地域語の経済と社会 第132回 Googleマップによる”モータープール”の世界分布
2011年 1月 8日 土曜日 筆者: 井上 史雄地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第132回「Googleマップによる”モータープール”の世界分布」
Global distribution of “motor pool” by Google maps
今回も、日本の方言について全世界と関連づけうる新手法を紹介します。インターネットのGoogleマップを使うと、言語地図が簡単に作れます。
【図1】はGoogleマップを呼び出して、”モータープール”というカタカナで検索したときの日本地図です。関西にたくさんバルーンがあります。「モータープール」は駐車場の意味で、大阪付近で看板をよく見かけます。このシリーズのメンバーの日高さんが1979年に詳しく報告しました。他の地域だと「月極駐車場」または「月決駐車場」と書くところです。
県単位、地方単位の地図にすると、もっと多くのバルーンが出ます。丹念に地域をずらして地図を保存すると、全国で使われていることが分かります。場所の説明を読むと、会社の業務用の車置き場の名前にも使われることが分かります。自衛隊でも使うそうです。さらに、Yahooなどで”モータープール”と入れて「画像」を検索すると、施設や場所の写真があり、実態が分かります。
戦後まもなく作られた米軍の東京地図を見たら、大手町にmotor poolがありました。アメリカ陸軍の用語で、士官がジープを共用するための駐車場の意味でした。それが日本各地で、生き延びたのです。
ふと思いついて、Google maps(アメリカ版)でアルファベットの”motor pool”を入れて、世界地図レベルで検索しました。【図2】のように、みごとにアメリカに集中分布します。またフィリピン、オーストラリア、ヨーロッパ、アフリカなど世界各地に点在します。アメリカ軍の配置と関係がありそうにも見えます。国内の気づかない方言が、意外に世界全体の違いに対応しているのです。

【図2 “motor pool”の世界地図(Googleマップによる)】
皆さんも思いついた単語の言語地図を作ったらいかがですか? そして結果を教えてください。なお付図のような形で地図を出す知恵について、またGoogleマップの画面の保存については、第127回「Googleマップで見る関西弁の世界進出」をご覧ください。
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【筆者プロフィール】
言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

井上史雄(いのうえ・ふみお)
明海大学外国語学部教授。博士(文学)。専門は、社会言語学・方言学。研究テーマは、現代の「新方言」、方言イメージ、言語の市場価値など。
履歴・業績 http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/inouef/
英語論文 http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/affil/person/inoue_fumio/
「新方言」の唱導とその一連の研究に対して、第13回金田一京助博士記念賞を受賞。著書に『日本語ウォッチング』(岩波新書)、『変わる方言 動く標準語』(ちくま新書)、『日本語の値段』(大修館)、『言語楽さんぽ』『計量的方言区画』『社会方言学論考―新方言の基盤』(以上、明治書院)、『辞典〈新しい日本語〉』(共著、東洋書林)などがある。
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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載の始まりです。
この連載への質問、また「ここでこんな方言みやげ・グッズを見た」などの情報は、問い合わせフォーム( http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/support/question.html )から、「地域語の経済と社会」への質問・情報である旨を記してご投稿ください。
2011年 1月 8日







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