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地域語の経済と社会 第45回

2009年 4月 25日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第45回「お隣さんの方言の流入―「じょんのび」を例に―」

居酒屋「じょんのび」
居酒屋「じょんのび」
【居酒屋「じょんのび」】

 長野市内に、「じょんのび」(新潟方言で[気分ののんびりゆったりしたさまや、ゆったりした気分]の意)という名前の居酒屋さんがあります。

 新潟県上越出身のご主人が営むお店は、明るい雰囲気で、おいしい肴と新潟の地酒をいただくことができます。のんびりとくつろげる店内は、まさに「じょんのび」の名にふさわしいものです。しめの「長岡ラーメン」も、新潟の気分を盛り上げてくれます。

 ところで、信州になぜ新潟の方言が?と思われるかもしれません。が、もともと上越地域と交流の深い長野県の北部(北信地方)では、新潟とほぼ同じように「じょんのび」を使う地域(とくに飯山以北)もあり、なじみやすい表現でもあるのです。

 2004年には、JR飯山線(長野市内と新潟県の越後川口を結ぶ)を、「快速飯山線じょんのび風っ子号」が走りました(長野駅~十日町駅間)。また、現在はなくなってしまいましたが、飯山市内で「じょんのび祭り」という市民祭が行われていたこともありました。

 新刊の『方言と地図』(井上史雄監修 フレーベル館 2009.2)は、「おもわず声に出したくなる47都道府県のじまんの方言」がキャッチフレーズですが、長野県のページに「じょんのびだ(楽だ)」、新潟県のページにも「じょんのび してくんないかい(ゆっくりしてくださいね)」が取り上げられています。

 ここで、「じょんのび」の本家・新潟県内に目を向けてみると、事業所にその名を冠する所が数か所見つかります。

新潟市
 じょんのび館……食堂の経営
柏崎市
 じょんのび村協会……温泉施設の経営
糸魚川市
 じょんのび……グループホームなどの名

(ハローページより)

 そういえばかつて、90年代にはやった大手メーカーによる、いわゆる「ご当地」ビールでも、新潟県限定ビールは、「じょんのび」(キリン)の名で売られていました。また、長岡出身の女優星野知子さんが、地元紙の新潟日報に連載されたエッセイも「じょんのび」を冠したものでしたね。

 お隣さんの方言の流入では、松本市に「やっとかめ」(名古屋方言で[お久しぶり]の意)という居酒屋さんがあり、北信の「じょんのび」と好一対です。

 ところで、長野県外に「出ていった」方言には、どんな語があるのだろうか、という興味がわいてきます。

(今回は「年齢確認の必要な」例が多く、失礼をいたしました。)

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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

大橋敦夫先生監修の本大橋敦夫(おおはし・あつお)
上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載の始まりです。

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2009年 4月 25日