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つなぎ語:自分の発話内で―『英語談話表現辞典』覚え書き(19)―

2010年 4月 15日 木曜日 筆者: 内田 聖二

前回前々回は相手の発言を受けてそこからさらに話を続けていくときに用いられる語句を取り上げました。今回は話し手自身の話のなかで話題をつないでいく語句で、しかも文頭に現れるものを考えてみます。

自分の話を続けていく状況はいろいろ考えられます。単にしゃべりつづける場合や、言ったことに対する理由や、言い訳、正当化を言ったり、話をまとめる、などがあります。たとえば、after all にはいろいろな用法がありますが、次は話し手が意見を述べたあとで、その理由や根拠を補足説明するものです。本辞典からの引用です。

4 〈前言を受けて〉だって[何しろ]…だから, まあしかし(◆上昇調で):You can’t expect her to do the work perfectly. After all, she’s only four years old. あの子に用事が完璧にできると思ってはいけないよ. だってまだ4歳だよ/ Make yourself at home. After all we’re all one family. どうぞ楽にしてください. だって私たちはみな家族なのですから

anywayも多様な用法がありますが、次は先行発話に続けて言い訳やら理由づけを述べたものです。

5 〈前言の内容を正当化して〉いずれにしても[どのみち]…なので:I’m too tired to go out shopping now. Anyway, there’s nothing we need urgently. 今は疲れていてとても買い物に出かける元気などない. 今すぐ必要な物もないし / I ran into my professor but was told he was too busy. And anyway, I didn’t have an appointment. 私は先生に偶然出会っ(て話をしようと思っ)たが, 時間がないと言われた. いずれにしてもアポイントメントを取っていなかったので(断られて当然なのだ) (◆しばしばandを伴う)

第2例では、「出会ったこと」と「時間がないと言われたこと」のあいだに話し手から相手に「お話しがあります」といった発言があったことが予想され、それを断られたことに対して「仕方ない」旨の発話を続けたものです。

in fact も発話と発話をつなぐ語句としていろいろ使われますが、次は話をまとめる用法です。

4 〈前言を要約して〉要するに:I didn’t miss the train this morning. That demanding boss was away on business, and I had a date with her. In fact I had a good day! 今朝は電車に乗り遅れなかったんだよ. 例のうるさい上司は出張で不在だったし, 彼女とデートもした. 要するによい1日だったというわけさ.

また、in fact には前に言ったことを強める用法もあります。

1 〈前言を強調して〉それどころか, むしろ:I don’t like sake much, in fact I hate it. 日本酒はさほど好きじゃない. むしろ, 嫌いな方だ.

ここでは‘don’t like’という語句をより強い意味を表す‘hate’と言い換えています。ほかに、言ったことに付け足したり説明などをして情報を補強する用法もあります。

3 〈前言を補強して〉実のところ, 実は:It was cold last night. In fact there was a frost. 昨夜は寒かった. 実は, 霜も降ったんだよね / I know the top news anchor really well—in fact, we went out for a drink last week. あの人気ニュースキャスターはよく知っているよ. 実際, 先週一緒に飲みに行ったんだ.

また、as a matter of fact は in fact よりかたい言い方ですが、同様に次のような強め用法があります。

2 〈すでに述べた事実を補強して〉はっきり言うと, 明確に言うと:Our publicity agent is doing really well. As a matter of fact this album joined the week’s top hits. うちの広告代理店は実にうまくやってくれています. 事実, このアルバムが今週ヒットチャートに載りました.


【筆者プロフィール】
内田聖二(うちだ・せいじ)
奈良女子大学教授
専門は英語学、言語学(語用論)
主な業績:『英語基本動詞辞典』(1980年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基本形容詞・副詞辞典』(1989年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基礎語彙の文法』(1993年)英宝社(衣笠忠司、赤野一郎と共編著)
『関連性理論-伝達と認知-』(初版1993年、第2版1999年)研究社(共訳)
『小学館ランダムハウス英和大辞典』(第2版1994年)小学館(小西友七・安井稔・國廣哲弥・堀内克明編、分担執筆) 
Relevance Theory: Applications and Implications, 1998, John Benjamins.(Robyn Carstonと共編著)
『英語基本名詞辞典』(2001年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『ユースプログレッシブ英和辞典』(2004年)小学館(八木克正編集主幹、編集委員)
『新英語学概論』(2006年)英宝社(八木克正編、共著)
『思考と発話』(2007年)研究社(共訳)
『子どもとことばの出会い』(2008年)研究社(監訳)


【編集部から】
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2010年 4月 15日