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『三省堂国語辞典』のすすめ その100

2009年 12月 30日 水曜日 筆者: 飯間 浩明

三国は、進化し続ける。


【『三国 初版』】

 『三省堂国語辞典』の編集委員として、その魅力を多くの人に知ってもらおうと書き始めた文章が、もう100回になりました。これを潮に、この連載を終えることにします。

 『三国』の魅力は、これまで書いただけではとうてい尽くせず、全部で8万回ぐらいは書き続けられるかもしれません。『三国』には約8万のことばがあるからです。でも、あまり書いては、読者自身が『三国』から発見する楽しみを奪ってしまいます。私の案内は、やはりこのへんでとどめておきましょう。

 しめくくりに、私が考える『三国』の長所を、もう一度まとめてみます。

歴代の『三国』
【歴代の『三国』】

 まず、『三国』は、新しいことばを積極的に取り入れています。これは、新語辞典の項目をそのままちょうだいするという意味ではありません。たとえば「インカム」は、新語辞典では「収入」(income)しか載っていませんが、『三国』では、テレビのディレクターなどがつけている通信機(intercom)のことも載っています。

 また、世間でよく使われるのに辞書に載っていなかったことばを、ていねいに拾っています。たとえば「薄掛け」(毛布)は、スーパーのちらしでも見かけますが、『三国』のほかに載せている辞書はあまりないはずです。

 あるいは、意味の変化を見逃しません。たとえば「追記」には、〈DVDなどにデータを追加して記録すること〉という新しい意味が生まれています。『三国』では、このような新しい意味を、ブランチの2や3などとして示しています。

 ことばの説明にあたっては、簡単な用語で、短く、分かりやすくまとめています。これを、私は「シンプルな似顔絵」と表現しました。くわしい肖像画よりも、さっと描いた似顔絵の方が実物に迫る場合があることは、何度か強調したところです。

 これらの長所は、かつての主幹、見坊豪紀(けんぼう・ひでとし)以来の実証主義に支えられています。つまり、現代語の実例を、新聞・雑誌・テレビなどから数多く採集し、それを紙面に色濃く反映させるというのが、『三国』の方針です。

 今回の『三国 第六版』は、こうした従来の方針を受け継ぎ、より徹底させようと努めました。古い『三国』をご愛用の方には、ぜひ、この機会に最新版をお使いになることをお勧めします。『三国』は進化しています。これからも進化し続けることでしょう。

 

★新年から、「国語辞典の選び方」についての新しい連載を始めます。こちらもどうぞご期待ください。

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◆飯間先生の記事はここにも⇒「三省堂WebDictionary」ことばパティオ第8回「「串刺し」に堪える語釈でなければならない」

筆者プロフィール

【飯間先生の新刊『非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門』】飯間浩明(いいま・ひろあき)
 早稲田大学非常勤講師。『三省堂国語辞典』編集委員。
 早稲田大学文学研究科博士課程単位取得。専門は日本語学。古代から現代に至る日本語の語彙について研究を行う。NHK教育テレビ「わかる国語 読み書きのツボ」では番組委員として構成に関わる。著書に『遊ぶ日本語 不思議な日本語』(岩波書店)、『NHKわかる国語 読み書きのツボ』(監修・本文執筆、MCプレス)、『非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門』(ディスカヴァー21)がある。
URL:ことばをめぐるひとりごと(http://www.asahi-net.or.jp/~QM4H-IIM/kotoba0.htm)

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【編集部から】
生活にぴったり寄りそう現代語辞典として定評のある『三省堂国語辞典 第六版』が発売され、「【サンコク】メディアでの紹介」の記事にある通り、各方面で取り上げていただいております。その魅力をもっとお伝えしたい、そういう思いから、編集委員の飯間先生に「『三省堂国語辞典』のすすめ」というテーマで書いていただいております。
飯間先生の予告にある通り、今回でこの連載は終了いたします。
新年より、今度は「国語辞典の選び方」をテーマに新連載が始まります。⇒「国語辞典入門」アーカイブ

2009年 12月 30日