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地域語の経済と社会 第156回 「『方言エール』~東日本大震災復興の方言メッセージ(2)

2011年 6月 25日 土曜日 筆者: 田中 宣廣

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第156回「『方言エール』~東日本大震災復興の方言メッセージ(2)」

 第146回で「『地域語の力』~東日本大震災復興の方言メッセージ」として,「がんばっぺ高田!!」などの例を紹介しました。この活用法を「方言エール」と呼びましょう。

 震災直後に,生存者が命をつなぐ,という切実な状況下で自然に出て,3ヵ月経過し,手作りから業者製品になってきました。

 下の代表例の表の①②③(第146回と同じ分類)をご覧ください。方言エールは,表現が類型化されています。構成は「エール+地名」が基本です。エールの部分は,各分類で傾向があります。自衛隊では,命令形「けっぱれ」や勧誘の「がんばっぺ」(第146回で紹介)のほか,意志の「まけねど!女川・石巻」もあります。企業や個人では,ほとんどが勧誘です。「おらもがんばる」は意志のようですが,「-も」により全体は勧誘の意です。

 ①自衛隊【写真1=①A】

記号 エール 掲出者,掲載場所
①A けっぱれ!岩手・山田町 陸自(岩手),岩手県山田町役場
①B けっぱれ!岩手 陸自(岩手),岩手県大槌町内避難所
①C けっぱれ!岩手 陸自(青森),岩手県宮古市内避難所
①D まけねど!女川・石巻 陸自(香川),宮城県石巻市
【写真1 山田町役場の自衛隊横断幕(クリックで他例も表示)】
【写真1 山田町役場の自衛隊横断幕】(クリックで他例も表示)

 ②企業など【写真2=②A】

②A がんばっぺす宮古 株式会社文化印刷,岩手県宮古市
②B おらもがんばる 同上,同
②C みんなでがんばっぺす宮古 ジョイス宮古千徳店,同
②D ガンバッペシ山田宮古! 咖喱〔カリー〕亭,同
②E がんばっぺす三陸 けっぱれ宮古 ガソリンスタンド,同
②F がんばっぺす!みやこ(Tシャツ) 販売員,同
②G がんばっぴし宮古 高屋敷整骨院,同
②H 大船渡やっぺし祭り(ポスター) 同祭実行委員会,岩手県大船渡市
【写真2 方言エールステッカー(クリックで他例も表示)】 【写真3 義援金つきワッペン(SAT氏のブログより)】
左:【写真2 方言エールステッカー】(クリックで他例も表示)
右:【写真3 義援金つきワッペン】(SAT氏のブログより)

 ③個人作製【写真3】

③A 頑張っぺ 福島・東北・日本(ワッペン) 非営利会システム FRIENZ会

 ④関連(支援や謝辞)方言メッセージ【写真4=関A】

関A おでんせ ふじ丸 客船ふじ丸=被災民への食事やカラオケの提供支援
関B どうも おおきに 宮古駅前交番=救援隊への謝辞と慰労
関C およれんせ!末広町 宮古あきんど復興市=津波被災商店街のイベント
【写真4 ふじ丸のメッセージ(4月17日宮古港にて筆者撮影;クリックで他例も表示)】
【写真4 ふじ丸のメッセージ】(4月17日宮古港にて筆者撮影;クリックで他例も表示)

 

 地域語は,厳しいとき人々を元気づけるのに共通語より直に心に響きます。私自身も,被災地生活者の一人として再建に努力します。

 なお,第151回で方言の有効活用例の震災被害を報告しましたが,大きな損傷を免れたり,業務再開に向け努力している例もあります。それらを第161回で紹介する予定です。

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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』田中宣廣(たなか・のぶひろ)
 岩手県立大学 宮古短期大学部 准教授。博士(文学)。日本語の,アクセント構造の研究を中心に,地域の自然言語の実態を捉え,その構造や使用者の意識,また,形成過程について考察している。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。著書『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』(おうふう),『近代日本方言資料[郡誌編]』全8巻(共編著,港の人)など。2006年,『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』により,第34回金田一京助博士記念賞受賞。『Marquis Who’s Who in the World』(マークイズ世界著名人名鑑)掲載。

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載。

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2011年 6月 25日