地域語の経済と社会 第60回
2009年 8月 8日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第60回「共通語に訳しにくい方言でコマーシャル」
1970年代、ドリンク剤のテレビコマーシャルで用いられたキーワード「ちかれたびー」。ヒットCMともなったこのコマーシャルは、今日の方言をたのしむ気運のさきがけとも評価できるでしょう。ヒットの背景には、共通語にしてしまうと、抜け落ちてしまう微妙なニュアンスがあることをわかりやすく表現し、そこに方言に対する共感が集まったこともあると思われます。
先日、地元のJR小海線に乗っていたところ、車内広告に「ちかれたびー」の系譜につらなる例を見つけました。
「ごしたいは、こわい?」をキャッチコピーとして、地元の方ならわかる「ごしたい[=疲れた]」をもとに、他地域の類義の方言「こわい」をかけて説明が続きます。長野県内では、他に疲れた時に「てきない」も使いますが、南部の方が主となります。
「ごしたい」によって、PRされているのは、健康補助食品で、感情を表現する形容詞の方言を用いて訴えている点に工夫が見られます。
製品の製造元である王子木材緑化株式会社によると、この「お国ことば中吊り広告」は、次の4種作成されたそうです。
①「ごしたいは、こわい?」……JR小海線
②「こわいは、えらい?」……JR日光線
③「かいだりいは、こわい?」……JR名松線
④「きつかーは、えらい?」……筑豊電気鉄道
お近くの方、ぜひ車内でもご覧ください。列車にゆられながら、広告をながめていると、健康への気づかいが必要だとしみじみ感じられてきます。
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【筆者プロフィール】
言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)
大橋敦夫(おおはし・あつお)
上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。
【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載の始まりです。
この連載への質問、また「ここでこんな方言みやげ・グッズを見た」などの情報は、問い合わせフォーム( http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/support/question.html )から、「地域語の経済と社会」への質問・情報である旨を記してご投稿ください。
2009年 8月 8日











































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