から外れるところにも、まだまだ『大人』の技がある。

* * *

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◇この連載の中国語版と英語版
  中国語版⇒角色大世界――日本
  英語版⇒An Unofficial Guide for Japanese Characters

【筆者プロフィール】

最新刊『煩悩の文法』(ちくま新書)定延利之(さだのぶ・としゆき)
神戸大学大学院国際文化学研究科教授。博士(文学)。
専攻は言語学・コミュニケーション論。「人物像に応じた音声文法」の研究や「日本語・英語・中国語の対照に基づく、日本語の音声言語の教育に役立つ基礎資料の作成」などを行う。
著書に『認知言語論』(大修館書店、2000)、『ささやく恋人、りきむレポーター――口の中の文化』(岩波書店、2005)、『日本語不思議図鑑』(大修館書店、2006)、『煩悩の文法――体験を語りたがる人びとの欲望が日本語の文法システムをゆさぶる話』(ちくま新書、2008)などがある。
URL:http://ccs.cla.kobe-u.ac.jp/Gengo/staff/sadanobu/index.htm

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【編集部から】
「いつもより声高いし。なんかいちいち間とるし。おまえそんな話し方だった?」
「だって仕事とはキャラ使い分けてるもん」
キャラ。最近キーワードになりつつあります。
でもそもそもキャラって? しかも話し方でつくられるキャラって??
日本語社会にあらわれる様々な言語現象を分析し、先鋭的な研究をすすめている定延利之先生の「日本語社会 のぞきキャラくり」。毎週日曜日に掲載しております。

地域語の経済と社会 第40回

2009年 3月 21日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第40回「隠れた「こなもの」王国・信州」

「おざんざ」
【「おざんざ」】

 信州の食と言えば、何と言ってもソバということになるでしょう。現代では、おいしいお米もたくさんとれるのですが、伝統的にはソバや小麦が主に作られてきました。それで、小麦粉を材料にした食品も、さまざまに工夫されてきています。

 となれば、当然そこには、方言をあしらった商品も見いだされることになります。乾麺のうどんに「おざんざ」(長野県大町市・株式会社河昌)と命名された一品も、その一例です(写真参照)。

 袋の裏面には、製法とともに、命名の由来と特長が次のように記されています。

その昔、信濃地方では「うどん」や「そば」など長い食べもののことを「ざざ」とか「おざんざ」(長長・おさおさ)と呼んでお客様のもてなしなどに好んで用いられていました。おざんざは塩を全く使わず納豆の酵素を用いて練り上げた独自の製法と特に吟味された原料でつくられております。麺のうまみ、のどごしのよさを心ゆくまでお楽しみください。

 (確かに、他にはない食感で、ツルツルして喉越しのよい、おいしいうどんです。)

 現在では、「ざざ」「おざんざ」の語は、あまり耳にしませんが、うどん・そうめん・ひやむぎなど、ソバのみならず、麺類は全般に当地域で好まれています。

 粉を用いた食品では、「おやき」も忘れてはなりません。「おやき」とは、ナスなどの野菜を餡にした小麦粉のまんじゅうとも言うべきものです。知らない方には、「ナスの餃子」と説明したほうが、わかりやすいかもしれません。

 もともとの作り方は、小麦粉を練って拳よりもやや小さくした位の固まりにし、その中にナスなどの餡を入れ、いろりの上で乾かし、さらにこれをいろりの灰の中に埋めて焼いたものです。現在は、蒸しあげて作るのが一般的です。とは言え、家庭ごと、お店ごとに、皮や餡に工夫をしており、それぞれに味わいがあります。お店は、専門店もあれば、和菓子店で扱っている場合もあります。

 (以前、奈良の吉野に行った際、沿道の土産物店で「おやき」の看板を見つけました。懐かしい気がして近くに寄ってみると、大福餅を焼いたものが売られていて、びっくりした思い出があります。)

 なお、長野商工会議所では、現在、経済産業省の補助金を受け、「信州おやき」を全国ブランドにする事業を進めています。

 「おやき」のほかにも、「にらせんべい」や「こねつけ」などがあります。簡単に説明しますと、「にらせんべい」(「薄焼き」とも)は、韓国のチヂミとよく似ています。「こねつけ」は、ご飯に小麦粉を入れて練り餅にし、それを焼いて砂糖・味噌などで味をつけたものです。これらは、どちらかというと家庭料理です。

 「たこ焼き」「お好み焼き」のような華やかさはありませんが、信州人も「こなもの」が大好きです。

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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

大橋敦夫先生監修の本大橋敦夫(おおはし・あつお)
上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載の始まりです。

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この連載への質問、また「ここでこんな方言みやげ・グッズを見た」などの情報は、問い合わせフォーム( http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/support/question.html )から、「地域語の経済と社会」への質問・情報である旨を記してご投稿ください。

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