地域語の経済と社会 ―方言みやげ・グッズとその周辺―

第70回 大橋敦夫さん:「地域で愛されている「方言手ぬぐい」」

筆者:
2009年10月17日

上越観光物産センター(新潟県上越市)で

一昨年のGACKT謙信に続いて、今年は妻夫木兼続で熱く燃えている上越。その熱気に誘われ、当地を訪れ、例によってお土産品を物色していると……。ありました! 方言グッズの元祖「方言手ぬぐい」が。

方言手ぬぐい
【越後高田方言手ぬぐい】
(クリックで拡大)

「越後高田方言同友会」謹製の方言手ぬぐい

この手ぬぐいの製作に関わられ、現在も販売を続けていらっしゃる小川祐右氏(小川呉服店/上越市南本町)にお話を伺いました。それによると、この手ぬぐいは、25年前に、高田東ロータリークラブ20周年の記念引き出物として作られたのだそうです。選者10名くらいで、数の多い言葉から順位を決めたとのこと。

残念ながら、現在は「越後高田方言同友会」の活動は行われていないそうですが、手ぬぐいの息は長く、法事の引き出物・同期会の手土産として求められているとのことでした。

方言手ぬぐい

信州の「海」、上越海岸

山に囲まれた地域に住む信州人にとって、海はあこがれの行楽地。夏場を中心に長野ナンバー・松本ナンバーの車が上越地域を行き交います。

長野市を中心とする北信地方の方ならば、番付を見て「ああ、これなら知ってる」という語も、「オマン・セウ・ズル・バラコクタイ」など、3分の1くらいあるのでは?

旅行者の立ち寄るセンターのお土産としては、方言グッズ愛好家にはもちろんのこと、広く信州人にも受けそうな気がします。

筆者プロフィール

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics

井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。

(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

 

  • 大橋 敦夫(おおはし・あつお)

上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。

大橋敦夫先生監修の本

編集部から

皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。

方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。