漢字の現在:「都」に流行るもの
2009年 6月 11日 木曜日 筆者: 笹原 宏之漢字の現在 第40回 「都」に流行るもの
京都での気鬱な会合の前に、市内を散策してみる。さすが千年のみやこ、「都」という漢字がどこにでも書かれている。東京からの新幹線の車内で座席を立とうとする時点で、その電光掲示板に、次の停車駅は「京都」と表示が出る。これがドット文字ながら、明朝体風であり、やはり日本を代表する車両に出るその地名にふさわしく、惚れ惚れするような実に見事なバランスに仕上がっている。
前から京都を歩くたびに、気になっていることの一つが、その「都」という漢字のとある姿だ。それは、「東京」は昔、「東亰」と書かれ、トウケイと読まれた、という通説とは関係がなく、「都」に点のある、いわゆる旧字体かどうか、ということでもない。
その「都」の気に掛かる姿とは、「都」の「者」の部分の「ノ」の起筆位置の低さである。今回は、2時間くらいの間に、10種類以上の品々で、その字体と邂逅した。それは、街中の看板や自動車のナンバープレート、はては路上の目印に至るまで、溢れかえっている。同じ看板屋が手掛けたなどという単純な結果でないことは、一目瞭然であろう。隷書、行書、楷書、さらに各種のデザイン書体、ロゴマークと実に多彩だ。
この字体を目にする頻度は、首都とされる東京都内を歩くときに比しても、明らかに高いと感じている。また、連載開始時の「那覇」(第1回・第2回)の時と違って、別に探そうと思ったわけではないが、上下、左右、前後(?)から、自然に目に入ってくるのである。
この「都」の字体は、他の地域でも全く見ないわけではない。日本道路公団が高速道路での可読性を高めるためとして使用した案内標識用の書体にも、同一あるいはよく似たもの(「土」の部分の「|」がそのまま下に伸びて左にはらうようにも見える)があり、今回も京都市内でもその書体を見掛けたような気がする。ただ、京都では、そのたぐいの字体の公私を問わない使用媒体での出現数の多さと、この字体の使用の割合が高いと考えられる点(いずれ検証してみたい)から、一種の「地域文字」として位置付けることも可能ではないかと思っている。
この字体の使用状況について、理由を少し考えてみたい。(次回に続く)
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【筆者プロフィール】
笹原宏之(ささはら・ひろゆき)
早稲田大学 社会科学総合学術院 教授。博士(文学)。日本のことばと文字について、様々な方面から調査・考察を行う。早稲田大学 第一文学部(中国文学専修)を卒業、同大学院文学研究科を修了し、文化女子大学 専任講師、国立国語研究所 主任研究官などを務めた。経済産業省の「JIS漢字」、法務省の「人名用漢字」、文部科学省の「常用漢字」などの制定・改正に携わる。著書に、『日本の漢字』(岩波新書)、『国字の位相と展開』(三省堂)、『訓読みのはなし 漢字文化圏の中の日本語』(光文社新書)などがある。2007年度 金田一京助博士記念賞を受賞。
【編集部から】
漢字、特に国字についての体系的な研究をおこなっている笹原宏之先生から、身のまわりの「漢字」をめぐるあんなことやこんなことを「漢字の現在」と題してご紹介いただいております。前回は「「ふすま」と「アオザイ」の共通点――「襖」」でした。
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2009年 6月 11日

















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