地域語の経済と社会 第159回 いたわりの方言「東日本 応援しまっせ~!」(大阪府)
2011年 7月 16日 土曜日 筆者: 山下 暁美地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第159回「いたわりの方言「東日本 応援しまっせ~!」(大阪府)」
「東日本 おうえんしまっせ~!」【写真1】は、大阪でたまたま入ったたこ焼き屋さんの壁に貼られていたものです。
今、街角では、「がんばろう」「きずな」「つながり」など、日本が元気を取り戻すために何かをしようと呼びかけるスローガンが、たくさん見られます。「応援しまっせ~!」も「いたわりの方言」(第149回)の一つです。売上金の一部を義援金として寄付すると書いてありました。同じ場所に、「ホントにありがとう!!」「ありがとう感謝です!!!」「大阪サイコー!!岩手サイコー!!」「本当にうれしかったです。ありがとうございます。がんばります。」などと、返事が書かれていました。のんきにたこ焼きなど食べに入ったのですが、(たこ焼きは全部平らげた上で)さわやかな気持ちで店を出ました。
「がんばる」について、(ポライトネス理論でいう)心理的負担度から考えてみると、①「けっぱれ」(第156回・がんばれ)(命令形:被災地の方々にさせる)を、無念でつらい思いでいっぱいの被災地の方々に使うのは、無情というものでしょう。一方、②「がんばっぺ」(がんばろう)は、勧誘形で、自分も被災者もいっしょにがんばるという意味になります。③「応援しまっせ」は、自分がするから、被災地の方々は何もしないでいいという意味合いです。
「おうえんしまっせ~!」に関連した表現をGoogle mapで調べると、①「けっぱれ」(23件・2011/06/21調べ)は、北海道、青森、東京、名古屋で、被災地の外側に分布しています。東京、名古屋は、青森豚そばなどの店の例です。②「がんばっぺ」(【写真2】101件・同日調べ)は、宮城県、福島県、茨城県、東京都で、被災地に分布しています。東京都はおそらく東北地方出身の方が書き込みなどされたのでしょう。共通語の①「がんばれ」(【写真3】5564件・同日調べ)は、全国的で、①「けっぱれ」②「がんばっぺ」と互いに補いあって重ならない地域に分布しています。
被災地の方々には、③「応援しまっせ~!」が心理的負担度をもっとも軽減できるメッセージといえましょう。大阪から「がんばれゆうな、みんな、がんばっとんねん」という声が聞こえてきそうです。阪神淡路大震災を経験した地域だからこそと思えます。しかし、最近の理論によると、言語表現に細やかな配慮を込める関西人だからこそ出る発想とも考えられます。
第149回、第151回、第156回(http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/wp/author/nobu-nt/)にも関連記事が掲載されています。Google map関連データは、http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/wp/author/innowayf/を参照してください。
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【筆者プロフィール】
言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

山下暁美(やました・あけみ)
明海大学外国語学部・大学院応用言語学研究科教授。博士(学術)。
専門は、日本語教育学・社会言語学。研究テーマは、移民百年を迎えた、ブラジル、アメリカ合衆国などにおける日本語の変化、外国人の日本定住化による共生時代の日本語教育政策。
著書に『書き込み式でよくわかる日本語教育文法講義ノート』(共著、アルク)、『海外の日本語の新しい言語秩序』(単著、三元社)、『スキルアップ文章表現』(共著、おうふう)、『スキルアップ日本語表現』(単著、おうふう)、『解説日本語教育史年表(Excel 年表データ付)』(単著、国書刊行会)、『ふしぎびっくり語源博物館4 歴史・芸能・遊びのことば』(共著、ほるぷ出版)などがある。
【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載の始まりです。
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2011年 7月 16日









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