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中学1年生×コンサイスアルバムディクショナリー

2009年 10月 23日 金曜日 筆者: ogm

 「コンサイスアルバムディクショナリー」の展示がおこなわれるとの情報を得て、先月、東京は新宿区にある私立海城学園の文化祭をおとずれました。

 展示がある教室をのぞくと、素敵な油絵や、社会科、数学科での取り組みの発表、野外での飯ごう炊さんや海での遠泳の写真、力を入れていると聞くPA(プロジェクトアドベンチャー)のビデオなど、春に入学したばかりの中学1年生のものとは思えないたくさんの結晶がそこに。

 そして、さらに大きな結晶にちがいない、なんと286人分の『コンサイスアルバムディクショナリー しろ版』

 圧巻でした。学年全員の「しろ版」が机のうえに置かれ、そのなかから生徒さん本人が選んだベスト1が、各クラス色とりどりの模造紙に貼られていました。その一つひとつを手にとってページをめくると、まだ会ったこともないはずなのに、生徒さん本人のキャラクターが思い浮かぶようです。夏休みの国語科の宿題の一つとして一人一冊を取り組んだとのこと。文化祭の来場者のかたも皆さんくぎづけになっている様子でした。

 展示の横には貼り紙があり、そこには国語科の中村陽一先生により、このユニークな“夏休みの宿題”に至った経緯が説明されていました。

 今年度の国語の授業は「言葉とコミュニケーション」ということを大きなテーマとして展開しています。その流れの中で、一学期の授業では「言葉のはたらき」について体験的に考えるために、「写真に言葉をつける」という活動を行いました。
 右の写真(①(*))をご覧ください。たとえばこの写真に「感謝」という言葉をつけた場合と「謝罪」という言葉をつけた場合では、そこで交わされているであろう会話、二人の関係性は、まったく違うものになります。またたとえば「慇懃無礼」とでもつけた場合には、左側の男は右側の男に心から頭を下げておらず、心の内では右側の男を見下しているような物語が立ち上がってきたりします。

(*)〔編集部注〕スーツを着た男性二人。一人はもう一人に向かって頭を下げている。

 この下には授業のねらいも書かれているのですが、まずはどのような活動だったか、中村先生にさらに詳しくうかがってみました。

――まず、1枚の写真を例に話した後で、別の5枚の写真について、生徒一人ひとりが思い浮かべたことばをつけるという作業をしました。その後、グループで自分のつけたことばを発表し合い、互いがどうとらえたかを共有する時間をもちました。

 そのとき使ったというプリントを見せていただくと、その5枚の写真について、グループのメンバーがつけたことばを記すスペースもあり、そこには「自分が選んだ言葉とは全く異なるような捉え方をしているもの」を書くようになっていました。これはなぜでしょう。

――同じ写真でも、つけられたことばによって異なる解釈が生まれてくることを、提示した例でなんとなく感じるだけでなく、身近なクラスメートとのやりとりのなかで知ることで、“ことばがものごとの解釈を決定する”“ことばが世界を決定する”というようなことを体験的に理解することがねらいでした。

 授業のねらいとして説明なさっていることは、そこにつながるということですね。そして、授業ではまず写真にことばをつけ、夏休みの宿題ではことばに写真をつけたと。

――夏休みの宿題は、お話ししたような授業の一環として出題したものです。写真にことばをつける活動も生徒にとって貴重な体験となったようですが、授業での活動とは反対に、あらかじめ与えられたことばに対して写真をあてはめる作業もまた、「ことば」との新たな出会いになったようです。

 右上の写真は、展示の一部を撮影させていただいたものです。右の列の3枚は「きらきら」ということばに夜景、虹、家族とそれぞれの写真が合わせられています。このように、同じ年齢、同じクラスにいる生徒さんどうしでも、それぞれの合わせるものが全然違います。生徒さんの写真とことばの合わせかたはとても新鮮であり、また思わずうなってしまうようなものもありました。22ページ×286冊のほんの一部ですが、ここに少しご紹介いたします。

 

 ぜひこの作品を世の中の皆さまにもお見せしたいと思いながら、後ろ髪ひかれる思いで会場を後にしました。

 最後になりましたが、展示の撮影とこのページでの掲載をご了承くださった海城学園の皆さま、ありがとうございました。生徒さんだけでなく先生方も、ぜひ今後「くろ版」や「一期一会」にもご挑戦くださいませ。

* * *

「コンサイスアルバムディクショナリー」のご案内

◎一般の方からの投稿作品を集めたウェブギャラリーもどうぞご覧ください。
 ⇒「コンサイスアルバムディクショナリー ウェブギャラリー」

◎海城学園の生徒さんたちが取り組んだのは……

『新明解国語辞典編 しろ版』
三省堂編修所 編 1,260(1,200)円 四六変型判 48頁
ISBN 978-4-385-36407-0
〈うっとり〉〈きらきら〉〈情熱〉〈ロマン〉など美しいことば、夢のあることばを『新明解国語辞典』から22項目。見本はこちら⇒見本+写真付きサンプル

◎「コンサイスアルバムディクショナリー」は、「しろ版」のほか、ブラックなことばを集めた『新明解国語辞典編 くろ版』、ちょっと難しい『四字熟語辞典辞典編 一期一会』、親子で楽しめる『年中行事辞典編 いちねん』があります。

2009年 10月 23日