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間投詞の婉曲表現―『英語談話表現辞典』覚え書き(14)―

2010年 2月 4日 木曜日 筆者: 内田 聖二

前回まで数回にわたって強い感情を表す間投詞について述べてきました。軽々に口に出してはいけない神聖な語が口について出てしまうほどの感情を表現するのにキリスト教関連の語が用いられることも説明しました。ただ、あまり使いすぎるとその効果も薄くなり、特に1960年代にヒッピーが出現した頃からさらに強い感情表現として、shitのような排泄に関係する語、fuckのようなセックスにかかわる語が使われるようになりました。(これらの語は典型的に4文字からなることが多いことから四文字語(four-letter word)といわれ、公然と言ってはならないタブー語となっています。)他方、強い間投詞表現を避ける婉曲表現も特に女性などのあいだで使われるようになっています。今回はそのような語句について記述してみます。

本辞典には収録されていませんが、Godの婉曲語にgosh、gollyなどがあります。goshは女性に用いられることが多く、驚きや感嘆の気持ちを伝えます。以下の用例は三省堂コーパスを改変したものです。

1 〈目の前の光景などに感嘆して〉うわー、すごい:Gosh, look at that mountain! Isn’t it beautiful? うわー、あの山を見てごらん、きれいでしょ。

2 〈思い出したことを改めて感嘆して〉そうなんだ、そうさ:She was wearing a red and white polka dot dress. Gosh, she looked gorgeous! 彼女、赤と白の水玉模様のドレスを着てたんだ。そうなんだ、とても素敵だったんだ。

3 〈疑問文などを受けて〉(ここぞとばかりに)そうなのよ、やっぱり(◆よくぞ聞いてくれたという含みがある):《女優がインタビューを受けて》“Do you do your own shopping?” “Oh gosh, yes! I love shopping of any kind!”「買い物はご自分でされますか」「そうなのよ、するわ。どんな買い物も好きなの」/“Where is your favorite holiday destination?” “Oh gosh, I like Paris!”「休暇で行きたいところはどこですか」「そうやっぱり、パリね」

4 〈今まで気がついていなかった事実を指摘されたり思い出したりして〉まさか、そんな:《相手の年齢を知って》What? You? Fifty? Gosh. You don’t look that old. なんですって。あなたが?50歳?まさか、そんな年齢にみえないわ。

gollyは次のように記述してみました。

1 〈強調して〉まったく、ほんとに:《へまをした人に対して》By golly, he’s a complete idiot.まったく、彼はどうしようもないあんぽんたんなのよ。(◆by Godの婉曲表現)

2 〈忘れていたことに気がついて〉うわっ、やばい:“He’s coming to meet you at the station at twelve o’clock.” “Oh, my golly, it’s almost twelve now!” 「彼は12時に駅でと言ってたろ」「うわっ、もう12時だよ」(◆my Godの婉曲表現)

3 〈問いに答えられなくて〉うわっ、あれっ、どうしよう:“How long have you been here?” “Golly, I don’t know.”「ここに来てどのくらいになる?」「うわっ、どうしよう。覚えていない」

4 〈あきれて〉ほんとうに、どうしよう:《忘れ物をして》You know how forgetful I can be. Golly, I’d forget my head if it wasn’t attached to my body.「私って忘れっぽいのよね。ほんとに、体についていなかったら頭だって忘れてしまうかも」

また、geeはJesus (Christ)の婉曲語としておもにアメリカ英語に多くみられます。geeは本辞典で次のように説明してあります。

1 おや, あらまあ, これは驚いた, ええっ, 本当に!:《時間の経つのも忘れて》 Oh, gee! Four o’clock. Two more hours. あら, 4時だわ! あれからもう2時間もすぎたのね。

2 〈相手の注意を引いて〉ねえ, ちょっと:Gee, honey, are these all our own things? ねえ, これってみんな私たちのもの?

3 〈ためらいながら〉うーん, えーと:You might be able to say, gee, you know, we’re thinking about these types, . . . . 君たちは, その…我々がこのようなタイプのものを考えているということはわかるだろう.

いずれもGodやJesusに比べ、柔らかな響きが感じられると思います。


【筆者プロフィール】
内田聖二(うちだ・せいじ)
奈良女子大学教授
専門は英語学、言語学(語用論)
主な業績:『英語基本動詞辞典』(1980年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基本形容詞・副詞辞典』(1989年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基礎語彙の文法』(1993年)英宝社(衣笠忠司、赤野一郎と共編著)
『関連性理論-伝達と認知-』(初版1993年、第2版1999年)研究社(共訳)
『小学館ランダムハウス英和大辞典』(第2版1994年)小学館(小西友七・安井稔・國廣哲弥・堀内克明編、分担執筆) 
Relevance Theory: Applications and Implications, 1998, John Benjamins.(Robyn Carstonと共編著)
『英語基本名詞辞典』(2001年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『ユースプログレッシブ英和辞典』(2004年)小学館(八木克正編集主幹、編集委員)
『新英語学概論』(2006年)英宝社(八木克正編、共著)
『思考と発話』(2007年)研究社(共訳)
『子どもとことばの出会い』(2008年)研究社(監訳)


【編集部から】
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2010年 2月 4日