『三省堂国語辞典』のすすめ その85
2009年 9月 16日 水曜日 筆者: 飯間 浩明「パない」「半端ではない」。辞書にある?

【ぱねえうめ!】
程度を強調する表現は、新味を求めて次々に生み出されます。「すごい」「超」「やばい」、さらには「ギザかわゆす(=かわいい)」などというのまであります。
〈クリームソーダうめっ。ぱねえうめ。〉(NHK「サラリーマンNEO」2008.9.21 23:00)のように使う「ぱない」「はんぱない」も、新しい程度表現です。「はんぱない」は、1990年代にはすでに使われていましたが、2000年代に入って広まり、さらに省略形の「ぱない」も生まれたようです。
「ぱない」「はんぱない」は、国語辞典に載せるのはさすがに早すぎるでしょう。一方、元の形の「半端ではない」は、すでに定着しており、辞書にあってもよさそうです。ところが、この「半端ではない」を載せた国語辞典はほとんどありません。

【現代用語の基礎知識1980年版】
「半端」自体は、もちろんどの辞書にも載っています。ただし、挙げてある意味は、「不完全」「端数」「どっちつかず」などであり、これを見るだけでは、「飲み会の人数が半端じゃない」などの例は解釈できません。「人数が不完全ではない」ではなく、「人数が非常に多い」ということですから、新しく「半端ではない」の項目を立てたいところです。
「半端ではない」は、定着したといっても、さほど昔から使われているわけではありません。漱石・鴎外の作品はもちろん、戦後になってもまだ見えないことばです。
『現代用語の基礎知識』では、1980年版に初めて登場します。「つっぱる」「ナウい」などと並んで「はんぱじゃない」の項目があり、〈とてもいい。すてきだ。〉と説明されています。当時の若者の流行語で、しかも、やや不良っぽさを感じさせることばでした。
それが、比較的短い間に一般になじみ、今日では硬い文章でも使われるようになりました。たとえば、新聞社説にも次のように出てきます。

【読者から掲載の要望も?!】
〈韓国の盧武鉉政権が自国の歴史見直しにかける意気込みは半端ではない。〉(『朝日新聞』2005.2.27 p.3)
こうなると、辞書に載せないわけにはいかないでしょう。『三省堂国語辞典 第六版』では、「半端で(は)ない」という項目を立て、〈程度がたいへん大きい。ものすごい。〉と説明してあります。ここに同義語として「はんぱない」などを添えるべきかどうか、次の改訂の時に検討課題になるかもしれません。
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筆者プロフィール
飯間浩明(いいま・ひろあき)
早稲田大学非常勤講師。『三省堂国語辞典』編集委員。
早稲田大学文学研究科博士課程単位取得。専門は日本語学。古代から現代に至る日本語の語彙について研究を行う。NHK教育テレビ「わかる国語 読み書きのツボ」では番組委員として構成に関わる。著書に『遊ぶ日本語 不思議な日本語』(岩波書店)、『NHKわかる国語 読み書きのツボ』(監修・本文執筆、MCプレス)、『非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門』(ディスカヴァー21)がある。
URL:ことばをめぐるひとりごと(http://www.asahi-net.or.jp/~QM4H-IIM/kotoba0.htm)
【編集部から】
生活にぴったり寄りそう現代語辞典として定評のある『三省堂国語辞典 第六版』が発売され、「【サンコク】メディアでの紹介」の記事にある通り、各方面で取り上げていただいております。その魅力をもっとお伝えしたい、そういう思いから、編集委員の飯間先生に「『三省堂国語辞典』のすすめ」というテーマで書いていただいております。







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