クラウン独和辞典 ―編集こぼれ話―

75 ドイツのお菓子(5)―グミ(2)―

筆者:
2009年12月21日

Haribo社の本家グミについて、一つ書き忘れたことがあった。

既に紹介したようにHariboの製品には、一説に3千種と言われるほど数多くの種類があり、日本に輸入されているのはその中のほんの一部である。

クマの形をした5色のフルーツ味のGoldbären「金のクマ」とLakritze「カンゾウ(甘草)」入りの黒い円盤形のグミRotella Schneckeの話は既にしたが、他にも例えば、コーラ味でコーラのビンの形をしたHappy Colaとか、緑のカエルの形で青リンゴ味のFrösche「カエル」とか、トロピカルフルーツの形と味のTropi Frutti、イチゴ・ミルク味で砂糖をまぶした赤い小粒のPrimavera、ひも状のBalla-Balla等々、個人的に好んで口にしたものを上げているだけでもきりがない(大人のくせをしてそんなに色々なグミを食べた方がどうかしているのだが)。

さてこの中にBronchiolというミント味のシリーズがある。Bronchien「気管支」と引っかけた名称で、日本ならさしずめハッカのきいた「のど飴」とか「痰切り飴」とかいったところだろう。

ところでこのBronchiolのシリーズの袋には、日本人なら一目で分かり、おや?と思う、富士山の絵が描いてある。おまけに「純正日本ハッカ入り」と誇らしげにうたってある。恥ずかしい話だが、妻に教えられてこのグミを見るまで、「日本ハッカ」がそんなに有名だと私は知らなかった。(Hariboのグミを日本で論じるのに、Bronchiolを欠かす人があるかと妻に指摘されたのである)日本風を意識したシリーズらしくて、富士山にさらにサクラの花を添えた、Kirsche「サクランボ」風味もある。サクラとサクランボの違いが、日本におけるほど意識されていないらしいのが少々気にはなるが。

第2次世界大戦前まで日本の、特に北海道は世界有数のハッカの生産地で、一時は世界のハッカの7割を生産していたものなのだそうだ。その後は衰退してしまい、今はインドやブラジルが生産の中心だそうだが、それでも日本で改良したハッカが使われ、「日本ハッカ」と呼ばれているのだそうだ。どこで日本の名が発揚されているか分からないものである。

筆者プロフィール

『クラウン独和辞典第4版』編修委員 石井 正人 ( いしい・まさと)

千葉大学教授
専門はドイツ語史
『クラウン独和第4版』編修委員

編集部から

『クラウン独和辞典』が刊行されました。

日本初、「新正書法」を本格的に取り入れた独和辞典です。編修委員の先生方に、ドイツ語学習やこの辞典に関するさまざまなエピソードを綴っていただきます。

(第4版刊行時に連載されたコラムです。現在は、第5版が発売されています。)