学習者コーパスの構築方法 (2)
2009年 7月 14日 火曜日 筆者: 阪上 辰也学習者コーパス入門 第29回
今回は、コーパスデータの記録方法について説明します。
コーパスを構築する際には、必ず、データの「フォーマット」を決めておく必要があります。フォーマットとは、どのような情報を、どのような並べ方で記録しておくかなどを定めた「形式」のことをいいます。コンピュータで処理することが前提となっているコーパスデータでは、このフォーマットの設定が、データ処理おける重要なポイントとなります。
NICE では、CHAT 形式(Codes for the Human Analysis of Transcript)と呼ばれるフォーマットを採用しています。CHAT 形式は、既に度々紹介していますが、「1行1文」の状態でデータが記録される点が特徴的です。
1行1文の形式で記録される CHAT フォーマットを採用する利点は2点あります。ひとつは、第3回の記事でも紹介しましたが、データが読みやすくなるという点です。コーパスを「処理」する際、記号類の扱いなどで様々な問題(次回の記事で説明します)が生じます。処理がうまくいっているかどうかを確認するには、データそのものの特徴を知っておく必要があり、そのためには、データそのものを目で見て内容をチェックしなければいけません。加えて、コーパスを「分析」する際、例えば、誤用を観察している場合に、何が誤用となり、それはなぜかを考える場合、やはりデータそのものを目で見て、内容を解釈する必要が出てきます。これらの場面を想定した場合、処理や分析時の作業上の誤りを防ぐ意味でも、読みやすさに配慮したフォーマットの採用が望ましいということになります。
もうひとつの利点は、数値化できるデータの特性を効率よく求められるという点です。数値化できるデータの特性として、例えば、単語や文の総数、単語および文の長さなどが挙げられます。CHAT 形式では、1文という単位で区切られて記録されているため、1文がいくつの単語で構成されているか(つまり、文の長さ)、また、各学習者の書いた文の数を効率よく求めることができます。特に、学習者と母語話者との比較を行う場合には、単語数や文の数といった数値をよく利用しますので、予め CHAT 形式にしておくことで、短時間で必要な数値を求めることができるようになります。
今回は CHAT 形式を主に取り上げましたが、CHAT 形式は、学習者コーパスの構築において必ず使用しなければならないフォーマットというわけではありません。大事なことは、目的に応じて、どのようなフォーマットを採用すべきかを検討し、そのフォーマットに従ってコーパスを構築するということです。フォーマットが決まらなければ、効率的なデータ処理は行えず、大量のデータに苦しめられることになります。場合によっては、作業上のミスにより、誤った数値データを示してしまうおそれもあります。こうした事態を避けるためにも、フォーマットはしっかりと設定し、データを記録しておくことが必要です。
次回は、データの記録におけるトラブルを紹介します。
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▼お知らせ
2008年10月4日に、学習者コーパス「NICE」の正式版を公開しました。2009年4月9日にはバージョンアップを行い、ver. 1.1 に更新されました。無償で利用可能で、特別な手続きは必要ありませんので、ぜひ研究調査にご利用ください。詳しくは、こちらのサイトをご覧ください。
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■筆者プロフィール
阪上辰也(さかうえ・たつや)
名古屋大学大学院 国際開発研究科 特任助教。
専門は、コンピュータを利用した外国語教育。
ウェブサイトは、sakauetatsuya.net。







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