ドイツのお菓子(8)―ワッフル(3)
2010年 3月 15日 月曜日 筆者: 石井 正人クラウン独和辞典―編集こぼれ話―(84)
Waffelの話をさらに続けたい。Waffelの原形となったOblateについてである。
Oblateは、ラテン語の「捧げもの、犠牲」(oblatum)という言葉から来ている。「捧げる、犠牲にする」(offero)の過去分詞の名詞化である(oblatumがラテン語で「楕円」を表すところから来たという説を見かけるが、間違いである)。
どの辞典のOblateの語義説明を読んでも、何故こんなに雑多な意味があるのか、相互のつながりがよく分からない。実は全て、古い教会用語や習慣から発している。修道士も教会の前の捨て子も、皆神に「捧げられた者」である。そして何よりキリスト自身が、自分の体を十字架に「捧げた」、「犠牲となった」のであった。
ミサとは「最後の晩餐」を記念するものである。「最後の晩餐」でキリストが弟子たちに、自分の体だと言ってパンを配り、血だと言ってブドウ酒を配り、自分の体を食べ、血を飲んで、自分と一体になれと言った、そのままをミサで繰り返す。毎回信者たちはミサの中で、「キリストの体」である「パン」を食べる。儀式化されていてもはや「パン」ではなく、まさに丸いウェハースのような(決して甘くない)焼き物である。これはミサの中で「キリストの体」であり、「捧げもの、犠牲」となる。ミサ用に焼いた薄焼きせんべいをOblateと呼び、ミサの中で特別の祈りを捧げて「聖変化」させ「キリストの体」となったものをHostie「ホスチア、聖体」と呼ぶ。キリスト教の信仰と典礼の中心となる。
因みに、よく間違えて「アヴェ・マリア(めでたし、マリア)」(マリア賛歌)を集めたCDに混ざっていることがある「アヴェ・ヴェルム・コルプス(めでたし、真のお身体)」(聖体賛歌)とは、このHostieを称えた聖歌である。
しかしOblateは世俗にも使う。有名なのがKarlsbad「カールスバート」(現在はチェコのKarlovy Vary「カルロヴィ・ヴァリ」)名物のOblateである。これこそがワッフルの原形なのだと(特にカルロヴィ・ヴァリでは)主張されている。実際に、こう言っては何だが、洗練されないゴーフルのようなお菓子であって、それなりの説得力がある。
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【筆者プロフィール】
石井 正人(いしい・まさと)
千葉大学教授
専門はドイツ語史
『クラウン独和第4版』編修委員
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【編集部から】
2008年2月に『クラウン独和辞典』(第4版)が刊行されました。日本初、「新正書法」を本格的に取り入れた独和辞典です。編修委員の先生方に、ドイツ語学習やこの辞典に関するさまざまなエピソードを綴っていただきます。







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2007年









