2011年 9月 のアーカイブ
地域語の経済と社会 第166回 『方言エール』~東日本大震災復興の方言メッセージ(3)
2011年 9月 3日 土曜日 筆者: 田中 宣廣地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第166回「『方言エール』~東日本大震災復興の方言メッセージ(3)」
第146回と第156回で東日本大震災の被災地における方言エールを報告してきました。
第156回においては,その類型を考察し,構成は「エール+地名」が基本であることがわかりました。
エールの意味には,発信源と被災者の立場の関係も的確に反映されています。地元の人が発信源なら勧誘(がんばっぺし,他),外部からの救援の自衛隊のものでは意志(まげねど)の他,命令(けっぱれ)がありました。

【写真1 芸能人の方言エール】(クリックで拡大)

【写真2 那覇太鼓のチバリヨー】(クリックで全体表示)

【写真3 高校文化祭のポスター】(クリックで全体表示)

【写真4 図案化された方言エール】(クリックで拡大)
今回は,方言エールの考察の3回目として,その応用例について考えます。
外部から被災地を訪れる方は,震災直後からは救援隊でした。それが,先日,自衛隊が完全撤退するなど,救援の段階は,ひとまず収まりました。今は,全国各地からの警察の応援やボランティアといった支援隊,そして,芸能人やその他の激励の皆さんです。その激励の皆さんも,方言エールをくださいました。
芸能人は,訪れた先で色紙にサインを残しますが,それに方言エールを添えた例が多数あります。発信源は外部からの激励者ですが,訪問した被災地(今回の例は,岩手県宮古市)の方言「がんばっぺ(す)」による方言エールです。【写真1】
また,激励者側の地域の方言を使った珍しい例もあります。沖縄の「那覇太鼓」の大きな日の丸です。沖縄の方言で「チバリヨー東北」です。岩手県内各地では8月にエイサーなどを披露しました。【写真2】~寄せ書きは,被災者たちの感謝の言葉です。同団体のWebページ内には,元の図案の画像があります。
それと,被災地発信のものも,二つの方向に発展(進化)しています。
一つは,構成の応用です。岩手県立宮古高校の文化祭のポスターの方言エール「ガンバッペ宮高」は,「エール+校名」になっています。最初は基本の「エール+地名(宮古)」だったのを,後に修正したものです。あまりに多い「ガンバッペ宮古」のままとせず,独創性が出ています。【写真3】
もう一つはデザイン化です。第156回の写真2の岩手県宮古市の方言ステッカーでその萌芽が見られ,第161回の写真1の岩手県陸前高田市の「がんぱっぺし」では,現在の同市の象徴としての希望の一本松を中心に実に整った図案となっています。
宮古市でも,陸前高田市の例にもあった方言エールのローマ字表記を混ぜる方式が採用された図案が用いられています。【写真4】
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【筆者プロフィール】
言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)
田中宣廣(たなか・のぶひろ)
岩手県立大学 宮古短期大学部 准教授。博士(文学)。日本語の,アクセント構造の研究を中心に,地域の自然言語の実態を捉え,その構造や使用者の意識,また,形成過程について考察している。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。著書『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』(おうふう),『近代日本方言資料[郡誌編]』全8巻(共編著,港の人)など。2006年,『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』により,第34回金田一京助博士記念賞受賞。『Marquis Who’s Who in the World』(マークイズ世界著名人名鑑)掲載。
【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載。
この連載への質問、また「ここでこんな方言みやげ・グッズを見た」などの情報は、問い合わせフォーム( http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/support/question.html )から、「地域語の経済と社会」への質問・情報である旨を記してご投稿ください。
漢字の現在:ベトナムと韓国
2011年 9月 2日 金曜日 筆者: 笹原 宏之漢字の現在 第125回 ベトナムと韓国
ハノイでは、ハングルをしばしば見かけた。朝鮮半島は地理的に遠いが、経済力を高めた韓国の人々が、この地で工業技術の粋を発揮したり、おいしい料理屋を展開したりしているためだ。ハノイの街中で、前回記したように韓国語が、自動車やトラックの車体に記されていたのは単にそれが韓国車だったからであろう。
案内表示や注意書き掲示にもハングルの文章が多かったのは、ベトナム戦争以降の影響もあるのだろうか、韓国からの旅行者が多いためであろう。日本語のそれはなくとも、中国語と韓国語の表示板はよく整備されていた。店頭の看板にも、店名などを表記するために、前回の「大長今」をはじめ、しばしば両国の文字が見られ、国の勢いを感じさせた。飛行場でも、韓国語、中国語の放送が目立ち、掲示でも日本語は圧されていた。
漢字を儒教、仏教などとともに受け入れ、独自に消化しつつも廃止に向かわせた点では、ベトナムと韓国はよく似ている。韓国よりも北朝鮮の方が一層似ている可能性もあるが、情報が乏しいので、今は触れられない。
韓国では、仏教が迫害された時期があり、寺院は街中より山中に多い。そこでも漢字は見かけないと留学生は言い、漢字はあっても一般には皆気付かないとのことだ。漢字は、街中では中国人観光客などのためのもので、韓国語を表記しているとは意識されないそうである。
日本や中国、ベトナムのハノイでは、その点、街中に異空間ながら山門のようなものがあちこちにあり、そこに漢字が見られるようになっている。韓国でも、「東大門」など、歴史ある建造物にはなおも漢字表記が残っているが、ハノイと同様に、日常生活で使用する文字とは対極にある。漢字は難しいもの、中国のものという意識が強いそうだ。
韓国で子供が通う漢字塾は、韓国語表記のためというよりも、中国語や日本語を学習する際に役立ち、ひいては就職につながり、経済力を得られるから、あるいは古典の漢文を理解し、加熱する大学受験に有利になるからなのだと聞く。やはり、ベトナム同様、漢字は現代の現地の言語のための存在ではなくなっているようだ。かといって、ロマンあふれる対象になっているとも聞かない。ハングルは韓国語表記のための合理性や効率性、一元化を追求する志向性と、民族主義、度重なる、直情的とも評される政策転換の結果にも支えられ、唯一絶対の文字と位置づけられている。
ベトナムには、韓国語学習者も多いそうだ。彼らは、漢越語と漢字語との間で、漢字を介さず、それぞれローマ字とハングルで記すものの、発音と意味とに不思議な類似が続出することに興味を持つ人も現れそうなものである。
ハノイの市街では、HYUNDAIと書かれた車が目立つ。ベトナム語にもなっている「現代(ヒエンダイ)」と同じ語、いわゆる同形語だと、認識されているのだろうか。もっとも日本でも、ゲンダイグループからヒュンダイとローマ字読みされるようになってきており、関係の認知は危ういのかもしれない。このダイはかえって古い発音と日本漢字音とで相似する。なお、同形語は直訳のように使えて便利なようだが、語形はすでにずれており、また文中での用法やニュアンスに微差も生じていることがあるため、外国語を使用、通訳・翻訳の際にはなるべく使わないようにしているという人もおいでである。
ベトナム民族博物館では、海外からの旅行者ではなくベトナム人であろうか、うちの次男をニコニコと見ていた若い女性が、目をぱっちりとさせて、「アンニョンハシムニカ」と挨拶をしてくれた。その後、「…アラッソヨ」などと言っていて、訪問客として多い韓国人と間違われたようだ。
ハノイの大学生に、韓国語の説明で「安寧」と板書したら、ベトナム語でアンニンと発音した。日本のアンネイよりも、アンニョンに近く、-ngという末尾の音も互いに保持している。ただ、人名はお互いに漢字を意識せずに、発音で転写するようになっていた。李明博(イ・ミョンバク)大統領と、グエン・ミンチエット(阮明哲)国家主席とで、名前の1字目が同じ漢字であることに思いを及ぼすようなことは、両国間では、いや日本を加えても、まずないのであろう。
ハノイは、漢字がソウルよりも見掛けられたのだが、ソウルに顕著な雰囲気作りのためではなく、あるところにまとめてあったり(古い使用の跡が残っている)、外国人向けに用いられていたりするものがほとんどだった。ソウルでは、漢字は意外と装飾的なものとしては見掛けた。ハノイは、ソウルよりもそうした使用が少なく感じられた。
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【筆者プロフィール】
笹原宏之(ささはら・ひろゆき)
早稲田大学 社会科学総合学術院 教授。博士(文学)。日本のことばと文字について、様々な方面から調査・考察を行う。早稲田大学 第一文学部(中国文学専修)を卒業、同大学院文学研究科を修了し、文化女子大学 専任講師、国立国語研究所 主任研究官などを務めた。経済産業省の「JIS漢字」、法務省の「人名用漢字」、文部科学省の「常用漢字」などの制定・改正に携わる。2007年度 金田一京助博士記念賞を受賞。著書に、『日本の漢字』(岩波新書)、『国字の位相と展開』(三省堂)、『訓読みのはなし 漢字文化圏の中の日本語』(光文社新書)、編著に『当て字・当て読み 漢字表現辞典』(三省堂)などがある。最新刊は、この連載がもととなった『漢字の現在』(三省堂、2011年8月刊行)。
【編集部から】
漢字、特に国字についての体系的な研究をおこなっている笹原宏之先生から、身のまわりの「漢字」をめぐるあんなことやこんなことを「漢字の現在」と題してご紹介いただいております。前回は「ハノイの漢字は誰のため? 」でした。
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「百学連環」を読む:学域を弁える
2011年 9月 2日 金曜日 筆者: 山本 貴光第22回 学域を弁える
以上で第一段落を読み終わりましたので、第二段落に入ります。
凡そ學問には學域と云ふありて、地理學は地理學の學域あり、政事〔學〕は政事〔學〕の學域あり、敢て其域を越えて種々混雜することなし。地理學は地理學の域、政事學は政事學の域、何れよりして何れ迄其學の域たることを分明識察して、其の境界を正しく區別するを要すへし。
(「百學連環」第1段落第10~11文)
現代語訳は次の通り。
一般に学問には学域がある。例えば、地理学には地理学の学域が、政治学には政治学の学域があって、そうした領域を越えてあれこれが混雑することはない。地理学には地理学の領域が、政治学には政治学の領域があり、どこからどこまでがその学の領域であるかをはっきり見て取り、その境界がどこにあるかを正しく区別しなければならない。
ここで言われていることは、むしろ現代の私たちにとって分かりやすいことかもしれません。学術は時代を下るにつれて、その領域をますます細分化し、相互に区別しあってきているからです。ただし、それではそれぞれの学の境界線がどこにあるかをちゃんと知っているかと問われると、少々心許なくもあります。
加えて昨今では、「環境情報」や「神経美学」といった、組み合わせによる学問領域がたくさんつくられるようになっています。例えば、西先生が挙げている「地理学」と「政事〔政治〕学」は、たしかに別の領域ですが、他方では「地政学(geopolitics, Geopolitik)」という学問領域もあります。これはまさに「地理学(geology)」と「政治学(politics)」を融合させたものです。言われてみれば当然のことながら、政治とはどのような地域、風土かということと抜きがたく関係しています。地理を捨象して慮外に置いても問題のない政治学もあれば、地理的条件を考えずには成り立たない政治学もあるはずです。ちなみに、「百學連環」には「地理学」の下位に「政学上地理学 Political Geography」という学域が区別されています(83ページ)。
いずれにしても、学域とは、ある歴史的な経緯のなかで生じてきた人為的な境界線です。ですから、学域について考える際は、西先生が言うように、ある学問の境界がどこからどこまでなのかを認識することが大切です。西欧の文物をどんどん移入吸収しようとしていた明治期には、そうした諸学術にほとんど初めて接する状態だったと言ってよいと思います(それ以前にも切支丹経由の移入はあったにせよ)。それだけに、いろいろある学術相互の違いをはっきり認識すべしという西先生の注意は、大きな意味を持っていたと推察されます。
ただ、それは100年以上を閲した現在、再び人ごとではなくなっているとも思います。今度は、学域というものが、所与のもの、なにか当たり前のものとして受けとられるようになっているからです。例えば、文学と物理学は別の学術であることを疑う人はあまりいないでしょう。しかし、なぜ両者が別の学術として発展しなければならなかったかと問われたらどうでしょう。どうかすると、「だって学校で最初から別々に分かれてたんだもの」という話になってしまうかもしれません。それでは学域がはっきりしているとは言えないわけです。
既に引かれていた境界線を当然視せず、その来歴や現状を確認してみること。さらに言えば、そうした境界線はなおも妥当なものなのかどうかを検討してみること。「百學連環」をいま読むことにはいろいろな意味があると思いますが、百学を並べて、学域相互の違い、現在と過去の違いを総覧してみることは、その一つです。さらに言うなら、西先生の顰みにならって、「百學連環」の現代版をこしらえてみる必要もあるのではないかと思います。
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筆者プロフィール
山本貴光(やまもと・たかみつ)
文筆家・ゲーム作家。
1994年から2004年までコーエーにてゲーム制作(企画/プログラム)に従事の後、フリーランス。現在、東京ネットウエイブ(ゲームデザイン)、一橋大学(映像文化論)で非常勤講師を務める。代表作に、ゲーム:『That’s QT』、『戦国無双』など。書籍:『心脳問題――「脳の世紀」を生き抜く』(吉川浩満と共著、朝日出版社)、『問題がモンダイなのだ』(吉川浩満と共著、ちくまプリマー新書)、『デバッグではじめるCプログラミング』(翔泳社)、『コンピュータのひみつ』(朝日出版社)など。翻訳書:ジョン・サール『MiND――心の哲学』(吉川浩満と共訳、朝日出版社)、ジマーマン+サレン『ルールズ・オブ・プレイ』(ソフトバンククリエイティブ)など。目下は、雑誌『考える人』(新潮社)で、「文体百般――ことばのスタイルこそ思考のスタイルである」、朝日出版社第二編集部ブログで「ブックガイド――書物の海のアルゴノート」を連載中。「新たなる百学連環」を構想中。
URL:作品メモランダム(http://d.hatena.ne.jp/yakumoizuru/)
twitter ID: yakumoizuru
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【編集部から】
細分化していく科学、遠くなっていく専門家と市民。
深く深く穴を掘っていくうちに、何の穴を掘っていたのだかわからなくなるような……。
しかし、コトは互いに関わり、また、関わることをやめることはできません。
専門特化していくことで見えてくることと、少し引いて全体を俯瞰することで見えてくること。
時は明治。一人の目による、ものの見方に学ぶことはあるのではないか。
編集部のリクエストがかない、連載がスタートしました。毎週金曜日に掲載いたします。
‘Perhaps’と‘Perhaps not’―『英語談話表現辞典』覚え書き(54)―
2011年 9月 1日 木曜日 筆者: 内田 聖二今回はよく耳にする‘Perhaps’と‘Perhaps not’について、おもに丁寧表現の観点から考えてみたいと思います。
もともと perhaps は「…かもしれない」という推量を表す言い方ですが、別の観点から言うと、自信のなさを示唆する語ということもできます。このあたりが丁寧表現と関連してきます。
まず第一に、自分の意見を強く主張したり強要しない言い方になります。本辞典からの引用です。
1 〈自分の意見に付加して〉…かもしれない, …じゃないかな:《携帯電話の盗聴問題を考えて》 Perhaps the only way change will occur is for consumers to have a greater awareness and to call for measures to be taken to prevent phone tapping. 携帯電話の使用者がより高い意識を持って, 盗聴防止のための対策の実施を求めてゆくことが, 変革への唯一の方法だろうと思う.
この用法は実際に自信のないときにも使われますが、perhaps を入れると遠慮した言い方になります。
また、相手に対して言いにくいことを述べるときにも用いられます。
4 〈遠回しに〉…だろうね, …みたいですね(◆断定を避けることから丁寧表現にもなる):《気にする相手に何気なく》 Perhaps you’ve gained a little weight. ちょっと太ったみたいですね.
この例はどうみても太ったことが明らかな場合にも使います。この perhaps は頼みにくいことを要請する際にも使われます。
5 〈相手の様子をうかがいながら要請して〉…していただきたいのですが(◆遠慮した依頼表現):Perhaps you would open the window? 窓を開けていただけませんか.
普通は頼みごとなどはできないような相手であったり、そのことを頼むと相手に不都合なことが生じることが予想されるときによく用いられます。
同様に、店員が客に商品を勧めるような場合などにもよくみられます。
6 〈商品などを勧めて〉…されてはどうですか(◆相手の気持ちを推し量ることからやや堅い丁寧表現):《迷っている客に》 Perhaps you would like to try it on. ご試着なさってみてはいかがでしょうか.
この場合は「ひょっとしたら…とお考えでは」といったようなニュアンスがあり、ある種の上下関係がはっきりしているややあらたまった状況で使われます。
ちなみに、perhaps の同義語に maybe がありますが、興味深いことに、maybe には語義4,5,6のような丁寧表現にかかわる用法はありません。
また、否定的に応答するときには‘Perhaps not.’という言い方があります。以下はいずれも perhaps が含まれている前言に対して遠まわしに断定を避けたり依頼や勧誘を断っている例です。
2 〈遠回しに相手の発言を打ち消して〉…でないかもしれない, …でないと思うけど:“Perhaps you’ve lost a little weight.” “Perhaps not.” 「ちょっとやせたみたいね」「そんなことないと思うけど」.
3 〈相手の依頼を遠回しに断って〉遠慮しておきます:“Perhaps you’d be good enough to lend me $10.” “Perhaps not.” 「10ドル貸していただけるとありがたいのですが」「いや, やめとくよ」.
4 〈相手の勧め・申し出に対して〉まあ遠慮しておきます:“Perhaps you’d like to try some natto.” “Perhaps not.” 「納豆を食べてみたら」「まあ, 遠慮しとくよ」.
たとえば、語義3や4では、直接断るよりも柔らかく聞こえます。
なお、前言が否定文であれば‘Perhaps not.’は相手に同意する言い方になることを付け加えておきます。三省堂コーパスからの例です。
“There is nothing honorable about killing or being killed.” “Perhaps not. But sometimes it has to be done.”「殺したり殺されたりなどには名誉なんてものはないのです」「その通りかもしれません。でもときにそういうことは起こるのです」
‘Perhaps not.’のあとに But が続いていることからわかりますように、この人は相手と同意しながらも But 以下で自分の意見を述べています。
型にはまった丁寧な言い方だけでなく、このような身近な副詞を使った簡便な丁寧表現にも慣れておきましょう。
【筆者プロフィール】
内田聖二(うちだ・せいじ)
奈良女子大学教授
専門は英語学、言語学(語用論)
主な業績:『英語基本動詞辞典』(1980年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基本形容詞・副詞辞典』(1989年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基礎語彙の文法』(1993年)英宝社(衣笠忠司、赤野一郎と共編著)
『関連性理論―伝達と認知―』(初版1993年、第2版1999年)研究社(共訳)
『小学館ランダムハウス英和大辞典』(第2版1994年)小学館(小西友七・安井稔・國廣哲弥・堀内克明編、分担執筆)
Relevance Theory: Applications and Implications, 1998, John Benjamins.(Robyn Carstonと共編著)
『英語基本名詞辞典』(2001年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『ユースプログレッシブ英和辞典』(2004年)小学館(八木克正編集主幹、編集委員)
『新英語学概論』(2006年)英宝社(八木克正編、共著)
『思考と発話』(2007年)研究社(共訳)
『子どもとことばの出会い』(2008年)研究社(監訳)
『語用論の射程』(2011年)研究社
【編集部から】
語用論的な情報をふんだんに盛り込んだ、日本発の本格的な発信型会話・談話表現辞典、『英語談話表現辞典』について、編者の内田聖二先生にご紹介いただきます。
書籍購入者は、http://dce.dual-d.netにて本辞典の全データを収録したウェブ版辞典を無料でお使いいただけます。
クリストファー・レイサム・ショールズ(2)
2011年 9月 1日 木曜日 筆者: 安岡 孝一タイプライターに魅せられた男たち・第2回
ショールズの最初の特許は、『ページ番号を印字する機械』で、ソレーとの共同特許でした。ショールズの2番目の特許は、『靴ブラシの改良』でした。『靴ブラシの改良』の特許は、特許公報の1866年8月14日号に掲載されましたが、同じ8月14日号の14個あとの特許に、ピーラー(Abner Peeler)という人物が発明した『書字印刷機』の特許が掲載されていました。

ピーラーの『書字印刷機』は、小さなハンコを1文字ずつ押していくことで、活字による文章を書くことのできる機械でした。自由な文章を印字できるので、この機械が実用化されれば、ソレーとショールズの『新聞に宛先を印字する機械』は実質的に不要になってしまうし、もっと色々な用途にも使える可能性がありました。ただし、ピーラーの『書字印刷機』は、印字に手間がかかり過ぎて、手書きよりもスピードが遅いというシロモノでした。
ショールズは、『ページ番号を印字する機械』の改良や再改良を続けながらも、ソレーと共に新たな発明に取りかかりました。クラインシュトイバー(Carl Kleinsteuber)の工房で、グリデン(Carlos Glidden)やシュバルバッハ(Matthias Schwalbach)といった技術者とも出会い、ショールズの発明熱はどんどん高くなっていきました。そして1867年7月のこと、ウェスタン・ユニオン・テレグラフ社ミルウォーキー支局のウェラー(Charles Edward Weller)のもとを、ショールズは訪ねています。電報の清書に使うカーボン紙をわけてほしい、というのです。何に使うのかとウェラーが訝しんだところ、ショールズは、明日オフィスに来てくれれば見せるよ、とだけ答えました。

翌日、ショールズの収税事務所でウェラーが見たものは、モールス送信機の電鍵の先に、活字が1つ取りつけられた棒が乗っかっている、妙な機械でした。電鍵を押すと活字棒が跳ね上がり、ガラス板に当たります。ガラス板裏側の活字が当たる位置には、小さく切ったカーボン紙が貼り付けられていました。カーボン紙の下で白い紙テープを左に動かしながら、何度か電鍵を押すと、紙テープの表面に「wwwwwwwwwwww」という文字列が印字されました。実験は成功でした。あとは電鍵の数を増やして、アルファベット26種類や数字が打てるようにすればいいはずです。
【筆者プロフィール】
安岡孝一(やすおか・こういち)
京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター准教授。京都大学博士(工学)。文字コード研究のかたわら、電信技術や文字処理技術の歴史に興味を持ち、世界各地の図書館や博物館を渡り歩いて調査を続けている。著書に『新しい常用漢字と人名用漢字』(三省堂)、『キーボード配列QWERTYの謎』(NTT出版)、『文字符号の歴史―欧米と日本編―』(共立出版)などがある。
http://slashdot.jp/~yasuoka/journalで、断続的に「日記」を更新中。
編集部から
安岡孝一先生の新連載「タイプライターに魅せられた男たち」は、毎週木曜日に掲載予定です。
ご好評をいただいた「人名用漢字の新字旧字」の連載は第91回でいったん休止し、今後は単発で掲載いたします。連載記事以外の記述や資料も豊富に収録した単行本『新しい常用漢字と人名用漢字』もあわせて、これからもご愛顧のほどよろしくお願いいたします。







![『新明解国語辞典 第七版[机上版]』7年ぶりに改訂『新明解国語辞典』の机上版。判型は並判より大きいA5判で、さらに文字が大きく見やすい。2色刷。紙面内容は並版と同一。 『新明解国語辞典 第七版[机上版]』](http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/wp-images/smk_kijo.jpg)
![『新明解国語辞典 第七版[小型版]』7年ぶりに改訂『新明解国語辞典』の小型版。並判より一回り小さいA6変型判で、携帯にも便利。2色刷。紙面内容は並版と同一。 『新明解国語辞典 第七版[小型版]』](http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/wp-images/smk_kogata.jpg)
![『新明解国語辞典 第七版[革装版]』7年ぶりに改訂『新明解国語辞典』の革装版。丈夫で使うほどに手になじむ。判型は並版・特装版と同じB6判。2色刷。紙面内容は並版と同一。 『新明解国語辞典 第七版[革装版]』](http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/wp-images/smk_kawaso.jpg)














































































































































2007年









