地域語の経済と社会 ―方言みやげ・グッズとその周辺―

第145回 大橋敦夫さん:方言土産の定番・方言手ぬぐい健在なり!

筆者:
2011年4月9日

方言土産の定番と言えば、かつては、のれん・手ぬぐい・絵はがき・湯呑みといったところでしたが、現在、こうした品々は、ちょっと見つけにくくなっています。

が、新潟駅の土産品コーナーで、方言手ぬぐい「特撰新潟弁」を見つけました!

(写真はクリックで拡大します)

製造は、なんとお隣り長野県の土産品製造の大手メーカー株式会社タカチホ。

そこで、同社の方に、製造・販売にいたるいきさつをおたずねしてみました。

○信州弁ではなく、新潟弁が選ばれた理由は?
 取引先である地元の染物屋さんからの発案です。他の地域で出されていた「方言」入りの商品が良く売れていることを知り、新潟でも作ってみたいというご要望にお応えしました。

○どのようにして新潟弁(20語)を選んだのですか?
 広い県域に配慮し、インターネット等でも検索しながら、代表的と思われるものを選びました。

○販売開始は、いつですか。また、売れ行きはいかがですか?
 平成15年4月です。ほかに、のれんも作りましたが、手ぬぐいのほうが、良く売れたので、今は手ぬぐいのみです。年間を通して安定した売れ行きですが、帰省客の多い1月・5月・8月は、特に売れます。

とのことでした。

新潟出身の学生や同僚に見せたところ、「なつかしい!」とたいへん好評でした。また、方言手ぬぐいを見たことのない学生が多く、新鮮な印象を持ったようです。定番商品の威光は依然としてあるのでは。

筆者プロフィール

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics

井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。

(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

 

  • 大橋 敦夫(おおはし・あつお)

上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。

大橋敦夫先生監修の本

編集部から

皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。

方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。