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付録について

2009年 11月 16日 月曜日 筆者: 信岡 資生

クラウン独和辞典―編集こぼれ話―(71)

『クラウン独和辞典』の中身は、メインとなる「独和」の部のほか、さまざまなページから構成されている。序文はさておいても、「この辞典の約束ごと」「発音解説」「ドイツ語正書法解説」「正書法インデックス」「ドイツ語アルファベット」「枠囲みした記述」がはじめにあり、巻末には「付録」として、「和独インデックス」「文法小辞典」「主な参考文献」「動詞変化表」があり、表紙裏には地図「Mitteleuropa」「ドイツ・オーストリア・スイス(行政区画)」が掲載してある。また第4版はCDとそのテキストが別添されている。CDは第3版でも2006年2月から別添のものが刊行されたが、第4版ではすべてCD付となった。ちなみに「この辞典の約束ごと」は、一般に従来の辞書では「凡例」とされていたものに相当するが、この古い用語は今日の利用者にはなじまぬもので、学生のなかには(教師にも)「ぼんれい」と読む者がいるほどであったため、『クラ独』では他の辞典に先駆けて初版(1991年3月)からこうしたわかりやすいタイトルにしたのである。また、術語編、ドイツ語索引、別表の3部から成る「文法小辞典」は、ここだけでも独立させて単行本にすることができるほど充実した内容で、『クラ独』の目玉のひとつと言えよう。

「独和辞典」の付録といえば、明治の昔から、不規則動詞の変化表と決まっている。実際今日でも「独和辞典」を名乗る本で巻末に不規則動詞の変化表を掲載しないものはない。しかし学習上や情報社会のさまざまな要望に応じるべく、「独和辞典」にはそれだけでなく多種多様なページが添えられるようになった。とりわけ文法関連事項や日常会話や専門用語集などである。三省堂刊行の独和辞典に限ってみれば、『デイリーコンサイス独和・和独 第2版』(2009)と『身につく独和・和独辞典(CD付き)』(2007)の「役に立つ表現集」「数・数字の表現」、『新コンサイス独和辞典』(1998)の「経済用語辞典」「和独インデックス」「新正書法について」「つづりの分け方(分綴法)」、『独和新辞典 第3版』(1981)の「記号及びシンボル」「分綴法」「諸品詞及び構文要覧」などであるが、昔に遡って明治中期に好評だった『獨和新辭林』(明治29)のAnhang附録は、不規則動詞表のほかに、Erklärung der Abkürzungen 略語解 とDie gebräuchlichen fremden Ausdrücke 常用外國語 であった。

そもそも付録とは何であろうか。『大辞林』によれば「①…また本などで、本文を補足する目的などで添えられたもの」であり、巻頭でも巻末でも、あるいは別冊になっていても、位置や形態には関係ないようだ。ただ、巻末にあるものをまとめて「付録」と名をうっておけば、利用者は「おまけ」として、なんとなく得をしたような気分になるかもしれない。

2009年 11月 16日