地域語の経済と社会 ―方言みやげ・グッズとその周辺―

第94回 山下暁美さん:おいしい方言(大阪府)

筆者:
2010年4月10日

今回は、「くいだおれ」で名高い大阪府をとり上げます。大阪の「おいしい方言」は、他府県にくらべるとさすがと思わせる迫力のある表現があります。

(画像はクリックで拡大します)

【写真1】 【写真2】
左:【写真1】 右:【写真2】
【写真3】
【写真3】

例えば、まず、「ホンマにうまいんやろか【写真1】」(ほんとうにおいしいのだろうか)と問いかけます。「うまいか、うまないか、自分で食べて確かめてみい【写真2】」(おいしいか、おいしくないか、自分で食べて確かめてみなさい……ソウシヨウカナ?)。「おばちゃんがおいしい言うとんやから間違いあらへん。買っとき【写真3】」(おばさんがおいしいと言っているのだから、間違いはない。買っておきなさい……マチガイナイノカナ?)とまあ、こんな調子です(カタカナの部分は、筆者がみなさまの心理を想像して書いた部分です)。

【写真4】
【写真4】

箱の6面全部をフルに使って、「自分で確かめてみい」「買っとき」「食べてみんと、わかりまへんで」(食べてみないとわからないよ)とたたみかけます。そして、最後のきわめつけは、「どや、うまいやろ?【写真4】」(どうだ、おいしいだろ?)というわけです。せんべい一箱(600円ぐらいだったと思います)を買うのにも、問いかけ→さそい→ややおしつけ→確認というシミュレーションが方言によってできるのですからすごい買い物です。

ところで、大阪限定品に「めっさ!!うまい【写真5】」という表現が使われています。「めっさ」は「超」や「とても」という意味です。同じく大阪限定品ですが、「めっちゃうまい!【写真6】もありますから、併用といえましょう。

【写真5】 【写真6】 【写真7】
左から【写真5】【写真6】【写真7】

最後に「まちごうてたべたらあかんで~【写真7】」(まちがってたべてはいけませんよ~)と、たこやきの絵が描かれたなにわ風あぶらとり紙をご紹介して終わりにします。いやはや、おなかが空きました。あぶらとり紙が入ったたこやきの絵が本物に見えます。

筆者プロフィール

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics

井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。

(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

 

  • 山下 暁美(やました・あけみ)

明海大学客員教授(日本語教育学・社会言語学)。博士(学術)。
研究テーマは、言語変化、談話分析による待遇表現、日本語教育政策。在日外国人のための「もっとやさしい日本語」構想、災害時の『命綱カード』作成に取り組んでいる。
著書に『書き込み式でよくわかる日本語教育文法講義ノート』(共著、アルク)、『海外の日本語の新しい言語秩序』(単著、三元社)、『スキルアップ文章表現』(共著、おうふう)、『スキルアップ日本語表現』(単著、おうふう)、『解説日本語教育史年表(Excel 年表データ付)』(単著、国書刊行会)、『ふしぎびっくり語源博物館4 歴史・芸能・遊びのことば』(共著、ほるぷ出版)などがある。

『書き込み式でよくわかる 日本語教育文法講義ノート』 『海外の日本語の新しい言語秩序―日系ブラジル・日系アメリカ人社会における日本語による敬意表現』

編集部から

皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。

方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。