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ドイツ料理―Dr. Oetker社について―

2011年 10月 31日 月曜日 筆者: 石井 正人

クラウン独和辞典―編集こぼれ話―(119)

ドイツでは冷凍tiefgefroren/tiefgekühltピザをよく食べる。Lサイズの大きいのが、スーパーマーケットの冷凍食品売り場に各種並んでいる。住環境が日本と違い格段に広く、従って台所も広く、それに合わせて冷凍庫も大きいから、あんなものを買い込んでもいくらでも家庭で保存できるのだ。ちょっとしたパーティだと、10枚も用意しておけばそれだけでメインは何とかなる。宅配Lieferungピザもおいしかったが、冷凍ピザもバカにならなかった。

山ほどある中で、よくお世話になったドイツの冷凍ピザは、テレビのコマーシャルで有名なFreiberger社のAlbertoというシリーズと、Dr. Oetker社のRistoranteというシリーズだった。

Freiberger社は1970年代にベルリンで創業した、ドイツ初の宅配ピザ屋だったそうで、Albertoというイタリア語風の名前がボディに書かれた、当時の同社の宅配の赤い小型トラックの模型は、コレクターズアイテムのようである。

Dr. Oetker社については、Iglo社の白身魚のフライと並んでスーパーマーケットの冷凍食品コーナーでよく見かける(日本人がよく食べる)から、こっちが専門だと思っておられる向きもあるが、今は総合食料品メーカーであるものの、そもそもは製菓材料の会社である。更にその元はといえば19世の末に北ドイツのBielefeldで開業した薬屋Apothekeで、小麦粉500グラムにちょうど良い量のベーキングパウダーBackpulverを小分けにして売り出して当たりをとった。ドイツでは粉砂糖などその他の製菓材料が不思議に小分けして古くさい紙袋に入って売っていて、日本人にはかえって使いにくいことがあるが、この流れである。万事この方面はDr. Oetkerがかなりのシェアを占めている。

ベーキングパウダー(ふくらし粉)というのは重曹(炭酸水素ナトリウム)に酒石酸とか焼きミョウバン(カリウムミョウバンだが、これに含まれるアルミニウムはアルツハイマーの原因になるといって嫌われ、最近は使われない)のような分解補助剤を加えて、炭酸ガスを発生させ、パンや焼き菓子の膨張剤として用いる薬品である。イーストHefeとは別にこのような化学薬品を入れてパンや菓子を焼くとうまくいくことは経験的に知られていたが、Dr. Oetkerの創業者が大量生産による商品化に成功し、特許を取った。プロが使うものと思われていたベーキングパウダーを一般に使えるようにし、更にパンのクッキングブックとか料理教室にまで事業を拡張して需要を開拓し、大成功を収めたのである。日本の国産では、粉屋の日清やニップンのものもあるが、なんと言っても昭和7年創業の株式会社アイコク(先頃「愛国産業株式会社」から社名変更)の「アイコク・ベーキングパウダー」が有名で、皆さんのお宅にも必ず見慣れたあの缶があるはずである。

ピザから話が脱線してしまった。

【筆者プロフィール】

石井 正人(いしい・まさと)
千葉大学教授
専門はドイツ語史
『クラウン独和第4版』編修委員

【編集部から】

2008年2月に『クラウン独和辞典』(第4版)が刊行されました。日本初、「新正書法」を本格的に取り入れた独和辞典です。編修委員の先生方に、ドイツ語学習やこの辞典に関するさまざまなエピソードを綴っていただきます。

2011年 10月 31日