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You must be joking/kidding!―『英語談話表現辞典』覚え書き(48)―

2011年 6月 9日 木曜日 筆者: 内田 聖二

前回は of course や certainly を中心に同意表現をみてきました。今回は相手の言ったことに対して、「冗談でしょ」と応じる言い方を考えてみたいと思います。

まず、本辞典から You must be joking [kidding]. の見出しにある記述を引用します。

1 〈予想もしていなかったことを聞いて〉まさか!, 冗談でしょう?, 本当か?, そんなはずはないでしょう?:“Cathy’s just won first prize in the beauty competition!” “Cathy? You must be joking!”「キャシーが美人コンテストで優勝したよ」「キャシーが? まさか!」.
2 〈実現不可能な提案に対して〉冗談じゃない:“Let’s go on a roller coaster.” “You must be kidding!” 「ジェットコースターに乗ろうよ」「冗談じゃない(いやよ)」.
3 〈到底応じられそうにない要求に対して〉無茶なことを言わないでよ:“Please lend me one million yen now.” “You must be joking! I can’t afford that.” 「今すぐ百万円貸してくれない?」「無茶なこと言わないでよ. そんな余裕はないよ」.
《You’ve got to be joking [kidding]. や You’re having a laugh. も同様に用いられる:“I have to get up at 4 o’clock tomorrow morning.” “You’ve got to be joking. That’s terrible!” 「明日の朝は4時に起きなければいけないの」「冗談だろう. ひどいよ, そりゃ!」/ 《会社で》 “You have to stay here all night. There will be a typhoon tomorrow.” “You’re having a laugh!” 「今夜はここに泊まらないといけないよ. 明日は台風が来るようだから」「冗談でしょう!」. 》

この表現の基本は、相手の言ったことが「まさかそんなはずはない」という疑いの気持ちを述べる場合と、相手の提案や要請に対して「とうてい受け入れることはできない」という場合です。特に後者については、「そんなことは冗談ぐらいでしか言えないはずで到底本心とは思えない」ということを含みとして伝える表現です。

また、本辞典では joking と kidding が相互に置き換え可能なように記述されていますが、実際はアメリカ英語とイギリス英語では頻度に少し差があるようです。三省堂コーパスによりますと、話しことばでは次のような頻度となっています。

イギリス英語 アメリカ英語
You must be joking! 17 6
You must be kidding! 1 4

つまり、joking はイギリス英語で使われることが多く、kidding は、断定するほど信頼できる数値ではありませんが、アメリカ英語で多いということになりましょうか。これを裏付ける資料としては同じように使われる‘You’ve got to be joking!’と‘You’ve got to be kidding (me)!’の英米の頻度の差があります。

イギリス英語 アメリカ英語
You’ve got to be joking! 2 2
You’ve got to be kidding (me)! 1 13

また、‘You got to be kidding (me)!’も‘You’ve got to be kidding (me)!’と同じ意味で用いられますが、この表現はアメリカ英語のみに8例確認できます。

また、‘No joking/kidding!’もほぼ同じように使われますが、‘No joking!’は英、米とも1例しかありませんが、‘No kidding!’は英8例、米57例となっています。このようなコーパスの検索結果は kidding はアメリカ英語によくみられるという印象と合致します。


【筆者プロフィール】
内田聖二(うちだ・せいじ)
奈良女子大学教授
専門は英語学、言語学(語用論)
主な業績:『英語基本動詞辞典』(1980年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基本形容詞・副詞辞典』(1989年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基礎語彙の文法』(1993年)英宝社(衣笠忠司、赤野一郎と共編著)
『関連性理論-伝達と認知-』(初版1993年、第2版1999年)研究社(共訳)
『小学館ランダムハウス英和大辞典』(第2版1994年)小学館(小西友七・安井稔・國廣哲弥・堀内克明編、分担執筆) 
Relevance Theory: Applications and Implications, 1998, John Benjamins.(Robyn Carstonと共編著)
『英語基本名詞辞典』(2001年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『ユースプログレッシブ英和辞典』(2004年)小学館(八木克正編集主幹、編集委員)
『新英語学概論』(2006年)英宝社(八木克正編、共著)
『思考と発話』(2007年)研究社(共訳)
『子どもとことばの出会い』(2008年)研究社(監訳)


【編集部から】
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2011年 6月 9日