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地域語の経済と社会 第95回

2010年 4月 17日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第95回「長野市松代町に見る方言表示」

 高速道・上信越道の松代インターを降り、長野市松代町内にはいると、写真のような看板表示が目に飛び込んできます。

松代町内の看板
(画像はクリックで拡大表示)

 お達者でやすか[=お達者ですか]
 お変りなしかい[=お変りないですか]
 のくといふるさと[=あたたかいふるさと]
 明るい松代

 松代町出身の方に向けて、帰省の折などに目を止めてもらうことをまず意図しての表現だと思われます。

 使われている方言について、若干の解説を付け加えると――、

 「やす」は、「です」にあたり、長野市を中心とする北信一帯で使われ、隣接する東信(上田市を中心とする東信州地域)でも使われます。

 「のくとい」は、「ぬくとい[=あたたかい]」の「ぬ」と「の」の混同されたものです。

 あらためて、表示を見てみると、松代町出身者にしかわからないような語を避け、松代町方言を知らない方にも、比較的わかりやすい表現をしているところがミソだと思われます。初めて町内を訪れる方にも、「ふるさと」のような「ぬくとさ」を感じてもらえるように、観光を軸に町作りを積極的に展開している、同町の心づかいが感じられます。

 方言表示ではこれまでに、

恋人捨てても、吸い殻べちゃるな[=捨てるな] 〈東信地域〉
校内でくるわない[=ふざけない] 〈飛騨の小学校〉

を見たとの報告を受けています。が、残念ながら写真がありません。

 このエッセー連載のために、町歩きの際にはカメラは必携と痛感しています。

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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

大橋敦夫先生監修の本大橋敦夫(おおはし・あつお)
上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載の始まりです。

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2010年 4月 17日