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地域語の経済と社会 第148回 ACジャパンの新聞用広告~関西弁の迫真力~

2011年 4月 30日 土曜日 筆者: 日高 貢一郎

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第148回 「ACジャパンの新聞用広告~関西弁の迫真力~」

 テレビを見ていると、ときどきコマーシャルタイムに、社会人として必要なマナーや、この頃おろそかにされがちな公徳心を喚起する短いメッセージなどが流れて、最後に「♪エーシー」と結ぶのを見ることがあります。

 東日本大震災直後の、民放の報道番組では、通常のCMは一斉にこの「♪エーシー」に代わり、繰り返し流れてきました。

 実は、その新聞版もあるのをご存じでしょうか? 京都で手にした新聞に、次のような広告がありました。平成23年4月1日(金)『毎日新聞』夕刊(大阪本社発行)から、ちょっと長いですが、引用します。

「ちょっとACさん、おせっかいはやめてくれへん」

「なぁなぁ、ときどきACのCMって、テレビで見るやん。
 あれってどう思う?」

「エ-シ-♪言うやつやろ。あれなぁ、
 あれってちょっとおせっかいちゃうの」

「なんかええこと言うてんのかも分かれへんけど
 なんであんたに説教されなアカンのって感じやねんなぁ」

「ACってお役所?」

「役所とはちゃうみたいやけどな」

「昨日なんか、部長からやいやいお説教された後、
 やっと家でテレビ見てはぁーってしてるときに
 正しいこと言うねんもん。なんか、むかつくわぁ」

「ときどき上から目線なんよねぇ・・
 ええこと言うてるときもあるねんけどなぁ」

「そやなぁ、けどACのCMがなかったらどないやろ?
 ちょっと寂しいかなぁ」

「ちょっとな・・」

ACジャパンは公共広告を発信する民間の団体です。
おせっかいかもしれませんが、
これからもよろしく、です。

 「ACジャパン」(旧・公共広告機構)の事務局によると、我々がテレビでお馴染みのものは「公共広告」と言い、上記は「ACジャパン」という団体そのものを知ってもらうためのもので、「広報広告」というのだそうです。(なお、これと同じ内容の、ラジオ用の音声での作品もあるとのことです)

【写真 AC自体を取り上げた新聞広告】
【写真 AC自体を取り上げた新聞広告】
(クリックで全体を拡大表示します)

 たまたま関西で手にしたので、関西地域用なのかと思いましたが、そうではなくて、これは今年度の「全国キャンペーン」の作品で、全国の新聞でも見かけることができるものだということです。

 関西弁でのストレートな会話が展開されており、あたかもいま関西の家庭のテレビの前で交わされていそうな、いかにもありそうな会話です。AC自体を俎上に載せて、「おせっかい、お説教、お役所? むかつく、上から目線、…」等々、歯に衣着せぬ、辛辣なホンネトークが、リアリティーいっぱいに繰り広げられています。

 が、最後は「けど、なかったら、ちょっと寂しいかなぁ/ちょっとな・・」と、その存在価値もしっかりアピールして、「おせっかいかもしれませんが、これからもよろしく、です」と結ばれています。
 関西弁のホンネトークの本領発揮、なかなかひねりの効いた広報ではないでしょうか。

《参考》「ACジャパン」のホームページ(http://www.ad-c.or.jp/)には、これまでのテレビ用と、新聞・ラジオ用の作品も収録されています。今年度のテレビ放送分は動画で、これまでの分は代表的なシーンが静止画で示されています。
 また全国版の他に、各地域版というのもあり、その中には方言が活用された作品もあります。

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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

日高貢一郎(ひだか・こういちろう)
 大分大学 教育福祉科学部 教授(国語学・方言学) 宮崎県出身。これまであまり他の研究者が取り上げなかったような分野やテーマを開拓したいと、“すき間産業のフロンティア”をめざす。「マスコミにおける方言の実態」(1986)、「宮崎県における方言グッズ」(1991)、「「~されてください」考」(1996)、「方言の有効活用」(1996)、「医療・福祉と方言学」(2002)、「方言によるネーミング」(2005)、「福祉社会と方言の役割」(2007)など。

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載の始まりです。

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2011年 4月 30日