大規模英文データ収集・管理術

第29回 「分類」の構成・14

筆者:
2012年7月23日

「副詞」は、品詞の中で、一番、位置が自由な品詞であるといわれています。また、そのために、いろいろな言葉と組み合わされることがあり、さらに、品詞変換も自在に行われる品詞でもあります。

「副詞」を、さらに次の5つに「細分類」して述べていきます。

1 位置(助動詞、be動詞、副詞、過去分詞の例)
2 基本的位置
3 斜視用法
4 二重副詞
5 他の語との組合せ
6 品詞変換を要する副詞

1 位置(助動詞、be動詞、副詞、過去分詞の例)

ここでは、「副詞」が「助動詞」「be動詞」「過去分詞」の3つの品詞とどのような語順で組み合わされるかについて、代表的な「副詞」についていろいろな例を載せています。

語順については、次の3つに「細々分類」しています。

(1) 助動詞+副詞+be動詞+過去分詞
(2) 助動詞+be動詞+副詞+過去分詞
(3) 助動詞+be動詞+過去分詞+副詞

(1) 助動詞+副詞+be動詞+過去分詞

これは、「副詞」が「助動詞」と「be動詞」の間に置かれている例で、いろいろな例文を集めてみると、also, easily, largely, often, probably, preferably, previously, simply, suitably, usually などの副詞が多いことが分かります。

(2) 助動詞+be動詞+副詞+過去分詞

これは、「副詞」が「be動詞」と「過去分詞」の間に置かれている例で、いろいろな例文を集めてみると、best, broadly, collectively, conveniently, dramatically, easily, economically, individually, manually, quickly, readily, reliably, safely, reliably, spontaneously, successfully, widely などの副詞が多いことが分かります。

(3) 助動詞+be動詞+過去分詞+副詞

これは、「副詞」が「過去分詞」の後ろに置かれている例で、いろいろな例文を集めてみると、accurately, advantageously, conveniently, directly, often, successfully, sufficiently などの副詞が多いことが分かります。

これを見てもわかるとおり、1つの副詞がいろいろな位置に使われています。したがいまして、上に挙げた位置は、単なる例と考えなければなりません。

2 基本的位置(将来用)

副詞には、基本的に、「前位置形」、「中位置形」、および「後位置形」の3つの種類があります。ここは、現時点では、まだ例文は収集されていませんが、将来、ユーザーがデータを収集した時の収納場所として設定してある場所です。ここでは表示しませんが、動詞の種類別、態別、時制別など、その組み合わせに従い16個に細かく分類してあります。

3 斜視用法

副詞の位置は、比較的自由です。しかし、置き場所を間違えると、その副詞が、文の中の動詞を修飾しているのか、to-不定詞を修飾しているのかわからなくなることがあります。それが副詞の「斜視用法」です。ネイティブの書いた英文にはあまり見当たりませんが、たまにあります。そのような英文に遭遇したら、これを収集し、その轍を踏まないよう、反面教師として捉えるとよいと思います。もちろん、これは、分割不定詞などを使って回避しなければなりません。

分割不定詞については、第27回 10 to-不定詞の中の13 分割不定詞を参照してください。

4 二重副詞

これは、1つの節の中で、副詞が2つ使われている場合の用法で、2つの副詞がつながっている場合もありますし、離れている場合もあります。

5 他の語との組合せ

ここでは、副詞が現在分詞[または過去分詞や形容詞]とともに名詞を修飾している場合、その語句が名詞の後ろに来ているか、前に来ているかについて分類しています。その修飾語句を、次の6つに「細分類」してあります。

(1) 副詞+過去分詞+名詞
(2) 副詞+現在分詞+名詞
(3) 副詞+形容詞+名詞
(4) 名詞+副詞+過去分詞+語句
(5) 名詞+副詞+現在分詞+語句
(6) 名詞+副詞+形容詞+語句

上の「細々分類」からも分かるとおり、その修飾語句が単体の場合には名詞の前に置くこともできますが、修飾語句に何らかの副詞句が付いている場合には名詞の後ろに置かなければなりません。

6 品詞変換を要する副詞

副詞は、その姿を自在に変化させる品詞です。英和翻訳においても、和英翻訳においても、自然なtarget languageに訳せば、おのずと自動的に品詞変換がなされているはずです。しかし、ここに収録されている副詞は、変換テクニックを使って、意識的に変換しないと自然なtarget languageに訳せません。その変換テクニックをマスターできるように、これをさらに副詞別に「細々分類」し、代表的な副詞の例を挙げて説明します。(副詞の周辺のみを示します)

(1) bestの例
This calculation is best be done by a computer.
computer で best になされる → computer で行うのが best である

(2) favorablyの例
In this respect, it compares favorably with PTFE up to 300oF.
PTFE と favorably に比べられる → PTFEと比べて favorable である

(3) preferablyの例
The signal is preferably fed to the emitter via a transformer.
emitter に preferably に送られる → emitter に送るのが preferable である

(4) safelyの例
Paint, however, can be safely applied to a lacquered surface.
Paint は safely にapplyできる → Paint を apply しても safe (安全)である [さしつかえない]

(5) successfullyの例
In a transmission designed to carry 126 hp, a test was run successfully at 200 to 400 ph.
test は successfully にrunされた → test が run されたが successful であった

上の例で分かるように、この用法では、副詞はほとんどすべたが形容詞に変換されています。和文英訳の時にこのような英語を書くということは、ちょっと難しいかもしれませんが、少なくとも、英文和訳の時には、このように副詞を形容詞に変換して自然な日本語に訳すように注意する必要はあります。その意味でも、このような用法の副詞の例をたくさん集めることが肝要です。

このような用法で使われる副詞には、そのほか、closely, conceivably, conveniently, economically, hopelessly, presumably, reportedly, supposedly などがあります。

以上で6回にわたった(4) 品詞別を終わります。紙面の関係上、必要なことの半分も述べられていませんが、次の機会を待ちたいと思います。

次は(5) 構文別です。

筆者プロフィール

富井 篤 ( とみい・あつし)

技術翻訳者、技術翻訳指導者。株式会社 国際テクリンガ研究所代表取締役。会社経営の傍ら、英語教育および書籍執筆に専念。1934年横須賀生まれ。
主な著書に『技術英語 前置詞活用辞典』、『技術英語 数量表現辞典』、『技術英語 構文辞典』(以上三省堂)、『技術翻訳のテクニック』、『続 技術翻訳のテクニック』(以上丸善)、『科学技術和英大辞典』、『科学技術英和大辞典』、『科学技術英和表現辞典』(以上オーム社)など。