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Whatever you say.―『英語談話表現辞典』覚え書き(51)―

2011年 7月 21日 木曜日 筆者: 内田 聖二

今回は‘Whatever you say.’という表現について考えてみます。これは相手の言ったことを認める一種の同意表現で、主語と‘whatever you say’を目的語とする動詞が省略された言い方と考えることができます。本辞典では次のような記述になっています。

1 〈相手の言うことを受け入れて〉君の言う通りにするよ:《ゲームに夢中になっていた2人の会話》 “I think we should stop the game here.” “OK, whatever you say. It’s already midnight now.” 「もうゲームはやめようよ」「わかった, 君の言う通りにするよ. もう夜中だしな」.
2 〈相手の発言をしぶしぶ認めて〉わかったわかった, はいはい君の言う通りです:《妻と夫の会話》 “I think you should stop drinking because you have diabetes.” “All right, whatever you say.” 「糖尿病を持っているのだから, お酒をやめるべきだわ」「はいはい, わかりました, 君の言う通りだ」.
3 〈嫌味たらしく〉おっしゃる通りです, わかってるよ:《母親が息子に》 “You must prepare for the coming term test, mustn’t you?” “I know, whatever you say.” 「期末テストの勉強しなくてもいいの?」「はいはい, (言われなくても)わかってるよ」.

これらの例から、語義1のように、積極的な同意を表す場合と、語義2のように、逆に不承不承な同意を表す場合があることがわかります。また、語義3のような捨て台詞的な言い方にも発展しています。

上例は親しい者同士の日常会話の例ですが、上司や身分の高い人、社会的に上位の人にも使うことができます。次は三省堂コーパスを改変したものです。

《レストランで》“Soup or salad?” “Salad.” “We have a mixed-green salad, hearts of palm or an endive salad with shrimp.” “Just a mixed-green salad, okay?” “Whatever you say, sir.”「スープになさいますか、それともサラダにいたしますか」「サラダで」「サラダはミックスグリーンサラダか、ヤシの新芽サラダ、あるいはシュリンプ添えエンダイブサラダがございますが」「ミックスグリーンサラダでよろしい」「かしこまりました」

ちなみに、さらに省略された表現に‘Whatever.’があります。本辞典からの引用です。

1 〈選択を問われて〉何でもいい, どちらでもいい, どれでもいい:“Would you like tea, coffee, or cocoa?” “Whatever, thanks.” 「紅茶とコーヒーとココアではどれがいい?」「どれでもいいよ, ありがとう」.
2 〈相手の発言に興味がないことを示して〉どうでもいい:“Do you like to go fishing?” “Whatever.” 「釣りに行きたい?」「別に, どうでもいいよ」.
3 〈相手の発言に否定的な態度を表して〉どうでもいい, 自分には関係ないことだ:“That was an interesting speech, wasn’t it?” “Whatever.” 「面白いスピーチだったね」「関係ないね」.

特に、語義2と語義3では、‘Whatever you say.’に比べややぶっきらぼうで無関心の度合いが高い言い方になっています。

なお、‘Whatever you do’という表現もありますが、これは通例単独では用いられず、次のように従属節の働きをします。

絶対に, 何があっても 《テーブルセッティングで》:Whatever you do, don’t put the boss next to me. 絶対に課長の横に俺を座らせないでくれよ 《健康を気遣って》 Be sure to put on your warm underclothes when the weather gets chilly. Yes and be careful of your health, whatever you do! 寒くなったら厚手の下着を着るのよ. そうよ, そして, 何があっても健康には気をつけてね!

【筆者プロフィール】

内田聖二(うちだ・せいじ)
奈良女子大学教授
専門は英語学、言語学(語用論)
主な業績:『英語基本動詞辞典』(1980年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基本形容詞・副詞辞典』(1989年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基礎語彙の文法』(1993年)英宝社(衣笠忠司、赤野一郎と共編著)
『関連性理論―伝達と認知―』(初版1993年、第2版1999年)研究社(共訳)
『小学館ランダムハウス英和大辞典』(第2版1994年)小学館(小西友七・安井稔・國廣哲弥・堀内克明編、分担執筆)
Relevance Theory: Applications and Implications, 1998, John Benjamins.(Robyn Carstonと共編著)
『英語基本名詞辞典』(2001年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『ユースプログレッシブ英和辞典』(2004年)小学館(八木克正編集主幹、編集委員)
『新英語学概論』(2006年)英宝社(八木克正編、共著)
『思考と発話』(2007年)研究社(共訳)
『子どもとことばの出会い』(2008年)研究社(監訳)
『語用論の射程』(2011年)研究社

【編集部から】

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2011年 7月 21日