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明解PISA大事典:発問 問題解決型の読解問題作法

2009年 9月 4日 金曜日 筆者: 北川 達夫

第17回 発問:「なぜ?」の連鎖

 「問題解決方式」の読解問題作法においては、作中人物がどのような問題に遭遇し、それをどのように解決したのかをとらえさせるのが発問の第一ステップとなる。ここで、単純に「主人公はどういう問題に遭遇しましたか?」「その問題を主人公はどうやって解決しましたか?」と問えば、それこそ問題解決なのだが、これではいかにも工夫がない。テキストに示された問題と解決策をとらえながら、同時に問題と解決策の背景も探っていくような発問が望ましいのである。

 では、どうすればいいのか、具体例を挙げて説明しよう。フィンランドの小学校3年生用の教科書に掲載されている事例である(*)

●物語「ちょうど35キロ」のあらすじ●

 学校でバザーが開かれている。バザー会場に体重計があり、おじさんが呼びこみをやっている。料金1ユーロで体重を計測し、ちょうど35キロであれば賞品がもらえるとのこと。ユッシ少年の体重は36.5キロ、ラミ少年の体重は33.5キロで、いずれも賞品を獲得できない。そこでユッシは目的を告げぬまま、ラミにレモネードを1.5リットル飲ませる。わけのわからぬままラミはレモネードを飲み、体重計に乗る。ちょうど35キロ! みごと賞品を獲得する。レモネードを飲みすぎて気持ち悪くなったラミが受け取った賞品は、レモネード一箱だった。

 この物語における問題は、たとえば「体重を35キロにすること」、解決策は「(体重33.5キロの)ラミにレモネードを1.5リットル飲ませる」である。

 ここでフィンランドの教科書に掲載されている発問①を見てみよう。

「なぜ、ユッシはラミに、レモネードを飲ませたのですか?」

 実はこれが“作中人物がどのような問題に遭遇し、それをどのように解決したのかをとらえさせる”発問なのである。ただ、「問題は何か?」「解決策は何か?」と一問一答で答えさせるのではなく、「発問の連鎖」を生み出すための“きっかけ”となる発問である。

 この場合の「発問の連鎖」として、たとえば次のような展開が考えられる。

「なぜ、ユッシはラミに、レモネードを飲ませたのですか?」
「賞品をもらうため」
「なぜ、レモネードを飲ませれば賞品がもらえるのですか?」
「体重が35キロになれば賞品がもらえるから」
「なぜ、体重が35キロになれば賞品がもらえるのですか?」
「体重がちょうど35キロなら賞品をもらえるというイベントをやっているから」
「なぜ、ラミにレモネードを飲ませれば、体重が35キロになるのですか?」
「ラミの体重は33.5キロなので、レモネードを1.5リットル飲ませれば、ちょうど35キロになるから」……

 もちろん問いと答えの順序はさまざまになりうる。たとえば「なぜ、ユッシはラミにレモネードを飲ませたのですか?」に対して、「体重を35キロにするため」という答えが返ってくる可能性もあるからだ。こうなると、次の発問は「なぜ、体重を35キロにしようとしたのですか?」になり、それに対する答えは「体重を35キロにすれば賞品がもらえるから」となるだろう。順序はさまざまだが、結局は同じ方向に収束していくことになる。そして、この一連の問いと答えの連鎖から、テキストに示された問題と解決策を明らかにすることができると同時に、その背景事情も探ることができるのである。

 コツは「解決策の『なぜ?』を問う」ところにある。

 「なぜ(解決策となりうる)その行動をとったのか?」と問われれば、そもそもどのような問題が存在するのか、なぜその行動が問題の解決になりうるのかを答えていかなければならない。答えに応じて、さらに「なぜ?」を問う。それによって、テキストに示された問題と解決策を詳細に分析していくことができるのだ。

 もちろんテキストはさまざまであり、読解問題はテキストへの依存性が高いため、あらゆるテキストにこの方法が使えるわけではない。だが、「解決策の『なぜ?』を問う」ことによって“作中人物がどのような問題に遭遇し、それをどのように解決したのかをとらえさせる”のは、読解問題作法の定石なのである。

* * *

(*)『フィンランド国語教科書 小学3年生』pp80-81 メルヴィ・バレ他著/北川達夫訳/経済界 2006年

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◇この問題の続きへ⇒第18回 発問 結果から原因の推論「問題解決プロセスの続き」

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【プロフィール】

北川達夫(きたがわ・たつお)
教材作家・教育コンサルタント・チェンバロ奏者・武芸者・漢学生
(財)文字・活字文化推進機構調査研究委員
日本教育大学院大学客員教授
1966年東京生まれ。英・仏・中・芬・典・愛沙語の通訳・翻訳家として活動しつつ、フィンランドで「母語と文学」科の教科教育法と教材作法を学ぶ。国際的な教材作家として日芬をはじめ、旧中・東欧圏の教科書・教材制作に携わるとともに、各地の学校を巡り、グローバル・スタンダードの言語教育を指導している。詳しいプロフィールはこちら⇒『ニッポンには対話がない』情報ページ
著書に、『知的英語の習得術』(学習研究社 2003)、『「論理力」がカンタンに身につく本』(大和出版 2004)、『図解フィンランド・メソッド入門』(経済界 2005)、『知的英語センスが身につく名文音読』(学習研究社 2005)、編訳書に「フィンランド国語教科書」シリーズ(経済界 2005 ~ 2008)、対談集に演出家・平田オリザさんとの対談『ニッポンには対話がない―学びとコミュニケーションの再生』(三省堂 2008)組織開発デザイナー・清宮普美代さんとの対談『対話流―未来を生みだすコミュニケーション』(三省堂 2009★新刊★)など。
『週刊 東洋経済』にて「わかりあえない時代の『対話力』入門」連載中。

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【編集部から】
学習指導要領の改訂に大きく影響したPISAってなに?
PISA型読解力ってどんな力なの?
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2009年 9月 4日