『三省堂国語辞典』のすすめ その71
2009年 6月 10日 水曜日 筆者: 飯間 浩明アイシテルヨ、アルティショ。

【アーティチョークのつぼみ】
『三省堂国語辞典』は、小型ながら、わりあい図版が多いのが特長です。主幹だった見坊豪紀(けんぼう・ひでとし)によれば、〈図版の最初が“アーケード”というパターンはこの辞書に始まる〉ということです(『ことばの遊び学』)。
『三国』の本文第1ページ目には、この「アーケード」とともに、もうひとつ、「アーティチョーク」の図版が載っています。この名前を聞いてぴんと来る人は、かなりのグルメでしょう。〈大形のアザミ。西洋料理で、つぼみを食べる。和名チョウセンアザミ。〉と説明してありますが、どんな外観か、図版があれば助けになります。そこで、松ぼっくりの化け物のような(?)つぼみのイラストが添えてあります。

【びん詰めのアーティチョーク】
アーティチョークを日本の人びとに紹介した功績のあるひとりが、伊丹十三さんでしょう。『ヨーロッパ退屈日記』(1965年)の中で、次のように記しています。
〈一見、緑色をした巨大な百合根の如きものであって、〔略〕日本では五月から六月が季節〔略。味は〕一等近いものはそら豆じゃないかな。〉(文春文庫版 p.96-97)
おそろしい外観の割には、食べ方は、そうむずかしくはありません。塩水に漬けて、柔らかくなるまでゆでて、鱗片(りんぺん)や、幾重もの層になった中身を食べます。味は、伊丹さんの言うように空豆のようでもあり、苦みのあるじゃがいものようでもあります。
もっとも、日本で一般に入手しやすいのは、生のものよりもびん詰めのほうでしょう。オリーブオイルと酢、塩に浸けたそれは、たけのこのような歯ざわりです。薄い層が球状に重なっているので、京料理の湯葉をも連想させます。

【ピザに載せてもうまい】
ゆでたものも、びん詰めのものも、ピザやスパゲッティなどによく合い、食欲を増進します。パスタ店でもトッピングに使っている所がけっこうあります。
ところで、語形についてですが、フランス語ではこれを「アルティショ」と言います。中島梓さんも次のように書いています(「ウマいもんじゃない」は、ことばのあやです)。
〈アルティショ(朝鮮あざみ)だって、枝豆、ソラ豆だって、あーた、大してウマいもんじゃないよ。〉(『にんげん動物園』角川書店 1981年 p.53)
また、伊丹さんは上記のエッセーの中で「アーティショー」の形も使っています。『三国』の第六版では、これらの語形も「アーティチョーク」の項に書き添えました。
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◆飯間先生の記事はここにも⇒「三省堂WebDictionary」ことばパティオ第8回「「串刺し」に堪える語釈でなければならない」
筆者プロフィール
飯間浩明(いいま・ひろあき)
早稲田大学非常勤講師。『三省堂国語辞典』編集委員。
早稲田大学文学研究科博士課程単位取得。専門は日本語学。古代から現代に至る日本語の語彙について研究を行う。NHK教育テレビ「わかる国語 読み書きのツボ」では番組委員として構成に関わる。著書に『遊ぶ日本語 不思議な日本語』(岩波書店)、『NHKわかる国語 読み書きのツボ』(監修・本文執筆、MCプレス)、『非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門』(ディスカヴァー21)がある。
URL:ことばをめぐるひとりごと(http://www.asahi-net.or.jp/~QM4H-IIM/kotoba0.htm)
【編集部から】
生活にぴったり寄りそう現代語辞典として定評のある『三省堂国語辞典 第六版』が発売され、「【サンコク】メディアでの紹介」の記事にある通り、各方面で取り上げていただいております。その魅力をもっとお伝えしたい、そういう思いから、編集委員の飯間先生に「『三省堂国語辞典』のすすめ」というテーマで書いていただいております。







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