『三省堂国語辞典』のすすめ その92
2009年 11月 4日 水曜日 筆者: 飯間 浩明『三国』の郵政改革?

【JPって何の略?】
政権交代が起こって以来、連日、目新しいニュースが続いています。10月には日本郵政の新しい社長が、新政権の方針に沿って決まりました。私はこういったニュースからとても目が離せません。政治への関心からということもありますが、「『三省堂国語辞典』の次の版はどうなるんだろう」と考えるからでもあります。
『三国』と日本郵政とは、浅からぬ因縁があります。もちろん、辞書の上での話です。世の中のことばの変化を積極的に採り入れようとする『三国』は、制度が変われば、それをていねいに反映しようと努めます。『三国』の第六版の校了は2007年11月ごろでしたが、その1か月前、10月1日に日本郵政株式会社が発足しました。それで、校了間際の慌ただしいときに、すべりこみで「JP」という項目を入れました。

【郵便ポストも変遷した】
原稿段階では、会社の発足と、第六版の刊行と、どちらが先になるか分からないので、とりあえず「日本郵政公社」という項目を予定していました。それが、直前になって、「日本郵政株式会社」に差し替えられました。でも、辞書の項目として一民間企業の長い名称が載るのは違和感もあり、結局、略称の「JP」が採用されました。「JP」は、第六版の新規項目の中でも、いちばん最後に決まった項目のひとつということになります。
郵便事業の変遷とともに、『三国』の記述はいろいろと変化しています。なかでも移り変わりが激しいのは、「郵便局」の語釈です。

【昔の郵便局(明治村)】
「郵便局」は、『三国』の前身『明解国語辞典 初版』では、〈逓信大臣の管轄の下に、郵便の事業を取扱ふ役所。〉となっていました。これが戦後の改訂版では、〈郵政大臣の管理のもとに……〉に変わり、『三国』でも、初版から第四版まではほぼ同じ説明でした。ところが、2001年の中央省庁再編を経て、第五版では〈総務省の管理の もとに、郵便・郵便貯金などの仕事を取りあつかう所。〉に変わり、さらに、2003年には日本郵政公社が発足したため、途中の刷りから〈日本郵政公社の管理の もとに……〉と修正されました。
今回の第六版で、「郵便局」は〈郵便・貯金・保険の窓口業務などをあつかう・会社(事務所)。〉と改められました。街の郵便局の様子はさほど変わらないのに、語釈だけがぐるぐると変わっているのは、おかしくもあります。次の第七版では、どういう語釈に変わるのか、それとも変わらないのか。私にもまだ分かりません。
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◆飯間先生の記事はここにも⇒「三省堂WebDictionary」ことばパティオ第8回「「串刺し」に堪える語釈でなければならない」
筆者プロフィール
飯間浩明(いいま・ひろあき)
早稲田大学非常勤講師。『三省堂国語辞典』編集委員。
早稲田大学文学研究科博士課程単位取得。専門は日本語学。古代から現代に至る日本語の語彙について研究を行う。NHK教育テレビ「わかる国語 読み書きのツボ」では番組委員として構成に関わる。著書に『遊ぶ日本語 不思議な日本語』(岩波書店)、『NHKわかる国語 読み書きのツボ』(監修・本文執筆、MCプレス)、『非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門』(ディスカヴァー21)がある。
URL:ことばをめぐるひとりごと(http://www.asahi-net.or.jp/~QM4H-IIM/kotoba0.htm)
【編集部から】
生活にぴったり寄りそう現代語辞典として定評のある『三省堂国語辞典 第六版』が発売され、「【サンコク】メディアでの紹介」の記事にある通り、各方面で取り上げていただいております。その魅力をもっとお伝えしたい、そういう思いから、編集委員の飯間先生に「『三省堂国語辞典』のすすめ」というテーマで書いていただいております。







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