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つなぎ語:「逆接」―『英語談話表現辞典』覚え書き(26)―

2010年 8月 5日 木曜日 筆者: 内田 聖二

話をつなぐ典型的な形のひとつに逆接があり、接続詞でいえばbutで代表されます。butの基本的な用法は対比ですが、対比にもふたつのパタンがあります。ひとつは、’I know Tom, but I don’t know his wife.’ のように、語彙の文字通りの意味を基本とする対比で、もうひとつは、’It was raining, but we went fishing.’ のような場合です。これは文字通りの対比ではなく、「雨が降っていれば魚釣りには行かない」という前提に対して、「それにもかかわらず、魚釣りに行った」という対比です。この前提レベルの対比が次の用法にも関連しています。本辞典からの引用です。

1 〈驚きや非難などの感情を表して〉まあ, 何と, それにしても: “Mary passed her exams.” “But that’s great!” 「メアリーは試験に受かったんだ」「それにしてもすごいね」 / 《友人が着ていたコートを思い出して》 It was mink. But what a glorious colour! It was so attractive to me. ミンクだったのよ. それにしてもすばらしい色だったわ. とても魅力的だった.

たとえば、第1例では「受かると思っていなかった」ということが前提にあることからそれに対する驚きが感情表現となっています。また、第2例では「ミンクの色で一般に想像できる以上のすばらしい色」であったことから感嘆文につながっています。

次の第1例は「家にいてよい」と思っている人物の発言で、「どうして家にいるべきではないと思うのか」という疑問を表しています。

2 〈不同意や不信感などの感情を表して〉でも :“I don’t think I should stay in this house.” “But why?” 「この家にいるべきじゃないと思うんだ」「でもいったいどうして」 / 《ルームメイトとのやりとり》 “Somebody wants you on the telephone.” “But who knows I’m here?” 「誰かからあなたに電話よ」「でも誰が? 私がここにいることは誰も知らないのに」.

第2例では「私に電話がかかってくるはずはない」という前提を受けての発言で、そこから「どうして私の居所がわかったのだろう」という疑念が伝わってきます。

 「逆接」というわけではありませんが、on the other handの基本的用法は「両論併記」です。その典型例が次例です。

1 〈対比する事柄を個々に説明して〉もう一方で: We have a right to enjoy clean air. But on the other hand, we should consider smokers’ rights. 私たちにはきれいな空気を享受する権利があります. しかし, その一方で喫煙者の権利も考慮すべきです.

butだけですと、言いたいことがbut以下ということになりますが、on the other handを使うことによって主張点が二つになります。次例も両論併記ですが、結果的に主張点が両極となっており、選挙情勢が片や肯定的な判断、片や否定的な判断であることを伝えています。

3 〈文中に挿入して, 前言を否定〉しかしながら :《選挙情勢について》 Mr. Brown achieves his full stature as a statesman to match the fact that he will indisputably remain where he is. Mrs. Smith, on the other hand, gains little. ブラウン氏は政治家として信望が厚いので, 確実に今の地位を維持するだろう. 一方, スミス氏は, ほとんど支持を得ていない.

ちなみに、このような挿入用法はbutにはありません。


【筆者プロフィール】
内田聖二(うちだ・せいじ)
奈良女子大学教授
専門は英語学、言語学(語用論)
主な業績:『英語基本動詞辞典』(1980年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基本形容詞・副詞辞典』(1989年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基礎語彙の文法』(1993年)英宝社(衣笠忠司、赤野一郎と共編著)
『関連性理論-伝達と認知-』(初版1993年、第2版1999年)研究社(共訳)
『小学館ランダムハウス英和大辞典』(第2版1994年)小学館(小西友七・安井稔・國廣哲弥・堀内克明編、分担執筆) 
Relevance Theory: Applications and Implications, 1998, John Benjamins.(Robyn Carstonと共編著)
『英語基本名詞辞典』(2001年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『ユースプログレッシブ英和辞典』(2004年)小学館(八木克正編集主幹、編集委員)
『新英語学概論』(2006年)英宝社(八木克正編、共著)
『思考と発話』(2007年)研究社(共訳)
『子どもとことばの出会い』(2008年)研究社(監訳)


【編集部から】
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2010年 8月 5日