大規模英文データ収集・管理術

第28回 「分類」の構成・13

筆者:
2012年7月9日

12分詞(現在分詞および過去分詞)

「分詞」には、現在分詞と過去分詞がありますので、その2つに「細分類」し、述べていきます。

1 現在分詞

「現在分詞」を、さらに次の9つに「細々分類」して述べていきます。

(1) 懸垂分詞
(2) 名詞+現在分詞
(3) 現在分詞+名詞
(4) as +現在分詞」
(5) if +現在分詞
(6) when +現在分詞
(7) while +現在分詞
(8) 前置詞+現在分詞
(9) ____, 主語+現在分詞

(1) 懸垂分詞

これは、避けなければならない用法で、事例をたくさん集め、学習するための分類をおこなっています。1つだけ、例を挙げ、懸垂分詞がどのようなものであるか説明します。

Most dryers of this type precool the incoming air before reaching the chiller.

この英文において、before reaching を懸垂分詞といいます。ここでの reaching の意味上の主語は、文法的には主節の主語と決まっていますので、Most dryers になってしまいます。しかし、文意からすると、reaching の意味上の主語は incoming air のはずですので、正確には

Most dryers of this type precool the incoming air before it reaches the chiller.

としなければなりません。ネイティブの書いた英文にはあまり見かけませんが、日本人、特に初心者の書いた英文には、日本語独特の曖昧さによるものと考えられますが、よく見かけます。

(2) 名詞+現在分詞(3) 現在分詞+名詞

これら(2)(3)は、現在分詞で名詞を修飾する場合、現在分詞を名詞の前に置くべきか後ろに置くべきかについて分類しています。
① 現在分詞を単体で名詞の前に置くことは普通にありますが、② 現在分詞を単体で名詞の後ろに置くことはあまりないこと、そして、名詞の後ろに置くときは、③ そのほとんどの場合、現在分詞が後ろに副詞句を伴うときだけであること、などをはっきりと理解する意味で重要です。

③ の例を1つ挙げます。

現在、ABC社で稼動している機械

という日本語を英訳する場合、初心者は、日本語をそのまま英訳し

the currently operating machine at ABC Inc.

とすることが多いと思います。しかし、at ABC Inc. がなければ、上記の ① の表現方法であり、おかしくはないのですが、この場合には、at ABC Inc. という副詞句が付随していますので

the machine currently operating at ABC Inc.

としなければなりません。

(4) as +現在分詞から(7) while+現在分詞まで

これら(4)から(7)は、各種の言葉と現在分詞との組み合わせを示したものです。

(8) 前置詞+現在分詞

これは、現在分詞と、after から within まで各種前置詞との組み合わせについて分類されています。

(9) ____, 主語+現在分詞

これは、2つの節をつなげる場合、「and でつなげるほど対等ではなく、ピリオドで区切るほど関係が薄くはない」という場合の大事なテクニックです。現在分詞の場合が普通ですが、過去分詞の場合もあります。

(2)過去分詞

「過去分詞」を、さらに次の7つに「細々分類」して述べていきます。

(1) as+過去分詞
(2) if+過去分詞
(3) when+過去分詞
(4) 過去分詞+名詞
(5) 名詞+過去分詞
(6) 文頭の過去分詞
(7) 動詞+過去分詞

(1) as+過去分詞

これは、普通、asと過去分詞をハイフンでつなぎ、「as-過去分詞」という形で用いられ、「~されたままの」とか「~したままの」のように「形容詞」として使われます。用例を以下に示します。

In the as-plated state, ……
→ メッキしたままの状態において

As this point it must be stressed that all welds were assessed in the as-welded condition.
→ 溶接したままの状態において

If retention of as-shipped mechanical properties for a long period of time is critical, ……
→ 出荷したままの状態の機械的性質

However, galvanized steels can be furnished with a mill applied phosphate coating so that the as-received product can be painted.
→ 受け入れたままの状態の製品

大変お恥ずかしいことですが、30年以上前、筆者が脱サラしてこの翻訳業界に入ったころ、この「as-過去分詞」がどうしてもうまく訳せず、大変、困った記憶があります。そのため、この用法に遭遇した時、その都度、この英例文を集めているうちに、はたと思いあたり、それからは難なく訳せるようになりました。

次の例文のように、asと過去分詞の間にハイフンがない場合もありますが、これは、そのまま副詞句と考えればよいでしょう。

Class B bearing must be used in sets as shipped.

These words can be entered in the dictionary exactly as typed or in any combination of upper- or lowercase letters.

(2) if+過去分詞および(3) when+過去分詞

これらは、if や when と過去分詞との組み合わせを示したものです。これも、学校英語や辞書英語では体得できない、技術英語独特の用法に基づいた分類をしています。

(4) 過去分詞+名詞および(5) 名詞+過去分詞

これは、過去分詞で名詞を修飾する場合、過去分詞を名詞の前に置くべきか後ろに置くべきかについて分類しています。

過去分詞の場合には、単体であるならば、the required information とか the information required などのように、名詞の前に置くことも名詞の後ろに置くこともでき、意味もほとんど変わりありません。しかし、過去分詞の後ろに副詞句が付く場合、過去分詞+副詞句は名詞の後ろにしか置くことができません。

例文を見てみましょう。

Use only materials approved by a testing organization, such as Underwriter’s Laboratories.

というように、approved by a testing organization は必ず、名詞 materials の後ろに置かなければなりません。

(6) 文頭の過去分詞

これは、過去分詞を文頭に置いて、「~されているのは___である」ということを表現する場合の用法で、「~されている」ことを強調するための用法で、そのニュアンスを正確に出すためには、大変大事な表現です。

例文を見てみましょう。

Connected to each flap is a lateral control cam which is in contact with a roller.

この文章は、倒置構文といわれるものです。which is in contact with a roller を省略すると、

A lateral control cam is connected to each flap.

となります。この文を、「各フラップに接続されているものは~である」というようにその部分を強調して書くと、上に示した Connected to each flap is で始まる文になります。

(7) 動詞+過去分詞

これは、動詞の後ろに過去分詞を続ける書き方で、決まった訳し方はありません。ネイティブならではの言葉の合成法で、なかなか便利です。これは、合成法として覚えようとしても無理ですので、遭遇したら、片っ端から収集して行き、全体として身につける方法を取るのが最も効果的な方法です。例文を3つ挙げます。

In the split-image type, the unfocused image appears unaligned. (ずれた状態で現れる)

It is possible for the cutting surface to become carbonized. (炭素化した状態になる)

The characteristics of the liquids remain essentially unchanged. (変わらないままである)

次回は13 副詞です。

筆者プロフィール

富井 篤 ( とみい・あつし)

技術翻訳者、技術翻訳指導者。株式会社 国際テクリンガ研究所代表取締役。会社経営の傍ら、英語教育および書籍執筆に専念。1934年横須賀生まれ。
主な著書に『技術英語 前置詞活用辞典』、『技術英語 数量表現辞典』、『技術英語 構文辞典』(以上三省堂)、『技術翻訳のテクニック』、『続 技術翻訳のテクニック』(以上丸善)、『科学技術和英大辞典』、『科学技術英和大辞典』、『科学技術英和表現辞典』(以上オーム社)など。