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‘Let me see’―『英語談話表現辞典』覚え書き(55)―

2011年 9月 15日 木曜日 筆者: 内田 聖二

今回は‘Let me see’にかかわる表現を考えてみたいと思います。

この表現は忘れていたことを思い出そうとするときや次に言うことばを考えるときに時間をかせぐために前もって断りを入れておく言い方です。ちょっとした間であれば、たとえば、well を挿入することですみますが、この‘let me see’は考える時間がかなり必要であることを示唆する言い方です。本辞典から引用します。

1 〈忘れていたことを思い出そうとして〉えーっと:Let me see, where did I put the car keys? えーっと, 車の鍵はどこに置いたかなあ.

2 〈質問に対する正確な答えを探して〉えーっと, ちょっと待ってください:“How long have you been living together?” “Let me see, it’s about four years now.” 「何年ご一緒に住んでおられますか」「えーっと, そうですね, 4年ほどになりますか」.

3 〈人の注意を引きつけて〉さあ, それでは見てみましょう, 確かめましょう:《手品やまじないなどの前に》 Let me see what the tea leaves say about you. . . . There’s a trick my grandmother taught me. さあ, お茶の葉っぱのお告げを見てみましょう. 私の祖母が教えてくれた占いです.

語義1は記憶をたどろうとして話している途中に‘let me see’が挿入されています。次も類例で三省堂コーパスからのものです。

‘Tell me about depression. How did it come on? When was this?’ ‘ Well, it was while I was still doing pretty good. It was about ―― let me see ―― I’ve been out of it 4 1/2 years and it was eight years so we’re talking 12 years approximately.’「うつ病のことについて知りたいのですが、どのように病状が出てきたのですか。いつごろだったのですか」「そうですね、まだとてもうまくいっていたときでした。およそ、そうですね、回復して4年半、その前が8年ですから都合12年前ということになるでしょうか」

すぐには答えが出ないために‘let me see’の登場となっています。上の語義2でもまさに頭の中で計算していることが暗示されています。次も類例です。

‘How did you get into show biz?’ ‘Oh, let me see. . . I started when I was 6 years old, doing my first play in elementary school.’「ショービジネスの世界に入ったのはどのような経緯なのでしょうか」「そうですね、6歳のとき小学校で劇をしたのが最初でしょうか」

また、語義3は see の視覚に関する基本義から出てくる用法で、ここでは see の目的語が続いていますが、実際には‘let me see’だけでもよく生起します。用例数としてはこの用法が一番多いように思います。次も三省堂コーパスから改変した用例です。

‘Galen, let me see.’ He held her head and looked closely for bruises on her face. ‘What happened?’「ゲイレン、見せてごらん」と彼は彼女の顔に手をそえて傷を注意深くみた。「どうしたんだい」/‘Could you give me the address of that person you mentioned last week? You know, the woman who’s got that office in Manila.’ ‘Ah, you mean Maria Edwardes. Now let me see. Umm. I don’t know her address offhand.’「先週話してた人物の住所、わからないかな、あのマニラに事務所をもっている女性なんだけど」「ああ、マリア・エドワルデスのことね。えーと、ちょっと待って。うーん、すぐにはわからないわ」

最初の例は実際に目で確認しており、第2例は調べてみた結果その場では住所がわからないことが判明したことを表しています。これらはいわば直接知覚からの情報ですが、語義1と語義2では心の中を間接知覚していると考えることもできるかと思います。

【筆者プロフィール】

内田聖二(うちだ・せいじ)
奈良女子大学教授
専門は英語学、言語学(語用論)
主な業績:『英語基本動詞辞典』(1980年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基本形容詞・副詞辞典』(1989年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基礎語彙の文法』(1993年)英宝社(衣笠忠司、赤野一郎と共編著)
『関連性理論―伝達と認知―』(初版1993年、第2版1999年)研究社(共訳)
『小学館ランダムハウス英和大辞典』(第2版1994年)小学館(小西友七・安井稔・國廣哲弥・堀内克明編、分担執筆)
Relevance Theory: Applications and Implications, 1998, John Benjamins.(Robyn Carstonと共編著)
『英語基本名詞辞典』(2001年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『ユースプログレッシブ英和辞典』(2004年)小学館(八木克正編集主幹、編集委員)
『新英語学概論』(2006年)英宝社(八木克正編、共著)
『思考と発話』(2007年)研究社(共訳)
『子どもとことばの出会い』(2008年)研究社(監訳)
『語用論の射程』(2011年)研究社

【編集部から】

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2011年 9月 15日