ドイツ料理の言葉(3)―「とろみ」1―
2009年 6月 15日 月曜日 筆者: 石井 正人クラウン独和辞典―編集こぼれ話―(54)
ドイツにUli Steinという人気漫画家がいる。漫画といっても、日本の漫画の影響を受けた最近のMangaというやつではなくて、昔ながらの大人向けのヒトコマ漫画Cartoonを描く。私はこの人の絵柄と古典的な味わいが好きで、手に入るだけ集めている。
さてCartoonでは、なれない料理に手を出してとんちんかんな言動をする男の様子がお決まりのテーマの一つだが、Uli Steinの“Viel Spass beim Kochen(楽しい料理)”という作品集の中の一編でも、男が台所で、コンロに乗せた鍋を前に、しかも紐をもてあましつつ、隣の部屋で用事をしているらしい奥さんに大声で語りかける。Wie bindet man eigentlich eine Sosse ? 「ソースなんていったいどうやって結ぶんだい?」この意味がすぐ分かるようだと、ドイツ語の料理用語に関する知識も一流である。

(編集部注:画像をクリックするとAmazon.deの該当書籍のページに飛びます)
bindenには、「結ぶ」という原義から発して、「結び固める>つなぎを入れて固める」という意味があり、ソースなどに小麦粉や片栗粉を入れてとろみをつけることを指す。普段料理などしたことのない男連中には、こんな用法は分らないというわけである。
ところでドイツ語でいわゆる「片栗粉」=でんぷん粉のことをStärkeという。元来形容詞のstarkの名詞形だから「強さ・強み」という意味だが、洗濯糊に使ったり、料理で「つなぎ」に使ったりするところからきた名前らしい。
ドイツには専用の「とろみ剤」があって、ソースに直接入れてもダマにならない便利なものだ───などと書こうとしたら、妻に見つかって、日本にも(株)丸三美田実郎商店の「とろみちゃん(ダマならない顆粒片栗粉)」という製品があるそうだし、そもそもドイツのStärkeについても、19世紀末創業の粉屋の老舗Mondamin社の歴史から説き起こさねばならないそうで、いい加減なことを書くなと叱られた。大きなことを言っても、私自身Uli Stein描くところの男連中と変わりはない。ちなみにダマのことはドイツ語でKlümpchen (<Klumpen) である。
—
【筆者プロフィール】
石井 正人(いしい・まさと)
千葉大学教授
専門はドイツ語史
『クラウン独和第4版』編修委員
—
【編集部から】
2008年2月に『クラウン独和辞典』(第4版)が刊行されました。日本初、「新正書法」を本格的に取り入れた独和辞典です。編修委員の先生方に、ドイツ語学習やこの辞典に関するさまざまなエピソードを綴っていただきます。







![『新明解国語辞典 第七版[机上版]』7年ぶりに改訂『新明解国語辞典』の机上版。判型は並判より大きいA5判で、さらに文字が大きく見やすい。2色刷。紙面内容は並版と同一。 『新明解国語辞典 第七版[机上版]』](http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/wp-images/smk_kijo.jpg)
![『新明解国語辞典 第七版[小型版]』7年ぶりに改訂『新明解国語辞典』の小型版。並判より一回り小さいA6変型判で、携帯にも便利。2色刷。紙面内容は並版と同一。 『新明解国語辞典 第七版[小型版]』](http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/wp-images/smk_kogata.jpg)
![『新明解国語辞典 第七版[革装版]』7年ぶりに改訂『新明解国語辞典』の革装版。丈夫で使うほどに手になじむ。判型は並版・特装版と同じB6判。2色刷。紙面内容は並版と同一。 『新明解国語辞典 第七版[革装版]』](http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/wp-images/smk_kawaso.jpg)























































































































































2007年









