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地域語の経済と社会 第102回

2010年 6月 5日 土曜日 筆者: 井上 史雄

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第102回「ハワイの英語ピジン方言をみる」
Watching English Pidgin dialect in Hawaii

 ハワイの英語はアメリカ本土の英語と違います。地元ではハワイで発達した独特の英語をPidginと呼びます。言語学では厳密な定義のもとに術語として使っていますが、ハワイでは現在の英語ハワイ方言の名称なのです。1970年にWilliam Labovがハワイに滞在して、若い世代の談話の録音を試みましたが、大研究には発展しませんでした。その後大きな変化があり、今は研究グループが活躍しています。ホノルルの短期滞在の間にそのPidgin Coupの研究会があるというので、参加して、情報を交換しました。ホームページでも、基本情報が得られます。

   http://www.hawaii.edu/sls/pidgin.html

 今のハワイの若い世代のふだんのことばは、アメリカ本土の英語と、文法も発音も単語も違います。インターネット経由でそのピジン英語を聞く(見る)こともできます(会員の古川さんのご教示によります)。

(1) Talking Story about Pidgin: Exploring the creole language of Hawai‛i
   http://sls.hawaii.edu/Pidgin/
高校の社会科の先生を対象にした授業補助を目指して構築中のウェブサイト。
“Pidgin in Public”では、街角のハワイピジンの写真が見られます。

(2) Ha Kam Wi Tawk Pidgin Yet? 1 of 3
   http://www.youtube.com/watch?v=NesfQ2oNBcA
ワイアナエ高校の生徒が作成したドキュメンタリー。他の番組もYou Tubeで見られます。

【図1】ピジン英語のグリーティングカード
【図1】ピジン英語のグリーティングカード
(クリックで拡大します)
【図2】Da Kine(ダカイン)
【図2】Da Kine(ダカイン)
(クリックで拡大します)

(3) Pidgin: The voice of Hawai‛i
   http://pidginthevoiceofhawaii.com/buy-the-dvd/
昨年発表されたドキュメンタリー作品を注文できます。

 また街にはちゃんと方言みやげもありました。グリーティングカードがピジン英語で書かれています。【図1】

 店とそのブランドの名前でもDa Kineというのがあります。The Kindのピジン発音「ダカイン」を写したもので、日本語のアレとかナニのように、思いつかないことばを仮に言うときに使います。【図2】

 ハワイのピジン方言は、日本の方言と同じように、撲滅、記述、娯楽の三段階を経ました。人々の見方が変わると、同じ方向に動くのでしょうか? 方言グッズを手がかりにすると、世界のことばの動きが分かります。

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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

『社会方言学論考―新方言の基盤』『日本語ウォッチング』井上史雄(いのうえ・ふみお)
明海大学外国語学部教授。博士(文学)。専門は、社会言語学・方言学。研究テーマは、現代の「新方言」、方言イメージ、言語の市場価値など。
履歴・業績 http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/inouef/
英語論文 http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/affil/person/inoue_fumio/ 
「新方言」の唱導とその一連の研究に対して、第13回金田一京助博士記念賞を受賞。著書に『日本語ウォッチング』(岩波新書)『変わる方言 動く標準語』(ちくま新書)、『日本語の値段』(大修館)、『言語楽さんぽ』『計量的方言区画』『社会方言学論考―新方言の基盤』(以上、明治書院)、『辞典〈新しい日本語〉』(共著、東洋書林)などがある。

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載の始まりです。

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2010年 6月 5日