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地域語の経済と社会 第54回

2009年 6月 27日 土曜日 筆者: 山下 暁美

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第54回「もてなしの方言(中国・四国地方)」

 今回は、中国・四国地方の「もてなしの方言」をご紹介します。

【写真1】
【写真1】(クリックで拡大します)

 岡山県では、客をもてなすとき、「おいでんせえ」(いらっしゃい)、「よーおいでんさった」(よく いらっしゃいました)などと言います。「おいでんせえ岡山」というキャッチフレーズもあります。「おいでる」は、「オ+イデル」で、「行く」「来る」「居る」の尊敬語です。「おいでる」(いらっしゃる)から「おいでん」(おいでなさい・来てください)が派生したと考えられます。「おいでませ」(山口県)も同様です。「おいでんされました」(山口県岩国市)は、「おいでる」に「~される」(尊敬語)が二重になった形と考えられます。「~される」は、西日本を中心に分布する形で「先生が来んさった」(いらっしゃった・島根県)などにも使われます。

 「おいでんかな」(岐阜県・第39回)、「おいでん!豊田」(愛知県・第39回 ※「おいでんバス」が走っているそうです。)、「おいでなんしょ」(長野県・第44回)、「おいでやす」(京都府・第24回、滋賀県・第49回)、「よぐおでんした」(岩手県・第37回第41回)などがこのシリーズですでに紹介されています。「おいでんか」(愛媛県・未発見)、「おいでるかえー」(大分県・未発見)があることから、「おいでる」は、本州・四国・九州に広く分布していることがわかります。

【写真2】
【写真2】(クリックで拡大します)

 ほかに、中国・四国地方には、「来てみんさいやぁ」「来てみい~!!」(広島県)、「きてなぁ」(香川県)、「来なソンソン!」(徳島県)、「早よぉ来んさい」(山口県・※写真省略)があります。

 「来てみんさいやぁ」(広島県)の「~(し)んさい」は、「~(し)なさい」の意味で、「はよう、食べんさい」「遊びに来んさい」のように用いられます。

 これまで、手元の方言資料をできるだけ多く皆さんにご紹介したいと思って、記事といっしょに1枚ずつ写真を掲載したのですが、ウェブを開くとき、軽量であることが大切であるとの考えから、ちょっと見にくいのですが、集合写真になりました。

もてなしの方言(中国・四国地方)
写真1 おいでんせえ   岡山県
まあ、いっぺん来てみんさいやぁ 三原市 広島県
えっと福山来てみい~!! 福山市
お日和もようて、まあようおいでんされました 岩国市時代工房 山口県
おいでませ  
写真2 かがわにきてなぁ   香川県
見に来なソンソン! 美馬市 徳島県
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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

『海外の日本語の新しい言語秩序―日系ブラジル・日系アメリカ人社会における日本語による敬意表現』『書き込み式でよくわかる 日本語教育文法講義ノート』山下暁美(やました・あけみ)
明海大学外国語学部・大学院応用言語学研究科教授。博士(学術)。
専門は、日本語教育学・社会言語学。研究テーマは、移民百年を迎えた、ブラジル、アメリカ合衆国などにおける日本語の変化、外国人の日本定住化による共生時代の日本語教育政策。
著書に『書き込み式でよくわかる日本語教育文法講義ノート』(共著、アルク)、『海外の日本語の新しい言語秩序』(単著、三元社)、『スキルアップ文章表現』(共著、おうふう)、『スキルアップ日本語表現』(単著、おうふう)、『解説日本語教育史年表(Excel 年表データ付)』(単著、国書刊行会)、『ふしぎびっくり語源博物館4 歴史・芸能・遊びのことば』(共著、ほるぷ出版)などがある。

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載の始まりです。

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2009年 6月 27日